可愛い幼馴染が彼女じゃダメですか？

第12話

「ねぇ！　あの服屋見に行こうよ！」

「ちょっ！」

　陽愛は左手で目的の服屋を指さしながら右手で俺の腕をがっちりと掴んで俺を服屋へ連れて行く。

　俺と陽愛はお寄りのショッピングモールへと足を運んでいた。

　遡ること約一時間前。

　陽愛が作ってくれた昼食を食べ終え、お腹が苦しくなった俺はベッドに横になった。

　真っ白な天井を眺めていると、陽愛がひょこっと顔を出した。

「ちょっと、なんで寝転がるの！　私居るんだよ？」

「陽愛が居るのは知ってるよ。お腹が苦しいから寝転がってるの」

「ねぇ、起きてよ～」

　陽愛は「ねぇ～」と言いながら俺の体を大きく揺さぶり始めた。

「なんだよ、そんなに揺らしてきて」

　俺が上半身起き上がると、陽愛は揺さぶるのを辞めた。

「せっかく来たんだから、少しくらい構ってよ」

　陽愛は唇を尖らせながらそう言ってきた。

　なんなんだこの可愛さは。

　俺は上半身だけではなく体全体を起き上げる。

「構ってって言われても……」

「じゃあどこか出かけようよ」

「え？　今から？」

　俺がそう聞くと陽愛は可愛らしく小さく頷く。

「ダメ？」

　陽愛は上目づかいでそう聞いてくる。

　そんな可愛い表情されたら断ることなんてできない。

　俺は二つ返事で承認した。

「やった！　蒼汰とデートだ！」

　陽愛は両手を胸の前に持っていき小さく握りこぶしを作った。

「デート？」

「え？　デートじゃないの？」

　俺は聞きなれない単語を聞いて、つい言葉にして繰り返してしまった。

「だって私達付き合ってるんだからデートでしょ？　え？　違った？」

「あ、いや。違わないと思うけど。でもどこに行くの？」

　何処かに出掛けようと言われただけで肝心の目的地は言われていない。

　陽愛は頬に人差し指をくっ付けながら「うーん」と考える。

「あ、ショッピングモールに行こ！　私、最近行けてないから」

　そんなことがあって、今俺達は最寄りのショッピングモールまでやって来た。

「そんな急がなくても」

　俺がそう言っても陽愛が歩く速度を緩めることはない。

　よほど行きたい場所なのだろう。

　陽愛は昔から服を見たり着たりするのが好きだったな。

　陽愛と俺が入った服屋は、白を基調としたお洒落な雰囲気な店で、店内にも何人かの人が服を見ている。

　その多くは俺達と同じくらいの年齢の女子だ。

「ねぇ、蒼汰！　この服似合う？」

　陽愛はピンク色のフレアスカートを手に取って自分に合わせながら聞いてくる。

　似合うか似合わないかで言えば、百似合っている。

「うん。似合ってる。凄い似合ってる」

　俺がそう言うと、陽愛は嬉しそうに「本当に！」と言って、フレアスカートを持ったまま、姿見がある場所へと向かって歩いて行った。