第52話 魔王軍襲来の後始末。

 俺は錬金術で障壁を張り矢を防ぎながら、大きな声で叫ぶ。


「安心しろ! この地竜は手懐けた!」

「え? ルードさん?」「うおおおお!」

「さすがルードさんだ……」


 俺を知る冒険者たちが、驚きや安堵、尊敬の混じった色々な声をあげる。


「あれが、噂の……」「地竜を手懐けるとは」

「魔人殺しのルードヴィヒ」


 俺と面識のない騎士たちも冒険者たちの反応を見て、俺が誰か理解したようだ。

 騎士たちもどうやら俺の名前は知っているらしい。

 話が早くて助かる。


「ルード! 魔人はどうなった?」


 ひときわ通る声は冒険者ギルドのマスター、ギルバートのものだ。


「きっちり仕留めた! 安心しろ!」

「見事だ!」


 ギルバートが嬉しそうにそう言うと、


「「「うおおおおおおおおおおおおおっ!」」」

 冒険者も騎士たちも歓声を上げる。


「地上にいるやつらは任せろ」

「ありがたい! 城壁を登ってきたやつの対応だけで精いっぱいなんだ!」


 そう言われて改めて見ると、ゴブリンとオークの集団はまだ統率がとれている。

 地竜とは違い、俺が倒した魔人に精神支配されていたというわけではないらしい。


「そりゃそうか。ゴブリン連中は数が多すぎるし、そもそも弱い」


 魔人が一匹一匹、全て精神支配するにはコストが高すぎる。

 俺は地竜に指示を出し、地上のゴブリンやオークを跳ね飛ばしまくる。

 追いついていたガウもゴブリンたちを、どんどん仕留めていった。


「とはいえだ……」


 地竜と巨大な魔狼ガウが突っ込んできたのだ。

 普通に考えれば、ゴブリンもオークも恐慌状態になって逃げだすはずだ。


「……誰か指揮している奴がいるな」


 魔人に精神支配もされていないのに、統率が取れている。

 逃げ出しもしない。

 地竜や巨大な魔狼より恐ろしいと感じている奴が、この中にいて指揮をしているはずだ。


 俺は城壁の上に向けて大声で叫ぶ。


「少し冷えるぞ!」

「ん? ああ……わかった」


 返事をしてくれたギルバートは何のことかよくわかっていなさそうだ。


 俺は魔人から取り戻したばかりの賢者の石を取り出す。

 そして周囲一帯の地表から高さニメトルの範囲の温度を急激に下げる。


 単に極小の物質の動きに直接介入し急激に抑制させたのだ。


 ――バキイィィィン!!


 ゴブリンもオークも地表付近にいる魔獣は凍り付く。

 ガウと地竜は俺の錬金術で保護しているので大丈夫だ。


「ががぅぅ」

「ぐるるるぅぅ」


 だが、とても寒そうだ。


「すまないな、少しの辛抱だ」


 城壁を登っていたゴブリンやオークたちも凍えだして動きが悪くなった。

 上から矢を射かけられて次々に落下する。


「ついでだ」


 俺は物質移動の錬金術を使って、空気中の水分を利用して城壁を濡らす。

 するとたちまち凍り付いた。


 手を滑らせて、ほとんどのゴブリンとオークが地面へと落下する。

 落下した先は絶対零度の世界。

 すぐに凍って、絶命する。


「これでよし。次は指揮を執っていたやつを……おや?」


 地表の気温が元に戻り、凍り付いたゴブリンたちが徐々に解凍されていく。

 すると、一匹のオークの死骸がぐにゃりと変わった。

 俺は地竜とともに、そこへと駆け付ける。


 それは人型で飛膜のある羽が生えていた。

 頭には角が生えている。


「魔人だな」


 恐らくこいつがゴブリンとオークの集団を指揮していたのだろう。

 魔人も絶対零度の世界には耐えきれなかったようだ。

 魔物の操作にたけているだけで、戦闘力は大して強くない魔人だったらしい。


 念のために周囲を魔法で探索してみたが、動く敵影は見つからなかった。

 ひとまずは魔王軍の襲撃を退けたと考えていいだろう。


「ルード! 見事な魔法。いや、錬金術だったな」


 城壁からロープをたらし、するすると降りて来たギルバートがそんなことを言う。


「ああ、人族には錬金術の方が魔法より相性がいいからな」

「後片付けはこっちに任せてくれ」


 俺はここ数日、偵察したり防壁を作ったり、薬を作ったりで大忙しだった。


「正直、とても疲れているんだ。頼めるか?」

「ああ、ルードは安心して休んでくれ」


 すぐに休みたいのはやまやまだが、確認しないといけないことがある。


「怪我人はどうだ?」

「たくさん出たが、ルードのヒールポーションのおかげで皆無事だ」

「それは良かった。俺の診察が必要なものは?」

「それも大丈夫だ、安心してくれ」


 何よりである。

 これで俺も安心して休めるというものだ。


「それじゃあ、後始末は頼んだ。すまないな」

「何を言う。ルードが居なければ王都は陥落していただろうさ。ゆっくり休め」


 そしてギルバートは俺の乗っている地竜を撫でる。

 地竜は大人しく撫でられていた。


「まさか、地竜を手懐けるとはな……。ルードにはいつも度肝を抜かれる」

「魔人に支配されてここまで連れてこられたんだ、放置したら可哀そうだからな」

「こんな巨大な竜を恐れずに可哀そうと思うとはルードはやはり違うな」


 変なところにギルバートは感心していた。


「じゃあ、今から俺は寝る。用があったら自宅に来てくれ」

「ああ、わかった」

「川の向こうにゴブリンの多数の死骸があるからそれも頼む」

「わかった。任せておいてくれ」


 俺は後を全てギルバートに任せると、自宅へと戻る。


「そういえば、高い壁で覆っておいたんだったな」


 高さ十メトルを超える幅の広い頑丈な壁だ。

 これでは避難民たちが戻ってきても中に入れない。

 それに日あたりも最悪である。


 とはいえ、夜盗やゴブリンの侵入を防ぐのに壁は有用だ。


 自宅と集落を囲む壁は高い壁は、高さニメトル程度まで下げておく。

 そして、四方に門を作っておいた。

 夜以外は開放しておく形にしておけばいいだろう。


「……あとは住民のみんなと相談して決めよう」


 自宅前まで地竜で移動する。


「お前は家の中に入れないな」

「……ぐるぅ」

「折角だ、小屋を作っておいてあげよう」

「ぐるるぅ!」


 地竜は尻尾から頭の先まで測った体長が十メトルはある。

 大きな小屋が必要だ。


 二十メトル四方で、高さ十メトルの小屋を作る。

 俺の家よりは一回り小さいが、充分大きい。

 地竜が口で開閉できる扉も取り付けて完成だ。


「賢者の石があると、本当に便利だな」

「ぐるぐうるるる」


 甘えたように俺に頭を押し付けてくる。


「いつもはこの小屋にいなさい。人に噛みついたらだめだよ」

「ぐるぅ」


 名前も考えてやらかねばなるまい。


「うーん。そうだなぁ。お前の名前はこれからグルルだ」


 我ながら素晴らしいネーミングセンスである。


「グルル!」


 グルルも嬉しそうに鳴いている。喜んでもらえてよかった。

 そして、俺はガウとリアと一緒に自宅に入って、眠りについたのだった。

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錬金術は魔法より圧倒的に強い~転生した最強の錬金術師は、劣等とされる錬金術で無双する~ えぞぎんぎつね @ezogingitune

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