第50話

「ねぇ、大丈夫?」


 陽愛はそう言ってペットボトルを俺に差し出してきた。

 遊園地に来て幾つかのアトラクションを乗った後、少し休憩と言って俺はベンチに座っていた。

 俺はありがとうと言って受け取り一口飲んだ。


「苦手なら苦手ってちゃんと言ってよ」

「大丈夫だと思ったんだよ」


 昔苦手だったジェットコースターに今の歳で乗ったら大丈夫だと思い乗った結果。今このようになってしまった。

 我ながら考えが浅かった。

 

「それよりも、陽愛はジェットコースターは大丈夫なんだな」

「うん。ジェットコースターは平気だよ」


 どうやら陽愛は驚き要素があったりホラー系のものを怖がるようだ。あと暗い場所。

 ジェットコースターなどの乗り物は平気らしい。


「そういえば、斗真たちはどこに行ったんだ?」


 俺は周りを見渡すが、斗真と妃菜ちゃんの姿はなかった。


「妃菜ちゃんとちょっとあっちに行ってくるって言ってたよ」


 陽愛は俺の後ろの方を指さしながらそう言った。


「そーれーよーりーもー」


 陽愛は笑顔で……いや、笑顔を作って俺の隣に腰を下ろした。

 な、なんか怖い……


「な、なんでしょうか」

「さっきさ~、妃菜ちゃんと何喋ってたのかな? なんか顔赤くしてたし~?」

「うっ……」


 やばい……見られてたのか……

 ま、まぁ当たり前か。


「な、なんでもないよ。急に耳元で話されてびっくりしちゃっただけだよ」

「へぇ~、妃菜ちゃん可愛い声してるもんねぇ~。まさか親友の彼女さんにまでね~」


 なに? 陽愛って俺の心読めるの?

 確かに可愛い声をしていると思ったけど、ちゃんと直ぐに陽愛が居るって何度も心に唱えた。


「だ、だから違うって! 俺が好きなのは陽愛だし……」

「ふ~ん……まぁ、信じてあげる。幼馴染だし、彼女だから」


 陽愛の顔は間違いなく赤くなっていた。

 照れてたのか?

 しばらくすると斗真が俺の名前を呼んで手を振って来た。

 斗真と妃菜ちゃんの両手にはチュリトスがあった。


「ほい、これ。美味そうだったから買ってきた。俺の奢りだ」

 

 そう言って斗真は俺、妃菜ちゃんは陽愛に渡した。


「サンキュー」

「ありがとう。斗真くん、妃菜ちゃん」


 そう言って陽愛はパクっとチュリトスを食べた。


「ん~、美味しい!」

 

 陽愛は美味しそうにチュリトスを食べ続けた。

 

「それで? 蒼汰は気分良くなったか?」

「ああ、だいぶ良くなった」

「よし! じゃあこれ食べ終わったらあそこ行くか」


 そう言って斗真はある場所を指さした。

 その場所を見て陽愛は俺の隣で小刻みに震えた。

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