第20話

「ねぇ。どう、かな……似合ってる…………?」


 陽愛は下を向き、両手をもじもじとさせながら弱々しい声で聞いてくる。

 そんな陽愛の仕草に胸がくすぐられる。

 薄ピンク色の浴衣は陽愛に凄く似合っている。浴衣と一緒の色をした綺麗な花の形をした髪飾りも似合っていて文句なしで可愛い。圧倒的に可愛い。

 普段の陽愛でも最高に可愛いのに浴衣姿ときたら……俺の理性は保っていられるのか?


「う、うん。凄く似合ってるよ」

「よ、よかった! か、可愛い?」

「か、可愛いよ。凄く可愛い」


 いくら陽愛が彼女でも、面と向かって可愛いと告げるのはやはり恥ずかしい。

 そしれ何故か陽愛も顔を赤くしている。自分から聞いても恥ずかしがるのか……本当に可愛い。

 

「ん?」


 俺は陽愛の浴衣を見て一つ疑問に思ったことがあった。


「もしかして、陽愛。前俺がその色が良いって言ったからわざわざ薄ピンク色の浴衣を着て来てくれたのか?」


 この間陽愛とショッピングモールにデートに行ったときに、陽愛から好きな色を聞かれた。その時に答えた色が薄ピンク色だった。


「う、うん」


 陽愛は可愛らしく、そして恥ずかしがりながら頷く。


「だって、蒼汰に可愛いって言ってほしかったから……」

「ッ~~~~~~‼」


 俺も陽愛も顔を赤らめたまま下を向き、直立不動状態。


「い、行こうか」


 俺はこの空気に耐えられずそう言った。


「ちょ、ちょっと待って蒼汰」


 俺が歩き出した瞬間、陽愛が俺の名前を呼んで止めた。


「どうしたの?」


 振り返ると陽愛はまだ両手をもじもじとさせている。

 足でも挫いたのか?


「手、繋いでよ……」

 

 そう言って陽愛は右手を俺に差し出してきた。

 真っ白で小さくて綺麗な手。

 俺はゆっくりと陽愛の手を優しく握る。

 

「ち、違う……こうが良い」


 陽愛は俺の指と指の間に自身の指を入れた。

 いわゆる恋人繋ぎというものだ。


「恋人なんだから、これが良い」

「そ、そうだよね。こ、恋人だもんね」


 俺は陽愛と恋人繋ぎをしたまま、夏祭りへの会場へと向かう。

 やはり人は多いが、陽愛と一緒なら気にならない。

 もしかしたら単純なのは陽愛じゃなくて俺の方かもしれない。

 陽愛に頼まれたらなんでもしてしまうだろう。

 

「ねぇ、蒼汰」

「何?」

「蒼汰も、その……似合ってるよ、その浴衣。カッコいい…………」


 陽愛の突然の言葉に俺は再び顔を赤らめる。

 熱い……ただでさえ七月と夏の季節で熱いのに。

 

「あ、蒼汰照れてる。可愛い~」

「ひ、陽愛だって顔赤いし」

「そ、そんなことないもん!」

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