第32話 冒険者たちとの交流

 ギルバートも受付担当者も、話を聞いていた冒険者たちもみんな驚いていた。

 魔人は強いので、Fランク冒険者が倒すとは思わなかったのかもしれない。


「そうだな。倒した魔人は三匹だ。だが、一匹は影のようなものだったからな……」


 三匹と言い切ってしまうのは、少し違う気がした。

 だから、丁寧に説明しておく。


 だが、ギルバートは首を振った。


「いや、ギルドカードに記載されていたということは影も魔人と考えていいはずだ」

「確かに、影の魔人からも魔人の魔石は出たが」

「やはりそうか。三匹も倒すとは、ルードは俺が考えていたより強いのかもしれないな」

「し、しし、しかも! 最後の一匹は魔王軍幹部の炎の魔人です!」

「はっ? なんだとっ! 本当かそれは!」


 ギルバートが慌てた様子で、魔動機械の表示を見に行く。


「本当に、炎の魔人だな……」


 冒険者たちのざわめきが一層大きくなった。


「炎の魔人って言うと、辺境伯の砦を一匹で落としたって言う」

「第三王子と魔王軍との決戦でも、大隊を一匹で燃やし尽くしたと聞いた」


 冒険者たちの話を聞くに炎の魔人はどうやら有名な魔人だったようだ。

 炎の魔人はとても強かったので、納得である。


「えっとえっと、ランク昇格手続き……あ、報奨金手続きに、王宮連絡もしないと」


 再び受付担当者は混乱し始めた。

 冒険者が魔人を倒すと、色々な手続きをしなければいけないようだ。


 もしかしたら受付担当者は新人なのかもしれない。

 だから優しい口調で笑顔で言う。


「急いでいない。ゆっくりやってくれ」

「は、はい。ありがとうございます。ルードさん」


 ギルバートもにっこりと笑って、優しい口調で言う。


「驚く気持ちはわかるが、落ち着け」

「はい、ギルマス」

「王宮連絡とランク昇格の手続きは他の奴に任せろ。報奨金手続きだけしてくれ」

「わ、わかりました」


 それから、ギルバートは奥にいた職員に指示を出しはじめる。

 さすがはギルドマスターである。


 一通り指示を終えると、ギルバートは俺に向かって言う。


「さて。俺は王宮に行ってくる」

「魔人討伐の報告ってやつか?」

「ああ、そうなる。義務だからな。ルードは今日はヨハネス商会に泊まるのか?」

「ガウがいるからな……。他に宿をとるかもしれない」

「ヨハネス商会に泊まれなかったら、冒険者ギルドの宿舎に泊まれ。宿賃はいらん」

「いいのか?」

「ああ、今日明日はすぐに連絡取れるようにしておいて欲しいんだ」

「わかった」


 適当な宿に俺が泊まると連絡を取りたいときに困るということだろう。

 恐らくだが、魔人について軍人が話を聞きに来たりするのかもしれない。


 ギルバートは職員に指示を出し終えると、きちんとした服に着替えて出かけていった。



 そして俺はその場にいた冒険者たちにおごることにする。

 大金が入ったときはそうした方がねたまれずに済むので良い。

 少なくとも前世ではそういうものだった。


 俺もみんなと一緒に酒を飲んでつまみを食べる。

 リアとガウのために薄味の食べ物を頼むのもわすれない。


 そして俺は食事をしながら、リアにご飯を手から食べさせつつ冒険者たちとお話する。


「魔人はまじやべーからな。俺は遠目に見かけたことがある」

「ああ。Bランク冒険者のパーティでも出会ったら逃げるしかねーんだ」

「それをソロで倒すとはルードさんはソロでAランクパーティ並みだな」


 前衛職の冒険者たちは俺が魔人を倒したことで一目置いてくれたようだ。

 そして魔導師も目を輝かせて寄ってくる。


「ルードさん、肉体強化の魔法を教えてください」

「ああ、わかった。基本的には……」


 俺は簡単にコツと練習法を教える。

 元々魔法が使える魔導師なら、コツさえわかればそう時間がかからず習得できるはずだ。


「なるほど。そういう仕組みなのですね。難しいです」

「慣れればそう難しいことではない。練習あるのみだ」

「はい!」

「他の魔導師にも教えてやってくれ」

「わかりました!」

「わからないことがあれば、いつでも何でも聞いてくれ」


 魔法も錬金術と同様に、身に着けた技術を術者が自分だけのものにしがちなのだ。

 宮廷魔導師しか使えないということは、そういうことだ。

 排他的な秘密主義。それが衰退の主要因だ。


 だから、俺は基本的に技術をどんどん教えることにする。


「他人に肉体強化をかける方法もあるが、自分にかけるよりも難しい」

「そうなのですね」

「肉体強化の魔法薬を作ってもいいんだが、さらに難しい」

「それも知りたいです」

「自分の肉体強化ができるようになったら、コツを教えよう」

「ありがとうございます!」


 魔導師たちは笑顔でお礼を言うと、練習を始めた。


 そして俺は他の冒険者と話をする。

 ガウは大人気だ。みんなに撫でられ、お肉をもらったりしている。


 当初怯えていたリアも、すぐに慣れたようだ。

 机の上に乗って羽をパタパタさせる。

 リアのそんな姿を見て、冒険者たちは感動していた。


「ドラゴンだ」「かわいい……」

「撫でてもいいですか?」

「リア。いいか?」

「りゃ」

「いいようだ。だが、そっと頼む」

「わかりました」


 冒険者たちは、順番にリアのことをそっと撫でた。


 そんなことをしていると、


「ルードさん、ルードさん! 練習したので見てください!」

「俺も見てくれ!」


 魔導師たちは俺がさっき教えた肉体強化の魔法の練習成果を見せたがる。

 それを見ながら指導する。


 指導が一段落すると魔導師の一人が言った。


「ルードさんは魔法で肉体強化の薬も作れるんですよね?」

「ああ。効果は高いぞ」


 俺は肉体強化の薬だけでなく、リアとガウの傷も薬で癒したことを教える。

 薬の話には魔導師だけでなく、多くの冒険者が興味を持ったようだ。


「ルードさん、ガウの毛の状態を見るに、ものすごいやけどだったんだよな?」

「まあな。放置したら死んでただろう」

「いや、ルードさん、俺の知ってる火傷薬で治療しても確実に死んでるはずだ」


 それはその通りかもしれない。

 すると、一人の魔導師がおずおずと話しかけて来た。


「あの、ルードさん……」

「どうした?」

「魔法薬の作り方を教えてもらうことって……出来ませんか?」

「いいよ。だが……それなりに難しい」

「構いません!」

「俺も!」「俺も教えてくれ!」


 魔導師たちは、薬製作技術を習得する気があるようで何よりである。

 とはいえ、すぐに習得できるようになるわけではない。


 だから俺は基礎的な練習法だけ教えておく。

 具体的には魔力の操作技術を向上させる練習法である。

 薬製作しなくとも、魔導師としての技術も向上するので無駄にはなるまい。


「はい! 頑張って練習します!」


 魔導師たちは嬉しそうにさっそく練習をはじめた。

 それを見て俺は錬金術の基礎的な技法書を書こうと考えた。


 そんなことをしていると、受付担当者から声がかけられる。


「ルードさん、報奨金の準備が終わりました! 窓口まで来てください」


 呼ばれたので、俺はギルド受付へと向かった。

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