38.初めてのパーティーⅡ
司会者がそう言うと、賑やかに喋っていたパーティーの参加者たちが突如静まり返り、会場前方の壇上に向かって跪いた。
俺も周りを見習って跪く。
すると、舞台袖から王族にしか許されない赤のマントを羽織り王冠を冠った男と、五歳くらいの少女が現れた。
「彼らは誰だ?」
小声でアンドレイに尋ねると、信じられないという顔で教えられた。
「カルム君知らないの!?国王陛下と第二王女殿下だよ!!」
やはりそうか。王冠を冠っているしな。
「皆の者、楽にしてくれ。」
王がそう言うと、パーティーの参加者たちは一斉に立ち上がり、列を成して王の元へ向かう。
「カルム、行くぞ。」
父様たちが俺達を呼び、列の最後尾に続く。
「お父様、最後尾で良かったのですか?」
「ああ、俺たちは男爵家だからな。一応序列は守らないと。」
「…クルール公爵は僕たちのたった二つ前ですけど。」
「俺は序列なんて気にしないからな!」
「そうですか…。」
貴族の中でも最高位の公爵が最後の方に挨拶をするなど、王への失礼に当たるのではないだろうか。
そんなことを話しながら、冷めていく料理を横目に待機していると、三十分ほどして漸く俺達の番が訪れた。
王の前に跪き、父様が挨拶をする。
「陛下、王女殿下、おめでとうございます。」
「よい、顔を上げよ。」
その言葉に俺も顔を上げると、こちらを見据える王と目が合った。
尋常ではない覇気を感じる。王の威厳というものなのだろう。しかし、遠目には分からなかったがこうして近くで見ると思ったより若い。父様と同年代ではないだろうか。その若さでこの威厳、間違いなく賢王だろう。
すると、王は覇気を引っ込め口元に笑みを浮かべた。
「ほう、噂に違わぬ神童だな。アンドリュー。こやつ、覇気を浴びせても恐れるどころか我を観察しおったぞ。」
「失礼いたしました。」
「いいのだ。」
「ありがとうございます。カルム、ご挨拶を。」
「カルム・フォン・マンダリンと申します。」
「話はよく聞くぞ。」
「有難く存じます。」
隣を見ると、第二王女がにこやかに座っていた。
「サリア、挨拶を。」
王の声で、彼女は優雅にお辞儀をした。
「サリア・フォン・クローニー・ヴィ・フリージアと申します。」
「て、天使か…?」
そう言って顔を上げる彼女の人形のように綺麗で愛らしい顔立ちと愛想のよい笑顔、滑らかな銀の髪の美しさに、隣の父様は見惚れてしまっている。
「カルム・フォン・マンダリンと申します。どうぞよろしくお願い致します。」
「ふふっ。よろしくお願いいたします。」
「サリアの美しさにも動じないとはな。他の者とはお違いだな。おぬしの父も固まっておる。」
「とても美しい方です。」
「分かっておる。アンドリュー、そろそろ起きろ。」
「はっ!?失礼しました。王女殿下は大変美しい。まるで天使のようです。」
「ありがとうございます。」
それから王と父様はマンダリン領とその周辺の様子についての話を始めた。
俺は正直ここから早く立ち去りたかった。早く戻らないと他の人に美味しい料理を全て取られてしまうし、残っていたとしても冷めきってしまう。
なので俺は仮病を使うことにした。
「お父様、少し緊張してお腹を壊してしまったかもしれません。お手洗いに言ってきても良いでしょうか?」
小声で父様に尋ねると、
「陛下。カルムは陛下と王女殿下の前で緊張してしまいお腹の調子を崩してしまったようです。戻してやってもいいですか?」
と王に尋ねてくれた。
「ほう、そんな様子はなかったがな。まあいい、戻ってよいぞ。」
という返事を頂いたので、早速
「申し訳ございません。では、お楽しみ下さい。」
と言葉を残しトイレに向かうフリをして、俺はアンドレイとアンジェリカのところへ直帰した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます