第52話 (傘・タオル)
(傘・タオル)
「大っ嫌い!」
そう叫んだこのバカを抱きしめる。足が地面から離れるようにキツく、雪葉が苦しいと感じるぐらいに強く、痛いぐらいに乱暴的に抱きしめる。
それが雪葉にも分かったのか、首をへし折る勢いで抱きしめ返された。
「俺の足の上に足置け。地べたに立つよりはマシだろ。それとさ……クレープって
「ばかぁ……当たり前だしぃ……」
「バカは雪葉だよ。ちょっと待ってろ」
いい加減雨にずぶ濡れで寒くなってきたので抱きしめる力を緩めて、傘を差す。
周りの人の目が気になってきたけど、雪葉は周りからの視線に気付いてないようなのでじっとしてやることにした。
「ごめん、好きだ。俺はどんな雪葉も――」
「今は私だから!」
雪葉が泣きながら叫ぶ。首をしめる力が強くなった。
「今だけでいいからっ……またすぐに変わってもいいから。今は、今だけは私を……私だけを……おねがい」
すがるような泣き声に、また自分はかける言葉を間違えたのかと気づき、自分のバカさ加減に呆れる。
雪葉を改めて抱きしめて、言った。
「……雪葉、今のお前が大好きだ。素直じゃなくて損ばっかして、恥ずかしがり屋でバカで短気で。
でも俺のことを好きでいてくれるなら……大好きだ、雪葉だけが、今の雪葉が世界で一番好きだ。
クレープの文言を一文字ずつ挟んだっていいぐらいマジだ」
「……っ、言い過ぎ……ばか……」
文句をたれつつも、少し顔を赤くして目を逸らした。
「でも、私も、悠人のことが……っ、悠人が……っ……!」
この子は俺に好きだって言ってくれようとしているんだなって分かった。
だから、それだけで嬉しくて、傘を持っていた手で雪葉を支えて、今まで抱きしめていた方の手でびしょびしょの頭を撫でる。
「言えなくていい。別に無理して言おうとなんてしなくても――」
「うるさい!私一回も言ってないからっ、私が悠人にちゃんと言ったことないからっ……」
「今は、言えなくていいんだよ。なぁ、それに俺も言わなきゃいけないことがあるから。
いまは怖くて言えないけど、ちゃんと言うから。雪葉が俺にちゃんと言ってくれたら、そのときに俺もちゃんと言う」
もう一度抱きしめる。傘を打つ雨の音が大きくなっていった。
『お兄ちゃんの服しかないけど……いい?』
「あぁ、何でも嬉しい。でも俺が着ていいのか?」
『ん……たぶん大丈夫』
雪葉の家。浴室と脱衣所を仕切る壁越しに会話する。
全身びしょ濡れで酷かったので、雪葉の家のシャワーを借りることにした。当然、雪葉がシャワーを浴びた後だが。
曇りガラスの外に目をやると、微動だにしない影があった。
「雪葉?」
この先に全裸の悠人がいる。生まれたままの姿の悠人がいる。
脳みそがその文言で埋め尽くされていた。
変態的な思考が、私の口を開かせた。
「頭、一人で洗えない?」
そしてそういった。
「
「あ、あぁ。別に洗えてるけど……。どうした?」
「
「いや、届くぞ?というかそこにいられると出れない」
「っ……分かった」
雪葉が脱衣所から去った後。もしかして、俺の背中流そうとしてくれてたのかな?と変態的な思考を巡らせた。
リビングに入ると、雪葉がソファーに座っていた。
その向かいのソファーに腰をかけようとする。が。
「そこのソファー、さっき掃除したばっかりだから。このソファー以外全部さっき掃除したから。
「……あぁ、分かった」
隣に座れってことかな?
雪葉が手で叩いているところから少し離れた位置に腰を下ろす。と、不満げな顔をこちらに向けた。むくれている。
雪葉のすぐ隣に座り直すと、今度は嬉しそうにはにかんだ。
「髪、濡れたまま」
「あ、すまん」
「いい、私が拭く」
こちらの答えも聞かず、首にかけてあったタオルを抜き取った雪葉。その雪葉の腕が首にかかる。そしてゴシゴシと髪の毛を撫でられた。
ふと、水泳のあとに髪の毛を拭いてもらった時のことを思い出す。結婚したらうんたらかんたら、と言われたことも思い出す。
「ちゃんと拭かなきゃ髪が痛む……」
「あ、おう……」
そして雪葉は、俺が言うまでずっと俺の頭を拭き続けた。
「雨やみそうにないけど……帰っちゃう……?」
帰っちゃう?って俺が帰ることを寂しがるようなことを直接的に言ってるなぁ……とのんきに心の中でツッコんだ。
「いや、今日は母さんも兄貴も夕飯いらないから急いで帰る必要もないかな」
「そ……今日お父さんもお兄ちゃんも帰ってこないから」
「そ、そうかっ……」
その文言に、期待をしてしまう。というより、期待しない方がオカシイのである。
しかしながら雪葉は天然。ただ事実を報告しただけなのかもしれない。
そんな時、そっと手の平に細い指が滑り込んできた。
顔を染めてうつむいて、でも嬉しそうに口角を上げる雪葉の顔を見ても、その言葉の裏は読めなかった。
「悠人は家でぼっち飯……?」
「ぼっち飯って……まぁそうだけど」
「そ……。一人で作るの大変だし、手伝うなら食べさせてあげなくもない」
両手の指をそれぞれ突き合わせて、顔を染めてそういった。
かわいすぎて、気付けばその頭を撫でていた。
「あぁ、作ろうか」
「なっ――……でても……いいけどお金取る」
「いくらだ?」
「毎秒500円」
「じゃあ一生かけて返済するから一生なでとくよ」
「ばか」
ちょっとイチャイチャしすぎなのは自覚があったけど、心が弾むからそれでよし。
PS:間もなく、休載期間突入します。まだあと数話だけ、書くかもしれませんが……。(初告知)
さすがに疲れた。ほら、上の文章ズタボロでしょ?ボロボロすぎて読みたくなくなるでしょ?
だから……年単位で休業をください。ツンデレ彼女は僕が大学生になるまで封印する予定です。(ただいま高校一年)
微ツンデレのアマアマを味わいたいのであれば是非是非
『うしろの席の美少女が、僕をつかんで離さない』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054896641667/episodes/1177354054896642201
単なるツンデレを味わいたい方は
『ツンデレ気質なニセ彼女、実は甘えたがりのポンコツ照れ屋』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054895783431/episodes/1177354054895784120
文章クオリティは、『うしろの席の美少女』の方が高いです。
ぜひ、お試しください。
【連載版】俺のツンデレ彼女がかわいすぎる件 小笠原 雪兎(ゆきと) @ogarin0914
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