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「これであなた何人目だっけ? ガールフレンド」
「ちょうど十二人目です! 彼女を落とせば、ほぼ毎日夜の相手に困らなくてすみますね」
ジョセフはそう言ってニコッと笑った。それを見て小練は彼に軽蔑の視線を送った。
これだから男は嫌いなんだ。唯一、男で好印象を抱いているのは腹違いの弟の優斗だけだ。彼はとても真面目で、医者になるために一生懸命勉強している。恋にだって一途で、つい最近も初めて彼女が出来たといってはしゃいでいた。世の全ての男性は彼を見習うべきだ。
突然無線が鳴る。
「小練、ジョセフ、こちらダン。応答願う、どうぞ」
上司のダンからだった。この無線が来たということは市内で事件が発生したことを意味する。
「今日のディナーはキャンセルになりそうね」
小練は皮肉をこめてジョセフに言うと無線を取り上げた。
「こちら小練、事件ですか?」
「ああ、十八区で趣味のわりぃ殺人事件だ、すぐに現場に急行してもらいたい」
「了解です、詳しい情報をお願いします」
ダンは事件が発生した場所を言った。
オマノ通り三十五二〇八号室……。
そう聞こえた瞬間、背筋が凍る思いがした。すぐにサイレンを点け、アクセルを踏み込んむ。急なスピードアップに隣のジョセフは目を見張った。
どうして? どうして、こうイライラしている時にそこなの?
小練は答えのない問いをひたすら繰り返した。事件現場は、まさに優斗が住むアパートだったのだ。
彼女はアクセルをさらに強く踏み込む。頭の中にインプットされた市内の地図には現在地から目的地までの経路が最短で表示され、目は車や通行人だけを認識し、ハンドルを握った手はそれらを無駄なく避けた。全意識を集中させた小練にはその後の事件の詳細が聞こえてこなかった。
現場に到着するころには彼女の体から大量の汗が噴き出ていた。それが暑さによるものか、想定する恐怖によるものか、判別がつかない。
現場に着いた小練には良いことと悪いことが待っていた。良いことは被害者は優斗ではなかったということ。そして悪いたことは現場にたたずむ優斗は体中血まみれで、その顔には表情というものが一切なくなっていたということだ。
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