第49話 泰斗の威力は絶大

「え? ええっ!?」

 光が収まって後の一言。精悍な顔つきの男は、中身ははやり友星なので、間の抜けた絶叫をした。

「あれ、泰斗は?」

「やっぱり連携のメインは友星ってことか」

 莉空と晴明はそれぞれ、そういう仕上がりになるんだと妙な納得。

 外見の多くは泰斗に依存しているというのに、中身はまんま丸ごと友星となっているらしい。

「あの?」

「あれだ。フュージョン。漫画で見たぜ」

「その言い方はあれこれ問題がありそうだが、まあ早い話、お前は今、泰斗と合体している」

 戸惑う友星に、あれだよなと莉空が漫画を思い出してポーズを決めてみせるので、晴明がやんわりと訂正。

 非常に緊迫した事態のはずなのに、相も変わらず締まらないメンバーである。

「合体。え? じゃあ、この姿は」

「泰斗、というより泰山府君そのものの姿だな。世間に流布している絵巻物なんかだと、そういう中国風の格好で描かれることが多い」

「へえ」

 晴明の説明に、こんな衣装を着た人が正しい姿なのかと、未だに泰山府君を理解していない友星は感心。

 それに、晴明は大丈夫かなと若干の不安を覚えるものの、もちろん表情には微塵も出さない。

「友星。今のお前は泰山府君と同じ能力を有していると考えていい。いいか、悪鬼どもに、地獄に引き返すように命令するんだ。いつものように、泰斗と連携しているのだと意識すれば成功する」

「わ、解った」

 友星は何とか混乱を収め、じっと半分に減った黒雲を睨み付ける。

 すると、黒雲の中がざわざわとざわめいているのが解った。

 それはもちろん、目の前にいきなり上司が現れたから。もしくは先生に見つかった不良状態。

 どうする、どうすると、ざわざわしていた。

「悪鬼ども。仕事は如何した? 地獄へ戻れ!」

 友星がその言葉を発すると、なんと、泰斗の声が重なって響いた。なるほど、ちゃんと連携している状態だ。そして冥府を管理、つまり地獄を管理する立場にある泰山府君の言葉は絶対だ。

「――」

 暗雲の中にいる悪鬼たちは黒城も怖いが、こっちももっとおっかないと、さっと撤退していく。その命令の絶対さに、連携している友星もビックリしたほどだ。

「おおい。龍神を捕まえてきたぞ。って・・・・・・誰、それ?」

 そこに龍に跨がって戻ってきたツクヨミが、そちらはどなたと友星を見て驚く。ついでにどこにも鬼がいなくてビックリ。

「えっと、泰斗と連携中ですが友星です」

 友星がそう名乗ると、へえとか、ほうとか、ツクヨミはしげしげと友星の顔を見る。

「あの」

「その格好ならばいいな。よし、今後はずっと泰斗と連携していたらどうだ?」

「――お断りします。というかあんた、やっぱり自分の息子にしては見た目が普通過ぎるって思ってたな?」

 友星が全力でツッコむと、ツクヨミは素知らぬ顔をする。が、やはり美形じゃないことに納得していなかったのだ。

「まったく」

 空の上で何をやってんだかと呆れる晴明と、呼ばれたのに仕事がなくて困っている龍神。莉空は普通に状況を楽しんでいる。が、和んでいる場合ではなかった。

「っつ」

 びりっと空気が震えるのに気づき、全員が一斉に同じ方向を向く。それは先ほどまで黒雲が漂っていた場所だ。そこにより真っ黒な空間が出現し、一人の男が立っている。

「黒城」

「やはり、俺自ら手を下す以外にないようだな」

 今日もスーツ姿の黒城は、そう言って凄絶に笑ったのだった。

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