第14話
「これからどうする?」
洒落たカフェから出ると同時に陽愛に聞いた。
俺は特に見たい場所もないため、陽愛について行くつもりだ。
「うーん、服も買ったしパフェも食べたし~」
陽愛は頬に人差し指を当てながら考える。
「じゃあせっかくだから映画でも見ない?」
「映画?」
俺がオウム返しをすると、陽愛は「うん」と頷いた。
確かもう一階上のフロアには映画館があるはずだ。
「まだそんなに来て時間も経ってないもん。ダメ?」
確かにまだショッピングモールに来てそこまで時間は経っていない。
せっかく来たし、最近映画なんて全く見ていないし久しぶりに見たくなってきた。
「ダメじゃないよ。じゃあ見に行こっか」
俺は陽愛の隣に並び映画館へと向かった。
どんな映画がやっているかは分からないが、陽愛が見たい映画を見るつもりだ。
やはり恋人同士で見る映画と言えば恋愛ものなのかな?
映画館の前には今話題であろう映画のポスターがいくつも飾られている。
気になる作品が幾つかあったので、また今度来た時にでも見るか。
「蒼汰は何みたい?」
「俺はなんでも良いけど。陽愛こそ見たい作品はないの?」
「うーん、この恋愛映画はもうチケット完売してるみたいだし……これとかどう?」
そう言って陽愛が指した映画は恋愛物とは真逆のホラー映画だった。
「で、でも陽愛ってホラー苦手じゃなかったっけ」
陽愛は昔から怖いものが大の苦手で、小学生の頃学校行事の一環で肝試しをすることになったが、スタートラインで大泣きをして俺から離れなかった。
それで俺は肝試しができなかった。変わりに陽愛の頭を撫でていた覚えがある
「に、苦手だけど、蒼汰と一緒なら大丈夫……な気がする…………」
陽愛の声は段々と小さく弱々しくなっていった。
絶対にダメなやつだ。
陽愛の事だ、どうせ無理にでも映画を見ようとしているのだろう。
だけど恋愛系はやはり人気なのか、どれも満席状態。
残っているのは幼稚園生や小学生向けのアニメ映画と陽愛が指さしたホラー映画だけ。
「本当に大丈夫なの? 無理ならまた別の日に来ようよ。もうすぐ夏休みなんだし」
「だ、大丈夫だよ。ほら、見ようよ」
そう言って陽愛はチケットの購入ボタンをタッチした。
チケットを購入した俺たちはシアターへと入り、映画が始まるのを待つ。
数分が経ち、シアター内が暗くなり映画が始まった。
序盤はそこまでのホラー要素は無かったが、時間が進むにつれホラー要素が出てくる。
陽愛は俺の左腕をずっと両腕で抱きしめたまま体をびくびくさせている。
ホラー演出が映るたびに俺の左腕を強く締めるため、陽愛の胸に俺の腕が触れて映画どころじゃない。
結局後半は映画の内容がほとんど入ってこなかった。
映画が終わると直ぐに陽愛は涙を拭いた。
「やっぱり無理だったじゃん。そんなに無理してみなくてもよかったのに」
「む、無理してないもん!」
「じゃあ何で泣いてるんだよ」
「そ、それは……う、うるさい!」
そう言って陽愛は俺の胸を軽く叩いた。
「じゃ、じゃあまた今度は恋愛映画、一緒に見てくれる?」
まだ目が赤い陽愛は上目遣いで聞いてくる。
「勿論、また誘ってよ」
俺がそう返すと、陽愛は「うん!」と可愛らしい笑顔になった。
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