第34話 家を作る準備

 王都の壁の外では、夜盗や魔獣が襲ってくる可能性がある。

 だから誰も王都の外に住んだりはしないのだ。

 王都の外に住むぐらいなら、王都の中で家のない生活をした方がいい。

 それでも最近では避難民の増加に伴い王都の外に小屋などが建ち始めているということだ。


「そんな小屋があることには気付かなかったが……」

「避難民たちは王都の門から離れたところにこっそりと建てていますからね」

「それほど避難民の増加は深刻なんだな」

「はい、本当に深刻です」


 他に人々がいるなら、俺もそこに混ざっても目立つまい。

 なにより、俺は夜盗も魔獣も怖くない。


 俺は王都の外に小屋を建てることに決めた。

 とはいえ、まだ確認しなくてはいけないことはある。


「小屋を建てることが違法ではないのはわかった。だが、土地は誰の物なんだ?」


 使っていない土地でも、人の土地なら勝手に住むわけにはいかない。

 後々問題になるだろう。


「誰のものでもありません。あえて言えば国王陛下の物ですね」


 王都同様、王都周辺も国王の直轄地だ。領主様はちゃんといる。

 だが王都の外の土地は誰かが所有権を主張しているというわけではないらしい。


「門のすぐ近くや街道沿いでもなければ、誰も文句は言わないと思います」


 さすがに門の近くや街道沿いなら行政から指導が入る可能性があるそうだ。

 景観や通行の問題があるからだろう。


「ですが、今の避難民が住んでいる場所のあたりなら大丈夫です」


 何度も門を通っている俺も気づかなかったぐらいだ。

 景観にも通行にも問題にならない。怒られることは無いだろう。


 逆に住み続けて数年経てば、その土地は自分の物になるらしい。


「それはありがたいな。小屋を建てることにしよう」


 小屋を建てることにしたとはいえ、その前に色々することがある。


 ヨハネス商会で色々と買う。

 まずは買い忘れていた薬品瓶、非常食、各種調味料などを買い込んだ。


 次に建材の購入だ。

 建材も住宅不足により値上がり気味らしい。

 だが、俺にはギルドでもらったお金があるので大丈夫だ。


 錬金工房用の特殊な材料も色々と買う。

 錬金釜の材料などだ。


 それら大量の資材を全部を魔法の鞄に突っ込んでいく。

 食料も大切だ。たくさん買い込む。


「ルードさんの魔法の鞄は本当にすごいですね……」


 ヨナに魔法の鞄を見せるのは初めてではないのに、改めて驚いていた。


 先日、ヨナとトマソンに魔法の鞄を製作することを約束していた。

 折角なので、お礼を兼ねて魔法の鞄を二つ作ることにする。


 ヨハネス商会で鞄を買って魔法の鞄へと加工する。

 前回作ったのと全く製法は同じだ。なんの問題もなくすんなり作れた。


「ヨナ。魔法の鞄を作っておいた。使ってくれ」

「いいんですか!?」

「ああ、お礼がわりだ。受け取ってくれ」

「ありがとうございます。すごく嬉しいです!」


 ヨナは大変喜んでくれた。作った甲斐があるというものだ。


「こっちはトマソンに作った魔法の鞄なのだが……」

「トマソンさんを呼んできます!」


 トマソンもすぐにやって来る。

 ガウとリアを見て驚き、王都の外に小屋を作ると言うとさらに驚いていた。

 そして魔法の鞄をプレゼントしたら、トマソンも非常に喜んでくれた。


 そして、俺は物資の調達を済ませる。

 ヨナとトマソンに見送られて、さっそく王都の外へと向かった。

 もちろん冒険者ギルドの者が尋ねてきたら、居場所を伝えるよう頼んでおくのも忘れない。



 俺は王都を門から出ると、避難民たちの集落の方へと向かう。


 門から王都を囲む壁沿いに三百メトルほど歩くと集落が見えて来た。

 粗末な小さな小屋が三十ほど建っている。

 木で作った簡単な柵で、その周囲が囲われていた。


「あの柵なら、ゴブリンぐらいなら足止めできるかな?」


 だが、夜盗を防ぐのは無理だろう。魔狼なども防げまい。

 夜盗も盗むものがないので近寄らないのかもしれない。


「ふむ。水は……。あっちにある川を使っているのかな」


 王都の壁を背にして、集落から百メトルぐらい歩くと川がある。

 その川は王都の水運を担う大きな川だ。

 上流の方へと歩いて行けば、荷下ろしをする船着き場などがあったりもする。


 避難民たちは、その川の水を生活のために使っているのだろう。


 俺は門から歩いて、集落から百メトルぐらい手前に小屋を建てることにした。

 距離をあけたのは避難民たちの生活を邪魔しないためだ。


「どういう小屋にしようか……」

「りゃあ?」

「ぁぅ?」


 リアとガウが、こっちを見て首をかしげている。

 そんなリアとガウの頭をわしわしと撫でた。


「ガウがストレスを感じない程度には広くないとだな」


 そう言うと、ガウが一生懸命尻尾を振った。

 そしてリアは羽をパタパタさせている。

 リアもガウも、ある程度は俺の話す内容はわかっているのだろう。


「全体的な広さと高さ、それに錬金術の工房も欲しいな」


 俺の拠点にするのならば、当然必要である。

 賢者の石を錬成できるぐらいの設備は作りたい。


「錬金術の工房を作るのなら、井戸も欲しいよな……」


 当然、下水処理も考えなくてはならない。

 錬金の排水を川に垂れ流すわけには行かないからだ。


 考えることは沢山あるが、俺はワクワクしていた。

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