第13話

「ねぇ、このパフェすごく美味しいよ!」


 陽愛は片手を頬に当てながら幸せそうにそう言う。

 俺たちはショッピングモールの三階にあるお洒落なカフェにやって来た。

 このカフェはネット上でも結構有名だ。

 陽愛が食べてるのはここの一番人気のデザート、イチゴパフェだ。

 

「蒼汰も食べる? ほら、あーん」


 陽愛はスプーンにパフェを乗せ、俺の口元へと運んできた。

 俺は口を開き、イチゴパフェを食べた。

 イチゴの甘酸っぱく美味しい味が口に広がる。練乳もイチゴと合って美味しい。

 この店のデザート一番人気というのも頷ける。


「うん。美味しい」

「でしょ? 蒼汰も頼めばよかったのに」

「美味しいけどそんなに食べれる自信がないから」


 そう言って俺はコーヒ―を啜る。


「でも本当にコーヒーだけで良いの? 他にもケーキとかあるよ? それに蒼汰コーヒー好きだったっけ?」


 陽愛はメニュー表に載っているケーキを指さして言う。


「いや、いいよ。そこまでお腹も減ってないし。コーヒーは大好きって程ではないけど好きではあるよ。」


 それに陽愛が美味しそうにパフェを食べている姿を見ているだけで俺は満足できる。


「でもお腹減っちゃうかもしれないよ? ほら、もう一口上げるね」


 そう言って陽愛はもう一度さっきと同じように俺の口元へパフェを運んだ。


「ありがとう」

「あ、そうだ。蒼汰に聞きたいことがあるんだった」

「聞きたいこと? 俺が答えられることなら」


 陽愛が俺に聞きたいこと? 珍しいな。


「蒼汰って好きな色何色?」

「好きな色? 黒」


 特に好きな色は無かったので無難に黒と答えた。

 すると陽愛は「違う~」と言いながら胸の前で両手をぶんぶんと振る。

 正直物凄く可愛い。


「例えば、こ、恋人に着てほしい服の色とかさ」

「陽愛に着てほしい服の色? 陽愛は可愛いから何色でも良いんだけど」

「も~、真面目に言ってよ!」


 陽愛は顔を赤らめながら頬を膨らませる。


「じゃ、じゃあピンク、薄いピンク色」


 俺は陽愛の奥に座る大学生くらいの女性が着ている服の色を見て答えた。

 だって陽愛ならどんな色の服を着ても可愛く似合ってしまうと思っているから。

 

「う、薄いピンク色ね。うん! 分かった、ありがとう!」


 陽愛はスマホを取り出し、何やら打ち込んでいる。多分俺が言った事を打ち込んでいるんだろう。


「でもどうして急にそんな事?」


 陽愛は俺から好きな色を聞いて何がしたいのか分からない。


「良いの、良いの。ほら、ご褒美にもう一口、あーん」


 陽愛からは聞いてきた理由は教えてもらえなかった。


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