第51話 馬鹿が絡むと大変だ

 総てを消し去る能力。それを持つ黒城。

 そんな奴にどうやって対抗すればいいのか。

 友星は泰斗と合体したカッコイイ格好のままで、わたわたとする。

「ホント、お前ってつくづく甘やかされているんだな」

 そんな友星に、黒城はますます冷たい目をして見てくる。それはもう、憎しみの原因は総てお前にあると言わんばかりだ。

「あ、甘やかされてなんて」

 これでも苦労しているんだぞと言おうとしたが、はて、苦労しただろうか。

 たしかに両親がいない、祖父母に育てられた身の上。しかし、あまり苦労はしていなかったように思う。

 親なしと誹られたところで、だから何、ぐらいだったし。両親は確かに傍にいなかったが、祖父母が温かな家庭を用意してくれていた。

「あれ? 俺って甘やかされていたのかな」

「おい。敵の言葉に中途半端に惑わされてどうする? 俺もフォローしにくい」

 真剣に悩む友星に、晴明はしっかりしろよと呆れていた。その様子に、あれえと友星は困る。

「馬鹿馬鹿しい。どうやらまだ、安倍晴明の方が話が通じそうだ。苦労されてますもんね」

 そんな友星に見切りをつけ、黒城は思わず晴明に話題を振った。すると、晴明はうるせえとばっさり。

「千年以上も前の話だ。なんだ、苦労した話を聞いてもらいたいのか?」

 晴明も、友星を通すと面倒だからとそんなことを言い出す。

 あの、置いていかないでと友星はよりわたわた。

 しかし、黒城に共感できる要素はゼロっぽかった。

「別に聞いて頂かなくても結構。ただ、すんなり消えてもらえれば」

「そいつは無理だ。おい、友星。戦え」

 でもって晴明、口では相手するくせに戦うのは友星に丸投げしてくれる。

 友星はどうしてと、今度はムンクの叫びだ。

「言っただろ? 俺は今、神の区分に入っている。半妖とはいえ下手に人間には手出しできない」

「あ・・・・・・そうだった」

 しかし、晴明の真っ当な反論に友星も諦めるしかない。

 そうだ。誰も友星なしに一人では戦えないのだ。だから友星がこうしてあれこれと戦っていて――と、なぜか今までのことが走馬灯のように頭を駆け巡る。

 あれ、ひょっとして死ぬのか。

「おい。また馬鹿なことを考えているな」

「ふうむ。我が息子はなかなか行動しないタイプか。なるほど」

 呆れる晴明と、そういう性格なんだよと言い出すツクヨミ。

「あ、そうだ!」

 そして、何故か急に閃いたという声を上げる莉空。

 そんな三者三様の反応に、友星だけでなく黒城もどう手出しをすればいいんだと困り顔だ。さすがに敵がこんな緊張感のない奴らだとは思わなかったらしい。

「あの」

「俺に任せろ!」

 どうしようと友星が思っていたら、バサッという羽音と共に莉空が横に現れた。そして、にんまりと人の悪い笑顔を浮かべる。

「お、おい」

 嫌な予感にたじろぐ。それは泰斗も同じようで

「莉空。早まってはいけません」

 と友星の中で悲痛な声で訴える。が、もちろん莉空には聞こえない。

「とっとと行っちまえ!」

 で、その莉空はというと、いきなり友星の襟首をむんずと掴むと、全力で黒城に向かってぶん投げた。

 そう、ぶん投げた。

「あっ」

「マジか」

「――」

 晴明、ツクヨミ、そして呼び出されたままの龍神は、そのとんでもない展開に目が点になる。

「行けないならこれでいいだろ!」

 そしてそんなカオスの張本人たる莉空は胸を張って威張った。が、今は褒めている場合ではない。

「ぎゃああああ!」

「お、おいっ」

 投げられた友星と、さすがにこんな馬鹿な行動は読めなかった黒城。その二人は、ものの見事に空中でごちんっとぶつかった。

「――」

「――」

 そして、なぜか二人揃ってその場から消えてしまうのだった。

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