22.ステータス取得Ⅱ

「ありがとうございました。」


 ステータスを取得した俺はそのまま部屋を出ていく。


「ありがとうございました。これはほんの気持ちです。」


「ありがとうございます。どんなに小さなことでも神はご覧になられていますよ。」


 父は司祭とそのようなやろ取りをして部屋を出る。


「謝礼金をお渡ししたのですか?」

 

「ああ。教会で本格的な儀式を受けた場合、謝礼金を渡すのが習わしなんだ。」


「そうなのですね。」


「一応貴族としての面子っていうのもあるからな。ある程度の額は必要だな。」


「…貴族とは面倒な世界ですね。」


「まったくだな。」


 そんなことを話しながら二人は帰りの馬車に乗り込む。


 馬車が出発すると、父様が俺に提案してきた。


「家に着くまで自分のステータスを見といたらどうだ?父さんたちには後で発表してくれよ。」


「それもそうですね。」


 父様の提案を受け、俺は自分のステータスを確認してみることにした。


「『ステータス』」


【名前】カルム・フォン・マンダリン

【種族】人族(人間) 【性別】男 【年齢】五歳

【称号】男爵家三男 神童

【レベル】1

【体力】55

【魔力】62

【筋力】38

【敏捷】41

【知力】231

【魔法適性】絵画魔法

【スキル】 叡智Lv.10(MAX)

      具現化Lv.1

      算術Lv.8

      絵画Lv.9


 …なんだこれは。おかしい点が色々ある。


 まずは全体のステータス。知能は俺が転生者だからだろう。大人の平均値を上回っている。問題は魔力・筋力・敏捷の値だ。


 俺はこの三年間常に家族の目を盗んで鍛錬を続けてきた。「魔力切れを起こすと回復時魔力量が増える」と『魔導書・初級』に書いてあったのでそれを続けたし、寝る前に腕立てや腹筋などの筋トレも行った。連続して魔法を使えるようになったり、鏡で自分の体を見て成果も感じていた。


 それがどうだ。筋力・敏捷ともに去年のワイアット兄様より低くなっている。ワイアット兄様は五歳になるまで鍛錬を一切していなかったのに。


 次は魔法適性だ。俺は鍛錬で全属性の魔法を使えるようになったはずだ。だが適性は「絵画魔法」となっている。これは母様が言っていた「ユニーク魔法」なのだろう。


 問題はこれまで使えていた魔法が使えるかどうかだ。


「『火よ』」


 何も発生しない。いつもなら指先に火が灯っているはずだ。


「『水よ』『風よ』」


「どうした?ボソボソ言って。指から魔力が漏れてるぞ。」


「いえ、なんでもありません。」


 魔力は消費されているのだが、全く発生しない。恐らくどの属性を使っても無理だろう。


 最後にスキルだ。見たところ「叡智」と「具現化」がユニークスキルなのだろう。おかしな点はそのレベルだ。


 ステータスを取得する際、誰しもがレベル1でスキルを得るはずだ。だが俺は三つのスキルをレベルが高い状態で取得した。



 皆が言っていたように鍛錬は無意味だったのか。自分が得たスキルは何なのか。


 そんなことを考えながら押し黙っている俺とそんな俺を見て戸惑ったような表情をしている父様を乗せて、馬車は屋敷へと向かって行った。

 






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