第15話 (電車)
(電車)
「よ、おはよう」
「おはよう……///」
いつもの交差点。でも、今日は東ではなく西側に俺たちの影が出来ていた。普通に言うなら、今は朝。
これは偶然、偶然なのだ。
雪葉と登校したい、って思ってたら、雪葉とあっただけだ。交差点で立ち止まっていたのは道が分からなくなったからだ。
俺は決して、雪葉を待ち伏せするような変態ではない。
「お、おはよう。そ、その……昨日はごめん」
「こちらこそいろいろとごめんな。俺が言うのもなんだけど仕方ないよ」
「……っ。ん」
「で、俺の考察を勝手に述べると俺が雪葉にす――告白すれば、恥ずかしいメーターが振り切れて人格が変わるんだと思う。という設定にしておこう。その方が楽だろ? 作者にとっても」
「作者……? あぁ、作者ね。……って、ってか、昨日私のこと考えてた訳?」
「ん? ま、まぁそうだな」
なんだその聞き方は?
俺が変態みたいな言い方じゃぁないかぁ~。一日中雪葉の事を考える変人見たいじゃ――
なにも間違ってないことに今更ながら気付く。
見ると、雪葉の顔が赤かった。
「き、キモいって思って、はしたないって思うから顔が赤いだけ」
キモいか。そう言われて、雪葉がいつもと変わらない事に少し安心する。
罰ゲームで告白したことがバレてる訳じゃなさそうだ。
「もしここで会えたのが偶然じゃなくて、悠人が私を待っててくれたなら私は――っ!」
突然早口になって、手をパタパタと振り出す雪葉。ぺ、ペンギンみたいで可愛い。
あと話しの路線を急に変え出すところも可愛い。
そう、眺めていると、勇気を振り絞るようにギュッと目を瞑って、口を開いた。
「わ、私はう、嬉しいっ。なんて思ってないっ!」
「わっ! ちょ、待てよっ、速い速い!」
突然雪葉が走り出す。慌てて、本能的に追いかける。それはまるで確かに外から見ると高校生のかけっこ。
だけど、俺が雪葉を待ち伏せしていたことは、社会的に見ればストーカーだ。
そんな状況で、俺が逃げる雪葉を追いかけたら、それこそ変質者に決まってる。
そう思った瞬間、身体が硬直して、その場に立ち止まる。
春だと言うのに悪寒がして、知らない間に腕をさすっていた。
「怖」
前を走っていた雪葉も立ち止まって顔を押さえ、俯く。そしてそのままビルの壁にもたれた。
雪葉はずるずると中腰まで腰を下ろし、荒く肩を上下させる。
腕を摩りながらゆっくりと雪葉に近づいて声を掛けると、今度は逃げなかった。
「雪葉、その伝わったから、うん。俺雪葉と登校したかったから雪葉の事――」
そこで言葉が詰まる。
「待ってたりなんかしてねぇけどっ――ま、まぁ一緒に登校できて嬉しいよ。うん。行こうぜ」
「ウソツキ……待ってたくせに」
「さぁ? けどなんで俺が雪葉を待ってたなんて思ったんだ?」
「何でもないっ。ホントは私より1本後の電車に乗って欲しいけどっ、朝礼まで時間ないから一緒に登校してあげるっ」
腕時計を見ると、電車を3本逃しても、朝礼に余裕で間に合う時間だったのがミソだ。
なんで悠人が私を待っていたのがわかったかだって?
私だって、交差点の反対側から悠人を数分、見ていたのだからそれぐらい分かる。
でも、そんなこと言えるはずがない…から私は黙って、隣に感じる悠人の気配だけでドキドキしている心臓を隠すことにした。
Ps:まぁそこまで重大なことでもありませんので。
話、短くてすいません。
次回から3章です。
星、ハート、よろしくおねがいします🎵
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