第55話
「今からどうする?」
もう外も暗くなり始めた頃、天野は俺たちにそう聞いてきた。
ある程度のアトラクションには乗ったし、久しぶりにこんなに歩いて疲れてしまった。
隣に並んでいる陽愛も表情から疲れが見える。
「じゃああれに乗らない?」
そう言って妃菜ちゃんが指さしたのはこの遊園地で一番大きな観覧車。
「観覧車なら少し休憩もできるし、頂上から良い景色が見られるんじゃないかな?」
「確かにそうだね。じゃあ観覧車乗るか!」
そう言って天野は妃菜ちゃんの手を握って観覧車へと向かって歩いて行った。
俺も続いて陽愛の手を握って向かう。
観覧車までの距離はそこまで無いが、それでも足が痛い。
どれだけ歩いたんだよ。まぁ、楽しかったから結果良いんだけど。
明日は筋肉痛確定だな。筋肉痛になるのも何時ぶりだろうか。
幸い、観覧車にはあまり人が並んでおらず、直ぐに順番が周ってきた。
遊園地で待ち時間が短いのはこれ以上ない幸運だ。
「おい、ちょっと待て」
天野と妃菜ちゃんが観覧車に乗ったので俺も乗ろうとしたが、天野にそう言って止められた。
「なんだよ、乗らせろよ」
「こういうのは二人っきりで乗るもんだろ。じゃあ後でな」
そう言って天野と妃菜ちゃんが乗っている観覧車のドアが閉じた。
そして天野は笑顔で俺達に手を振ってきた。
そういうものなのか? 観覧車は二人で乗るものなのか。初めて知った。
「次の方どうぞ」
スタッフにそう言われ、天野達の次に来た観覧車に乗った。
この観覧車は一周十五分かかる。この十五分の間この狭い空間に陽愛と二人っきりになると思うと少しドキドキする。
「涼しいね、観覧車の中」
「そうだね、冷房が付いてるからね」
「あ、人形もある!」
観覧車の中にある小さなぬいぐるみを陽愛はぎゅっと抱きしめた。
めっちゃ可愛い。
「陽愛、足とか痛くないか? 結構歩いたからな」
「正直ちょっと痛い。けどあれだけ歩いたんだから当たり前だよ。それに歩き回るのには慣れているから大丈夫」
「なれてるって、そんなに歩くことあるか?」
「ショッピングモールに行ったら色んな服屋さん見ちゃうからね。帰ったらへとへとだよ」
確かにお母さんとショッピングモールに出掛けた時も服屋めっちゃ見てたな……同じ日に同じ服屋に三回入った時もあったし。
お母さんからは女は服選びとかになると時間がかかると言われていた。
「蒼汰は大丈夫なの?」
「俺も痛い。久しぶりだからな、こんなに歩いたの。何時も家に居て出かけることなんてほとんどないし」
と言っても、陽愛と付き合ってからは結構色んな所に行った。けれどここまで歩くことは無かった。
「あはは、蒼汰らしいね。でもちゃんと運動もしないとダメだよ?」
「体育の授業でしてるから大丈夫だ」
「週に二回しか無いじゃない」
「そうだけど……運動好きじゃないし」
「昔からそうだよね~。小学校の頃とか休み時間にみんなサッカーとか外に遊びに行っていたのに蒼汰だけ教室の中で本読んだり眠ったり、ぼーっとしてたよね」
「別に良いだろ。それが良かったんだから」
「はいはい。ねぇ蒼汰。もう少しで頂上だよ」
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