第26話

 やっちゃった、やっちゃった、やっちゃったぁ~~~~‼

 蒼汰にキスしちゃった~~~~。

 何やってるの私! いくら夏祭りって特別な日で雰囲気が良いからって急にキスとか……恥ずかしい……

 蒼汰、急にキスされて引いてないかな……

 でも蒼汰がしてくれないのがいけないんだもん! 

 彼氏なんだからキスくらいしてよ……特別な日なんだから。

 キスじゃなくてもハグでもいいからしてよ!

 

「い、今のって……」

「い、言わなくても良いから!」


 私は恥ずかしさのあまり蒼汰の顔を直視できず、真っ暗な夜空に輝く綺麗な花火を見る。

 私は花火が大好きだ。一瞬の輝きで人々に色々な感情を与えられる花火が大好き。

 そんな花火を蒼汰と二人っきりで見れるなんて、凄く嬉しい。これも斗真くんのおかげだなぁ。

 この場所は斗真くんが私に教えてくれたんだ。

 斗真くんは蒼汰から私と夏祭りに行くことを聞いていたらしく。二人っきりになれて花火が凄く綺麗に見える場所があるって言ってこの場所を教えてくれた。

 斗真くんに改めてお礼しないとね。


「綺麗だね。花火」


 花火の咲く音だけが響く中。私は蒼汰に話かけた。

 でも、蒼汰の顔を見れない。多分私の顔はまだ赤いままだから。

 

「そ、そうだね。凄く綺麗」


 私は家で花火をやったりしないため、花火をこうして生で見るのは一年で一度だけ。

 こうして蒼汰と一緒に居ると、つい思ってしまうことがある。

 もしあの日に私が蒼汰に告白していなかったら、今蒼汰の隣に居るのは私じゃなかったかもしれないって。

 そう思うとあの日の私にはこれ以上ない感謝をしなきゃいけない。勇気を出してくれてありがとうって。

 

「やっぱり生で見るとテレビとか映像で見るのとは迫力が違うよねぇ~」

「そうだね」

「あ、ちょっと後ろ向いてよ」


 私は蒼汰にそう言って後ろを向いた。

 

「あ、うん。わかった」


 蒼汰が後ろを向くと、私は右腕で蒼汰と腕を組んでもう片方の手でスマホのシャッターボタンをおした。

 こんな楽しくて幸せな時間を形に残さないわけにはいかない。

 どうせ私の事だから毎日寝る前に眺めるんだろうなぁ~。

 

「ちょっと待ってね、今送るから」

 

 私は直ぐに蒼汰に今撮った思い出を送った。

 写真をよく見ると、蒼汰の顔が赤くなっていた。


「蒼汰、まだ顔赤いよ?」

「だ、だって。その……」

「その?」

「その……これ…………」


 そう言って蒼汰はスマホを指さした。

 スマホに映っていたのはさっき撮った思い出で、蒼汰の指は私の右腕を指していた。

 

「ッ~~~~~~~~‼」


 蒼汰の顔が赤くなった理由が分かって私も顔を赤くする。

 今日で何回顔を赤らめたら良いのよ!


「……………………えっち」


 蒼汰の左腕は私の胸に思いっきり当たっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る