第4話 勇者は他にいない
「話を整理すると、その敵の半妖は人間と妖怪の嫌な気持ちから生まれて、どっちにも復讐しようとしてるってことか?」
非常に、非常に乗り気ではないが友星がそうまとめると、泰斗と莉空は揃って大きく頷いた。
マジか。マジなのか。
それを、唐突に誘拐した俺に解決させようと。
めちゃくちゃじゃないか。
「無茶は承知ですし、我々が解決できるのが一番だと思いました。その、ここに連れてくるまでは能力を使わないようにしているだけかと思ったんですが、実は父上がその能力を封じているようでもありますし。
しかし、我々には人間の感情が解らない部分がある。特に、狐者異と人間の負の感情。これは我々に理解できない。私は泰山府君と呼ばれる存在で人間を等しく見ることは出来ますが、多くの感情を理解しているわけではない。
天狗も人間に近い存在ですが、その負の感情を読み切れない。そしてそれは、その感情に基づいて動く敵のことも解らないということなんです」
「――」
あっ、ますます逃げられないパターンになってきたぞと、友星は遠い目をしてしまう。
というか、自分の能力は封じられているだけなのか。それにビックリなのだが。
そもそも、半妖だという話自体、こんな突飛な場所だから信じているだけで、いつもの街角で言われたら絶対に信じていない。
「そう考えるのが妥当だと思います。父上は友星君の成長に害がないよう、妖怪としての力を封印したのでしょう。友星君は今まで幽霊や妖怪を目撃したことがないんですよね?」
「ええ。まったく。霊感がないって思ってます」
きっぱりと言ったものの、すでに目の前に泰山府君という地獄の妖怪と天狗がいるのだ。何とも空々しい言葉になる。
「これは相当にハードなことになりそうだぜ。ぱぱっと解決しそうにないじゃん」
誘拐してきた莉空が不満そうに口を尖らせる。
なぜだ。不満があるのはこちらなのに、なぜ誘拐犯に不満そうな顔をされなければならないのだ。
というか、どんな勇者もぱぱっとは解決してくれないぞ。
「あのさ、他に半妖の人っていないわけ?」
友星はなんとかこの勇者的な役割を他に押しつけられないのかと訊く。
「いませんねえ」
「聞いたことないな。というか、人間と交わって子をなせるほどの妖力を持った奴が少ねえもん。お前の父ちゃん、神様だし」
「――妖怪、なんですよね?」
それって半妖って設定すらぐらついてないかと、友星は泰斗を見る。
すると、それが先ほどのややこしい話なんですと、大きく溜め息を吐かれてしまう。
「ややこしい」
「ええ。つまり、本来は神様だったのですが、人間が月に棲む妖怪という性質を与えてしまったのが、あなたの父上である
「た、確かにややこしそうです」
一発で理解できそうにないと、友星はギブアップした。
何だ、性質が付加されるって。
認識が強まるって。
理解できないの連続だ。というか、神様が妖怪として認識されるなんてことが起こることにビックリだ。
「ま、要するにお前の親父さんは妖怪であり神ってことだよ。どうだ、最強って感じがするだろ?」
「いや、それはまあするけど」
莉空の言葉に、友星は力なく項垂れてしまうのだった。
誰か代わってください。この希望を粉砕された気分だった。
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