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 第二章



 モラン・ゴルディーは南アフリカ人で、小学生のころ同級生からいじめを受けていた。彼はマサイ族の血を引いているからか目がとてもよかった。そのため遠くにあるものがなんでも見えてしまうため怖がられた。そして彼はサッカーが得意だった。得意気にドリブルし、シュートする彼を仲間は快く思っていなかった。加えて彼の肌は黒かった。それが肌の白い同級生たちを不快にさせた。


 またモランはいじめられやすい性格をしていた。人を疑うということが一切なく、同級生の言葉に簡単に騙された。彼はそっけないふりをしていたが、内面はかなり傷ついていた。


 そんなモランに、当時のクラス担任であるチャーリーは救いの手を差し伸べた。チャーリーはいじめる同級生を突き止め、彼らと関わらないようにモランを行動させた。機会を失った同級生は次第にいじめる気力が失せ、モランに手を出すことはなくなった。


 チャーリーはよくモランに言った。


「モラン、お前は人を疑わない。それはとても素晴らしいことだ。だからその心を信頼出来る人のために使え。決して使う人を間違えるんじゃないぞ」


 モランは彼の言葉を強く信じ、生きる糧とした。


 中学校に入ってからモランは勉強するようになった。最初はチャーリーのように子供たちを導けるような教師になることが夢だった。しかし、高校の時に出会った最先端のテクノロジーに感銘を受けた彼は工学を勉強し始める。そのことをチャーリーに話すと彼は笑顔で、


「別に私は教師になれとは言っていないんだ。お前がその分野に興味があるのならそっちの道を進めばいい。それを繰り返していくことでお前の人生は素晴らしいものになる」


 と、言ってにっこり微笑んだ。


 その後、モランは南アフリカを飛び出してMITに進学し、修士号を修めた。そこで得た知識をもとにビジネスを行おうと考えたモランはハーバード大学へ二年間の短期入学をし、経済学とマーケティング論を修めた。

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