24.翌日
「今日からカルムも鍛錬を始めるんだね。」
次の日の朝、食堂に行くと先に居たオーウェン兄様が尋ねてきた。ワイアット兄様は朝食を掻き込むのに忙しそうだ。
「はい、そうです。」
これまでは家族や使用人にバレないように鍛えていたので、一応今日が初めてということになっている。
「どんな先生が来てくれるのかな?」
「まだお父様からは聞かされていません。」
俺にはどんな家庭教師が付いてくれるんだろうか。優しい人だったらいいのだが。
「そのことで話がある。」
そこで毎度のごとく父様が顔を出す。
「カルム、お前には家庭教師を付けないでいようと思う。」
「どうしてでしょうか?」
「お前はユニーク魔法を授かったから、誰も魔法を教えることが出来ないしその必要もない。」
「剣のほうはどうすればいのですか?」
「幸い、我が家の長男は剣の天才だ。人に教えることも勉強になるし、丁度いいだろう。」
「なるほど。」
「俺もカルムに魔法を教えます!!」
肉を飲み込んだワイアット兄様が、大きな声で父様に宣言する。
「でも教えることあるのか?」
「あ…その…うーんと…魔力操作とかなら…」
言葉に詰まっている。どうやら考えなしに言ってしまったようだ。
「恐らくユニーク魔法と言っても魔力操作などは必要になるでしょう。ワイアット兄様に教えて頂ければ僕も嬉しいです。」
仕方ないので助け舟を出す。
「そ、そうでしょう!俺が教えられます!」
ワイアット兄様の必死さに父様も少し呆れ気味だ。
「そうか。じゃあオーウェンはカルムに剣を、ワイアットは魔法を教えてやってくれ。」
「「分かりました(!)。」」
そこで俺は少し気になったことを尋ねる。
「勉強は誰が教えて頂けるのですか?」
すると何故か全員が俺をジト目で見つめてきた。
「それこそ誰がお前に教えられるんだ…。」
「カルムは僕より、ていうかこの家の誰よりも賢いじゃないか。」
「僕の先生が「カルム様の家庭教師には絶対になりたくありません」って言ってたぞ。」
「…分かりました。では自力で勉強しようと思います。」
元現代日本人はこの世界では異常なんだな。…ワイアット兄様の家庭教師は不敬で罰しよう。
「まあ、一応サミュエルが付いてくれることになったから、もし分からないことがあったら聞くように。」
「サミュエルさんですか?お仕事のほうはよろしいのですか?」
「あいつは働きすぎだ。お前の勉強を見るついでに休んでもらおうと思う。」
「分かりました。」
「じゃあ、頑張れよ。」
そう言って父様は仕事部屋に戻って行った。
俺に家庭教師を付けない理由がまだ他にあるような気がするが、考えても分かりそうにないので今は取り敢えず置いておこう。
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