第48話 予想外の連携

  助けなければ。

 その一心で放った雷は特大だった。

「どわっ」

「すげえな」

 自分で指示した雷だというのに、友星はその音圧に圧倒されてしまう。

 しかも目の前でどがんっと、とんでもない音が鳴って光るものだから迫力は凄まじかった。

「次だ」

「は、はい」

 しかし、一発で祓えた量はせいぜい五十匹ほど。まだ下には大量の悪鬼がいるし、雲の中にもうじゃうじゃといる。

 友星はもう一度と集中し、莉空とともに雷を放った。また五十匹くらいが消える。

 が、どうに埒が明かない。というか多すぎる。

 黒雲はまだまだ向こう側からやって来ていて、どんどん数を増している。このままでは下の妖怪たちが食い尽くされるのが先だ。

「ツクヨミ、雨雲を呼べ。雷だけでは無理だ」

「ええっ。俺は龍神じゃないんだぞ」

「だったら龍神を呼んでこい」

 晴明のむちゃくちゃな指示に、ツクヨミは仕方ないなと本気で龍神を探しに行った。

 それに泰斗は呆れてしまう。自分で出来そうなものなのに。そんな気分だ。

「あの」

「お前もぼんやりしている場合じゃない。莉空との連携が終わったら行くぞ」

「え?」

「馬鹿。お前は冥府を取り仕切る立場だぞ。悪鬼どもに命令を下すんだよ」

「ああ」

「ただ、今は黒城の命令が有効な状態だからな。友星を使う」

 晴明はそう言って、必死に雷を打ち続ける友星と莉空を見た。

 半妖であることを知らず、どうすればいいのか解らず、ただただここで戸惑っていただけの青年。それが今や半妖として立派に成長し、この街を救おうと奮闘している。

 雷の威力は今まで見た中では最強。崇徳院と連携しているかのような大技が続いている。これだけ出来るようになったのだ。今の友星ならば、冥府の長官と連携することも可能なはずだ。

「友星。こっちに飛べ」

「へっ」

 一通り地上に落ちていた悪鬼を祓い終えた友星に、晴明は泰斗に向かって飛べと指示する。が、上空八百メートルほど。簡単に飛べと言われて飛べる高度ではない。

「む、無理」

「俺に任せろ」

 ビビる友星を、莉空は泰斗に向かって自分が飛ぶのではなく、掴んでいる友星をそのまま放り投げた。

「ぎゃあああ」

 ボールのように簡単に投げられてしまった友星は絶叫。しかもふわふわと浮かんでいる泰斗に向かって一直線だ。

「あっ」

「ぎゃあああ」

 で、泰斗も泰斗で、どうやってキャッチすればいいのか悩んでしまったらしい。結果、二人は上空でごちんっとぶつかってしまう。が、それだけではなかった。

「なっ」

「えっ」

 晴明と莉空は何が起ったと息を呑む。二人が光に包まれ、周囲が一気に明るくなる。さらに、黒雲をも吹き飛ばしていく。何だか大爆発が起こったかのような状況になった。

「おい、晴明」

「黙ってろ」

 予想外の事態に晴明も手出しできない。しかし、これは悪いものではない。それは解る。だからこそ静観しているのだ。

 周囲が悪鬼どもの放つ陰の気から、陽の気へと変化していく。

 やがて雲の半分を蹴散らした頃、光が徐々に薄くなった。そしてそこから現れたのは一人の人物。

「あれって」

「まさかそういう連携も可能だったのか」

 光の中、そこから現れたのは古代の中国を思わせる衣服を纏った、精悍な顔つきの男性だった。

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