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「まあ、高卒の君たちには到底理解出来ないかもしれないが理論上は可能だ。心拍数を上げ、汗腺とすぐ近くにある血管に何らかの方法で穴を通せば、そこを血液が通って出血する……」
そこまで言うとジルは今までに見たことないくらい険しい表情を浮かべた。
「けど、問題はその汗腺と血管をつなげた何かだ。そんなこと、今のバイオテクノロジーを集結させても不可能に等しい。ましてや学校の成績が優秀なただの高校生にそんなことが出来るとは到底思えないね」
彼の声はひどく乱れ、興奮すら感じられるほどだった。
「ウイルスということは考えられないかしら」
小練はふと疑問に思った事を口にした。
「現在確認されているウイルスにそんな器用な奴はいない。もし新種のウイルスだったとしたら、発症してから数秒で死に至ることを考えると、今頃この十八区は血があふれた死体に埋め尽くされているだろう。数時間後にはパリ市内全域で同じことが起こっているはずだ。バイオテロだとしても同じことが言えるね。まして……」
そう言い終わらないうちに白衣姿の同僚と思われる男がジルを呼びに来た。ジルは少し不満そうに技術局の車に向かっていった。
「ま、こっちもいろいろ調べてみるからそっちもそっちでちゃんと捜査してくれ。そうじゃないとこの事件、解決出来ないと思うんだ」
「先輩……」
隣でジョセフが声をかけた。
「優斗が言っていました。ヘレナは自分のせいで死んだんじゃないかって。自分がヘレナを殺してしまったって。彼、きっととても苦しんでいると思います。彼のためにも一刻も早く事件を解決しましょう」
そうよ、これは優斗のため。少しでも彼を安心させるために私たちが頑張らなくちゃ!
小練は拳を固く握りしめた。
時刻は夕方の十八時を迎えようとしていた。
「ジョセフ、今日はやることもないんでしょ? まだ間に合うんじゃない、十九才のチアリーダーとのディナーに」
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