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をひたすらまっすぐ進み、石段を二、三段飛ばしで登り切った頃には二人の体力は限界を超えていた。


 二人が外に出てからしばらくも経たないうちに、通路は崩れ落ち、入り口は完全に塞がれてしまった。


「いったい、あれは何だったの!」


 ランダが息を弾ませながら言う。


「……わからない。ただ一つだけ言えることは、俺と君があの場所に行くことをあらかじめ予測していた誰かがいたということだ」


「誰かって……誰?」


「ノボウでも、君をさらった二人組でもない。もっと強大な力を持ち、俺らにその存在の一片すら垣間見せていない誰かさ。それがわかったら俺だってこんな混乱してないよ」


 森須は地面に仰向けに寝っ転がった。木の上ではターコイズ・ブルーのケツァールが何も起きていないかのように陽気に鳴いていた。森須はふとケツァールが古代文明の人々から大気の神として崇められていたことを思い出した。


 まさかその誰かって、神なのか……?




 その三




 いやはや、ここでつながってきたか!


 第五章まで読み終わった小野世は新談館の八階にある休憩室で耳をほじりながら原稿をいったん机に置いた。時刻はちょうどお昼時で、辺りは社員が自分の仕事を片手間に昼食を食べていた。


 いままでミステリーやサスペンスもので小野世が先を読み通せなかった作品は一握りしかなかった。しかし、この作品はそれぞれの物語が何かしらの方法でつながるのだろうということは安易に想像がついたが、そこに地球文明そのものを巻き込んでくるような展開までは予想していなかった。もし、これら全ての物語がうまくつなげることが出来たのなら、刊行されるのも夢ではない。


 まてまて、落ち着け。


 小野世は高ぶる気持ちを抑えた。まだ全て読み終わったわけではないのだ。すべて読んでからどうするかを決めよう。


 小野世は原稿を取り上げると第六章に目をやった。そこには短いポエムが書かれているだけで、一行空けて「最終章」と書かれていた。

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