第51話
この遊園地で一番人気で有名な所はどこ? と聞かれればほとんどの人がここを言うだろう。
全国でも怖いと評判で入り口から出口までは平均三十分程かかると言われているこのお化け屋敷。
斗真はそこを指さした。
それを見て陽愛は俺の隣で体を小刻みに震えさせている。
「ちょ、陽愛。大丈夫か? 俺と一緒にここで待ってような」
俺は陽愛にそう提案をするが、陽愛は首を横に振って断った。
あの時と一緒だ。陽愛と一緒にホラー映画を見たあの日と。
「いや、前も無理だったじゃん。ね、待ってようよ」
「今日は皆いるから大丈夫だと思う」
こうなってしまったら陽愛は俺の言う事を聞かなくなる。
我儘を言う陽愛は可愛いけれど、こう言った時に我儘を言われると流石に困る。
無理にでも辞めさせるべきだと思うが、陽愛が頑張るなら応援したい。
どっちが良いのか俺では決められない。
「あ、そっか……陽愛ちゃん怖いの苦手だったっけ」
「そうなの? 私は怖いの大好きなんだ~」
別に俺も斗真も怖いのは別に好きってわけじゃない。けれど妃菜ちゃんが怖いのが好きだからこのお化け屋敷に行こうと言ったのか。
「ああ、だから二人で行って来てくれ。俺と陽愛はここで待っているから」
「わ、私も行く!」
陽愛は大きな声を出した。
「いや、無理しなくていいんだよ? 蒼汰くんの言う通り待ってていいんだよ?」
妃菜ちゃんが陽愛の元へ近づいて説得を試みるが、やはり陽愛は首を横に振る。
俺も分かっている。陽愛は克服がしたいんだろう。
でも克服するなら少しづつが良いと思う。いきなり全国的に見ても怖いと言われているこのお化け屋敷で克服しようとするのも流石に無理だ。
けれど、しょうがない。
「じゃあ行こうか。陽愛」
俺は立ち上がって陽愛に手を差し伸べた。
こういう時は陽愛のやりたいようにしてあげることにした。
「本当に良いのか?」
「良いよ。陽愛がこう言っているんだから行かせてあげたいし」
そう言って斗真を納得させ、少し不気味な外見をしたお化け屋敷の入り口までやって来た。
中からは時々悲鳴が聞こえてくる。それを聞くたび、陽愛は身体をビクッとさせる。なんだか可愛い。
「次の方、こちらまで来てください」
スタッフに呼ばれ俺達は向かった。
「では、まずこのお化け屋敷に入る前にこちらをお持ちください」
そう言って渡されたのはお札だ。
「この場所は本当に出ると言われています。なのでこのお札を必ず離さないで持っていてください。いいですか? 絶対にここから出るまで離さないでくださいね」
怖がらせるための演出だろうと聞いていると、陽愛が俺の隣で真剣にお札を握り何度も頷いていた。
「では、呪われないように気を付けてくださいね」
そう言って俺たちは中に入れられた。
呪われないようにって言われてもな……
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