5.夢の中Ⅱ

「あ、あ……あんたが悪いのよ!!」


「は?」


 なんだこいつヒステリックか?


「あんたが神である私の悪口ばっかり言って敬うことすらしないからでしょ!!」


「あんたの親は両方私のことを敬拝してた!なのに息子のあんたは失礼なことばっかり!今度という今度は許さないと思って、あんたが私の悪口を言った直後に神の力で罰を与えたのよ!!」


 …はあ。俺は呆れて怒りが収まってしまった。あの激しい痛みが起こる前ヒロさんと電話で何の話をしていただろうか?


「つまり悪口を言われたのが気に食わなくて報復したんだな?」


「そ、そうよ。」


 やっぱりクソガキだな。


「待てよ、じゃあその神の力とやらで俺の癌を消せばいいだろう。」


「神の力はそんなに万能じゃないわ。」


「どういうことだ?」


「私たち神は『物事が起こる確率を操作する力』を持ってる。しようと思えばサイコロ100個の出目をそろえることだってできる。…でもなにかが起こるには原因がないといけないの。」


「サイコロは振らないと目が出ない、か。だから「なぜ病気の治療をしないのか」と聞いてきたんだな。治療を始めないと神の力でも治せないから。」


 あと私神か。一人じゃないんだな。


「そうよ。」


 そこでこの駄女神はふんぞり返って言った。


「今ここで私に必死にお願いをするのなら、病気を治してあげてもいいわよ。あなたどうせ治らないならって思って治療しなかったんでしょ。まだ未練も残ってるはずだわ。」


 は?


「確かに未練が残っていないことはないが…。」


 俺はこの二か月間で彼女を作らなかった。それに童貞のままだ。


「ほ、本当に俺の病気を治してくれるのか?」


 諦めていた俺の女性関係にリベンジできるのだろうか。


「当り前よ!あなたが私を敬うならね!」


「俺は死ななくて済むのか?」


 薫さんを悲しませることはしたくない…。


「そうよ!周りを悲しませることもないわ!」


 狼狽える俺を見て、アーテニアは大きな声で宣った。


「ほら、早く私に深く頭を下げなさい!そして「これまでの無礼を深くお詫び申し上げます。どうかアーテニア様、私めにお慈悲を下さい」と乞いなさい!!」


「だが断る。」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る