第37話

「ごめんね、家まで送ってもらっちゃって」


 既に外は真っ暗。蒼汰と一緒に居るとつい時間を忘れてしまう。

 「こんな時間に女の子一人で歩かせるのは危険だから」という理由で蒼汰が家まで私を送ってくれた。

 確かに蒼汰のお家から私のお家までの道にはあまり街灯も無いし、交通量も少ない。

 暗いのが苦手な私にとってはとても頼もしい。

 街灯が沢山あったとしてもこの時間に一人で歩くのは怖い。


「良いよ。さっきも言ったけどこんな時間に陽愛一人で歩かせるのは危険だから」

「ありがと、蒼汰って優しいね。じゃあ、またね」


 私は笑顔で蒼汰に手を振り、家に入った。

 

「ただいまー」

「おかえり、陽愛」


 リビングに入ると、ソファーに座りながらテレビを見るお母さんの姿があった。

 お母さんには『今日は蒼汰のお家で夕飯食べていくから夕飯はいらないよ』と連絡していたため、私が遅く帰ることを知っていた。


「あれ? お父さんはもう寝たの?」

「まぁ、明日も朝早いからね~。最近お父さんが陽愛と中々一緒に居られないって悲しんでたよ~。蒼汰くんと一緒に居たいのは分かるけど、少しお父さんともお話してあげてね」

「う、うん。そうするね」


 お母さんの言う通り、お父さんは朝早くから夜遅くまで働いている。

 それに、蒼汰と付き合い始めてからお父さんとお話する時間が減った。

 

「ねぇ。そう言えば陽愛、水着は大丈夫なの?」

「え? 水着?」

「だって蒼汰くんと海行くんでしょ?」

「うん」

「最後に海に行ったのって結構前でしょ? 陽愛も成長しているんだからサイズとか大丈夫なの?」


 確かに水着なんて長いこと着ていない。

 でも心配することはない。


「一度着てみなさい」

「いいよ、新しい水着買うつもりでいるから」

「そうなの? ならお母さんが選んであげようか?」

「絶対ダメ! 自分で選ぶの!」


 お母さんに選んでもらったら多分肌の露出が多い水着にさせられる。

 蒼汰だけならまだしも、海には他にも沢山の人達が居るから恥ずかしいに決まっている。

 だから新しく買う水着はなるべく肌の露出が少ない奴が良い。


「え~、陽愛が選ぶ水着って肌の露出が少ないやつでしょ?」

「そ、そのつもりだけど」

「それがもったいないのよ。こんな綺麗な肌をしてるのに」

「で、でも」

「それに、蒼汰くんも陽愛の水着姿楽しみにしてると思うよ」

「そ、そうかもしれないけど……」

「だからなるべく肌の露出の多い水着にした方が良いのよ」

「で、でも恥ずかしいの!」


 私はこれ以上お母さんに何か言われないように自分の部屋に逃げ込んだ。

 そしてベッドにうつ伏せになり、枕に顔を渦組める。


「うぅ~。恥ずかしいから仕方ないじゃない……なんか丁度いい水着無いかなぁ」

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