第46話
朝食を終えた私は直ぐに自分の部屋のベッドで仰向けに寝転がり、ある人に電話を掛けた。
お母さんは蒼汰とあまり関りがないけど、私は知っている。私ほどじゃないけど蒼汰の事をよく知っている人を。
『もしもし陽愛ちゃん? 珍しいね、陽愛ちゃんが俺に電話してくるなんて。何かあったの?』
「ごめんね、急に電話かけちゃって、ちょっと蒼汰の事で相談したいことがあって」
電話の相手は蒼汰の親友で、蒼汰と二人で花火を見た場所を教えてくれた斗真くん。
『相談? 俺にできることなら相談にのるよ』
「ありがとう、斗真くん」
私は斗真くんにもうすぐ蒼汰の誕生日だから何かプレゼントを渡したいんだけど、蒼汰が、男の子が喜びそうなプレゼントは何かを相談した。
斗真くんは蒼汰の親友であり、男の子同士だから、幼馴染で恋人でもある私には話せない事もあるかもしれないし、なによりお母さんは女だけど斗真くんは男。正直男の人の意見が一番聞きたい。
『なるほど、それよりも陽愛ちゃんは今まで蒼汰にプレゼントを渡してはいなかったの?』
「少しだけあってるかな」
『少しだけ?』
「うん。昔は私達家族で蒼汰の誕生日をお祝いしていて、ケーキを私の家族から蒼汰にプレゼントしていたの。だから私一人からのプレゼントはまだあげたことがないの。でも高校生になってからはプレゼントしてないの」
『そういうことだったのか。てっきり陽愛ちゃんの事だから蒼汰には毎年欠かさずにプレゼントを渡していると思っていたよ。でもな~』
斗真くんはそう言って少し考えているみたい。
「お母さんにも聞いたんだけど、私があげるプレゼントならなんでも喜んでくれるって言って、全然アドバイスもらえなかったの」
『申し訳ないんだけど、俺も陽愛ちゃんのお義母さんと一緒の意見なんだよ』
「斗真くんも?」
『うん。陽愛ちゃんほどじゃないけど俺も蒼汰と結構付き合い長いけど、蒼汰が何か欲しいって言ったことはそんなにないんだよ。それに蒼汰は結構単純な奴だ。陽愛ちゃんが一生懸命考えてプレゼントされたものなら間違いなく喜ぶと思うよ。なんなら多分俺に自慢しに来ると思う』
斗真くんの声を聞いて、蒼汰の事を呆れているとういうのが分かる。
『なんかごめんね、全然いいアドバイスしてあげられなくて』
「うんん。斗真くんが謝ることないよ。ありがとう、相談にのってくれて」
そう言って私は斗真くんとの通話を終えた。
☆
珍しくかかってきた陽愛ちゃんからの通話を終え、俺はベッドに寝ころびながら部屋の天井を見つめる。
俺は本当は蒼汰が一番欲しいものを知っている。
けれどそれを陽愛ちゃんに伝えたところであまり意味がないし、陽愛ちゃんとしてもちゃんと答えてほしいと思ってそうだったし。
蒼汰はもう少し積極的になればいいのに。
「陽愛ちゃんの気持ちにそろそろ気づいたらどうなんだよ」
俺は真っ白な天井に向ってそう呟いた。
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