第49話
「わー、私遊園地なんて久しぶりに来る~」
陽愛は高さ百メートルほどある観覧車を眺めながら目を輝かせる。
俺たちは夏休みの最後にもう一つの思い出作りとして遊園地へとやって来た。
「俺も久しぶりに来るなぁ~。
「私も小学生の頃以来かな」
斗真の隣でそう言うのは、斗真の彼女だ。
茶髪の綺麗なボブで綺麗に整った顔。流石斗真の彼女だ。
一度だけ見たことがあるが、あの時よりも全然可愛くなっている。
四日前の出来事。
朝早くに突然斗真が俺の元へとやって来た日の事。
ゲームを終えた俺と斗真は少し最寄りのコンビニに行き、お菓子を購入。そして家に戻り机の上に広げた。
「なぁ、そう言えばお前に彼女できたならあれしない?」
「あれってなんだよ」
斗真はお菓子を片手にそう言ってくるが、あれと言われても全く分からない。
「は? そんなの決まってるだろ」
「いや、決まってはないだろ。どれだけ選択肢があると思ってんだよ」
「お前彼女居るだろ? そして俺にも彼女居るだろ?」
「あ、ああ。居るな」
「つまりカップルが二組居るという事だ」
斗真は両手の人差し指と中指を立てながらそう言う。
「そうなったらすることは一つだろ」
「なんだよ」
「ダブルデートだよ」
そんな出来事があり、俺たちは遊園地へとダブルデートをしに来た。
夏祭りは既に終わってしまった。海にもこの間行ったばかり。近くのショッピングモールは思い出作りというほどでもない。
という事で近くに良い場所は無いかと皆で探した結果、ここになった。
俺も遊園地に来るのは小学生の頃に行ったきり来ていない。
「そういえば陽愛ちゃんとは初めましてだね。私、
斗真の彼女、妃菜ちゃんは陽愛の目の前まで移動し自己紹介を始めた。
「私は
陽愛は可愛らしく微笑みながらそう言った。
「勿論知ってるよ~。だって陽愛ちゃん有名人だもん」
「え、私が!?」
「まさかの自覚無し!? 陽愛ちゃん学校で一番の美少女って凄い有名なんだよ」
「そ、そんな。私なんかよりも可愛い子沢山居るのに……」
「も~、そんなこと言っちゃダメだよ。陽愛ちゃん凄く可愛いんだから自信もって!」
妃菜ちゃんは陽愛の両手を掴みながら必死に説得しようとする。
その勢いに陽愛は押されたのか「う、うん……」と渋々だが納得していた。
「それと」
次に妃菜ちゃんは俺の元へとやって来た。
「蒼汰くんとは久しぶり、かな?」
「そうだね。斗真に紹介された時以来だね」
「それにしても、まさか蒼汰くんが陽愛ちゃんと付き合うとは思っていなかったなぁ~。陽愛ちゃん可愛いから少しでも目を離したらダメだからね」
最後は耳元で俺以外に聞こえないように言ってきた。
陽愛とはまた違った可愛らしい声に少しだけ照れてしまった。
俺は頭を左右に思いっきり振りながら『俺には陽愛が居る。俺には陽愛が居る』と何度も言い聞かせた。
「おい、そろそろ行くぞ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます