第40話 家を建てよう その4

 俺は子供たちに向けて言う。


「錬金の排水は魔力を帯びた物質なども含まれるからな……」

「そうなんだ」

「場合によっては毒もな」

「どくっ!」

「きちんと知識を持って、正しく扱えば危険はないから安心しなさい」


 下水槽自体はトイレの下に設置したものと同じものである。

 だが、中に入れる浄水機能を司る素材と機構が違う。


「魔力を帯びたものと毒物を中和する機構を作る」

「素材は炭?」

「炭も使う」


 他には極めて少量の黄金と白金、錬金術で加工したミスリルである。

 それにさらに魔石を加える。

 それを薄く加工し層状にして完成だ。


 層状に加工する部分は形状変化だ。

 だが、その前の工程は形態変化が必要だ。

 先ほどの下水槽と似たようなことをしているが、求められる技術はこっちの方が上。

 魔力消費も高い。


 下水処理機構が完成すると、子供たちが嬉しそうに声をかけてくる。


「先生! これで完成なの?」

「この部分は完成だ。だが配管も済ませないとな」

「はいかん?」


 水回りの排水溝と下水槽をつなぐのだ。

 錬金の下水槽から、トイレ下の下水槽にもつなげる。

 錬金下水槽で処理した水を、トイレ下の下水槽でさらに処理するためだ。


 そして、すべての処理が終わり飲めるほどきれいになった水を川へと流す。

 下水から侵入や破壊工作をされないように、魔法的防御を整えることも忘れてはいけない。


「これで、ひとまず終わりだ」

「「やったー!」」「すごいすごい!」

「りゃっりゃ!」「がぅがぅ」


 子供たちはリアとガウと一緒に嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねていた。

 そして、すっと静かに俺の作業を見ていた大人二人が言う。


「本当に数時間でこんなお屋敷を建ててしまわれるとは……」

「錬金術とは本当にすごい物だったのですね……」

「錬金術って言うより、ルードさんが凄いのでしょう」

「本物の錬金術は、魔法よりも役に立つ。何かあれば言ってくれ」

「ありがとうございます!」


 すると、子供たちの中でも特に幼い子が俺の手を取った。


「ねえねえ、せんせい、はやく錬金術おしえて!」

「こら、ルードさんに迷惑だろう」


 大人が子供をたしなめる。

 幼い子供はしょぼんとしていた。


「もう夜だから、長時間は無理だが……。少しならかまわないよ」

「やったー」


 俺は子供たちに基礎の基礎の練習方法を教えることにした。

 錬金術の習得は、初歩の魔法の習得が前提となる。


「まずは魔力の流れを感じるところからだ」

「魔力の流れ?」


 人族は、量の差があるが全員が魔力を持っている。

 自分の体内を流れる魔力を感じ取ることが、魔法を使うことの第一歩だ。


「両手を前に出して」

「はい!」


 子供たちは素直に前に両手を出した。

 その手を握って、右手から左手へとほんの少しだけ魔力を流す。


「あ、なんかあったかいのが来た!」

「それが魔力だよ」


 俺は順番に子供たち五人全員にそれを繰り返す。

 並ぶ子供たちの列の最後になぜかリアとガウも並んでいた。

 リアもガウも両前足を子供たちと同じように前に出している。


 きっと何かの遊びだと思って、一緒にやりたいのだろう。


「はい。リア。これが魔力だよ」

「りゃあ」

「ガウも……。器用だな」

「がぅ」


 ガウは、いわゆるちんちんの体勢である。

 教えていないのに、器用なものだ。


 ついでなので、俺はリアとガウにも魔力を流しておいた。


「魔力を意識出来たら、自分の体内で魔力をうごかす練習だ」


 自在に動かせるようになるには慣れが必要だ。

 才能にも左右される。


「む、むずかしい……」


 子供たちも苦戦しているようだった。

 だから俺は一人一人にもう一度魔力を流して意識させたり、コツを教えたりしていく。


「いまから右手から流すから、一緒に流れろーって意識してみて」

「せんせいわかった!」

「結構いい感じにできているよ」

「えへへ」


 一時間ほど教えて、子供たち全員が魔力の流れをわずかに操れるようになった。


「あとは慣れだ。毎日練習しておきなさい」

「「「はい! せんせい!」」」

「りゃ!」「がぅ!」

「自在に操れるようになったら、次の段階に進もう」

「「「はい!」」」

「りゃあ」「がぁぅ」


 子供たちは素直で元気だ。リアもガウも元気である。

 そんなことをしていると、家に来訪者があった。

 避難民集落の大人である。


「ルードさん、ぜひ夕食をご一緒に食べませんか?」

「ありがたいが……いいのか?」

「もちろんです。井戸のせめてものお礼です!」


 俺はせっかくなのでご招待を受けることにした。


 集落に子供たちとガウ、リア、それに家の建築を一緒に見守った大人二人と戻る。


「ルードさん、お待ちしておりましたよ!」


 集落のリーダーの老女を中心としてみなが歓待してくれた。

 集落には全員が入れるような大きな建物はない。

 集落の中心、井戸の周りに布を敷いて、皆で座って食事をとる。


 リアとガウの分の食事も用意してくれているようだ。

 だが、リアはともかくガウは食事量が多い。

 生活が楽ではなさそうな避難民にとっては負担が多き過ぎる。


 だから、ガウの分の食事は自分で用意する。


「ガウは狼だから専用の食事があるんだ。すまない」

「そうなのですね」


 ガウの分の食事は魔猪の肉だ。

 それを魔法の鞄から出して焼いて食べさせることにした。


 そして俺は出された食事をごちそうになる。

 とてもおいしい食事だった。


 食後、避難民たちと和やかに交流していると、集落の入り口の方から声が聞こえて来た。

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