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「何か共通点があるのかもしれない」
森須は死体を観察するために近づいていくと、あることに気づいた。
壁に文字が掘られている……。
そこには英語で『われ、常に汝らを見ている』と書かれていた。
「『常に見ている』? どういうことだ」
森須は急に背筋が凍るような寒気を覚えた。
「見て! あちこちに違う言語で書かれているわ」
ランダが指した方向にはスペイン語で。別の方向にはキリル文字や漢字、他にも古代文明の象形文字のようなものが刻まれていた。
「このメッセージは世界中のあらゆる時代に向けて発信されているのか? いったい誰が、何のために……」
困惑しながら、森須はさらに死体に近づいてみた。すると、彼らの血で壁に何か書かれていることが分かった。
『全てはモランでつながる』
……?
二人の頭の中に疑問符が一つ浮かんだ。
「『モラン』? 何かの固有名詞かしら?」
ランダがおずおずとつぶやく。
「とにかくこの遺跡を写真に撮っておかないと!」
森須は思い出したかのようにリュックから一眼レフを取り出すと、部屋のあちこちにレンズを向けた。世界中の古代文明の彫像、過去から現代までの言葉で刻まれた壁の文章、そして血で書かれたダイイングメッセージ。それら一つ一つにカメラを向け、シャッターを切った。
ピシッと嫌な音が聞こえたのは彼があらかた写真を撮り終えた瞬間だった。
音がした方を見てみると、死体を貼り付けにしている杭が壁を構成する石の一つに亀裂を入れていた。
「これってまずくないかしら」
ランダが語気を荒げた。亀裂はどんどん大きくなっていく。
「退避したほうが良さそうだな」
次の瞬間、亀裂が石全体に広がり、砕け落ちた。すると、まるでドミノ倒しのように次から次へと積み重なっていた石のバランスが崩れはじめ、部屋全体が音を立てて震え始めた。二人は何も言わずに出口に向かって駆け出した。最初に砕けた石の周辺の壁は既に崩落しており、部屋全体が埋まるまでは時間の問題だった。二人は必死に走り続けた。真っ暗な通路
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