第11話

 後一週間学校に通えばようやく夏休みが始まる。

 俺は本棚の上に置いてある小さなカレンダーを見ながら思う。

 今日は土曜日という事だけあって、十時まで眠っていた。

 朝食はコンビニで買っておいたパンを一つ食べて終わりだ。

 土日に遊びに出掛ける友達なんて居ない俺にとっては、土日はただベッドの上で寝転がって時間を潰すだけの日だ。

 

「ん?」


 そんな事を思っていると、部屋に呼び鈴が響いた。

 誰だ? 俺の部屋に呼び鈴が鳴ることなんて滅多にない。

 最近ネットショッピングで購入した商品は何もないので、多分宅配ではないだろう。

 俺は玄関のドアを開ける。


「やっほー、蒼汰」


 目の前には小さく可愛らしく手を振る陽愛が居た。

 

「ど、どうしたの?」


 朝――いや、昼に目が覚めた時にスマホで連絡が来ていないか確認したが、陽愛から今日来るなんて連絡はきていなかった。

 

「どうしたのって、逢いに来たんだよ?」

「会いに来たって、どうして」


 俺がそう聞くと、陽愛は頬を膨らませて不機嫌そうな表情をする。

 可愛い……


「なに? 彼女が彼氏に逢いに来ちゃいけないの?」

「別にそういうわけじゃ」

「じゃあどういう意味なの!」


 陽愛は一歩前に進み、俺に近づいて来た。


「い、いや……来るなんて連絡なかったから。びっくりしただけ」

「本当に?」

「ほ、本当だって」


 俺の顔をじーっと見つめる陽愛。


「まぁ、いっか。蒼汰の事、信じてあげる」


 陽愛はそう言って両手を後ろで組んだ。

 

「ねぇ、部屋に入れてくれないの?」


 陽愛にそう言われ、俺は陽愛を部屋に入れた。

 陽愛は部屋に入ると直ぐにベッドに腰を下ろした。


「ねぇ、昼食は食べた?」

「いや、まだだけど」


 今の時刻は十二時を回ったところ。

 いつもならこの時間帯に昼食を取っているが、今日は朝食が遅かったのでお腹があまり減っていない。


「じゃあ私が作ってあげる!」

「いや、いいよ。悪いし、お腹減ってないから」


 俺がそう断ると、陽愛は俺の事をまたしてもじーっと見つめてきた。


「せっかく可愛い彼女がお昼作ってあげるって言ってるのにどうしてそう言うのかなぁ」

「作ってほしいです。お願いします」


 俺はまた陽愛の機嫌を損ねてしまわないように直ぐにお願いする。

 お腹は空いていないが、陽愛が作ってくれた料理ならと思うと何とかなる。


「もう、最初からそう言えばいいの!」


 そう言いながら陽愛はキッチンへと向かった。

 

「何作ろうかなぁ~。蒼汰は何が食べたい?」

 

 陽愛はキッチンから俺に向けてそう聞いてきた。

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