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ランダはピザを一切れほおばると森須に向かって手を伸ばした。
「ねえ、そのマンゴージュース一口ちょうだい。さっきから、あなたが美味しそうに飲むから気になっていたの」
突然の彼女の言葉に森須はドキッとした。彼がいま持っているマンゴージュースはついさっき彼が口をつけたばかりなのだ!
これを、飲みたいと……
森須は本気で戸惑った。生まれてから一度も異性からそのようなことを言われたことがなかったから。森須は震える手を抑えながらランダに差し出した。彼女は受け取るとズズズッとストローで音を立てて飲むと、「うん、すごくおいしい」と満足げな声を出した。森須はその光景をただただ見ていることしか出来なかった。
「それで、その座標が示す位置には何があるの?」
マンゴージュースを返しながらランダは尋ねた。
「航空写真からは何もないように見えた。だから現地に直接行って確かめるしかないんだ。その……本当についてくるのか?」
森須は少しためらい気味で訊いた。
「もちろん。助けてもらったお礼に何かあなたの役に立つことがしたいの」
ランダは口角を上げて、満面の笑みを見せた。
「わかった。だが、その前にしっかりと装備を調えてからにするぞ。今のままだと昨日みたいになるからな」
「ええ、わかっている」
ランダの返事を聞くと、森須は窓の外に映る夕焼けを眺めた。真っ赤に染まった空はまるで静止画のようで、時がゆっくりと進んでいるはずなのに止まっているように感じた。
待っていろよ、ノボウ。
森須はピザの最後の一切れを手に取り、かじりついた。
翌日、二人はノボウのメモに記された座標に行くことにした。日中は気温が上昇するため探索を避け、ランダの装備をそろえた。探索を始めたのは昼と夕方の間、ちょうど気温が下がり始めた頃に行った。
イグナシオ・サラゴサから車で三十分ほど走ったところにある小さな村、エル・ナランハルから徒歩で密林の中を歩いて行く。記された座標までこの村からはおよそ三、四キロの道のりだが、足場が悪いため、サバイバルに慣れている人でも二、三時間はゆうにかかる。
歩き始めてから一時間半ほど経って二人は奇妙なものを見つけた。それは地中に続く石の階段だった。文明から逃げるようにして形成された楽園であるこの密林の中に、それは忽然
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