第31話 クエ達成報告
ギルバートは俺のもぞもぞ動く服を見る。
「二頭目の従魔は、ガウと比べて随分と小さいみたいだな」
「そうなんだ。リア、出てきなさい」
「り」
「いっぱい人がいるから少し怯え気味なんだ」
「そうなのか。かわいいな」
ギルバートは温かい目をしていた。
少しだけ混乱から立ち直った受付担当者が言う。
「ギ、ギルマス、ドラゴンです、ドラゴン」
「お前は何を言っているんだ?」
「だから、ドラゴンです」
「まあ、本当にドラゴンなんだが……リア。怖くないから出てきなさい」
「……りゃ」
もぞもぞと、リアが俺の首元から顔だけ出した。
「竜か? それも深紅の竜じゃねーか!」
ギルバートは目を見開いた。
深紅の竜は、竜の中でも特に強いことで有名だ。
だから余計驚いたのだろう。
「リアと名付けた。怪我していたのを保護したんだ」
俺は簡単に経緯を説明した。
「大丈夫か? 親竜が取り戻しに来たら大惨事だぞ」
「親竜はどうやらいないようだ。王都への帰路でも全く現れなかったからな」
「まあ、それなら大丈夫か。そのリアの分も俺が推薦しておこう」
「いいのか?」
「ああ。赤ちゃんなら深紅の竜でも、その魔狼、ガウよりも安全度は高いだろう」
「まあそうだな」
「だが、しつけと養育はしっかり頼む」
「任せてくれ。……助かる。何から何まで」
「気にするな。恩を感じてくれたら王都の冒険者ギルドを気に入ってほしい」
「もう、だいぶ気に入っているさ」
俺がそう言うと、ギルバートは本当に嬉しそうにほほ笑んでテキパキと指示を出す。
従魔登録手続きの準備は混乱していない別の担当者にやらせるようだ。
「あとは任務達成の報告だな。それは存分にこいつに報告してくれ。おい、しっかりしろ」
「は、はい!」
ギルバートに気合を入れられて、受付担当者は背筋を伸ばす。
「ルードさん、取り乱しました。なにせ竜を見るのは初めてだったので」
「珍しいからな。仕方がない」
一度受付担当者は深呼吸した。
「はい。ゴブリン退治クエストの完了報告ですね」
「ああ、頼む」
俺は受付にギルドカードを提出する。
ギルドカードには、討伐した魔物が自動的に記録されることになっているのだ。
魔物が持つ動的魔力が、静的魔力へ変化する流れを感知しているらしい。
誰が倒したかの判定も魔力の流れを感知しておこなっているとのことだ。
見事な魔道具だ。この点に関しては千年前よりはるかに進んでいる。
秘密主義が進んでいるとはいえ、魔法に関しては技術を持っているグループはあるようだ。
俺はそんなことを考えながら、受付担当者の手続きを観察する。
ギルドカードを魔導機械に設置するとゆっくりと読み取りが始まる。
そして倒した順番に魔物の種類が浮かび上がってくる。
「はい。ゴブリン十五匹。確認しました。おや? 魔猪も一頭たおされましたか?」
「そういえば倒したな。ゴブリン退治の後にお腹が空いたんだ」
「ルードさん! 凄いですよ! この魔猪には賞金がかかっています!」
「ほう? 猪にも賞金がかかるものなのか」
南方に魔王軍が現れる前に村々を荒らしまくっていた魔猪らしい。
今となっては魔猪が荒らした村々は、魔王軍から村人逃れたせいで廃村となっている。
だが、賞金は懸けられたままになっているとのことだ。
「それは幸運だった」
「まずゴブリン退治の成功報酬十五万ゴルドに、十五匹討伐の数ボーナスで十五万ゴルド」
成功報酬とは別にゴブリン一匹当たり一万ゴルド貰えるようだ。
なかなかおいしい。
「合わせて三十万ゴルドか。結構、もらえるんだな」
「はい。加えて魔猪の賞金五十万ゴルドです」
合計八十万ゴルドだ。
これだけあればケルミ草とレルミ草が大量に持ち込まれても報酬を払うことができるだろう。
「えっと、八十万ゴルドは現金で持ち帰りますか? それともギルドにお預けに?」
「薬草採集依頼の報酬にしたいから半分預けておいてくれないか? 半分は手持ちに欲しい」
「わかりました。すぐに手続きを……あれ? まだ読み込みが終わってませんね」
受付担当者はギルドカードを魔導機械から取り出そうとして手を止める。
魔猪が表示された後、しばらく経つのにまだ読み込みが終わっていなかったからだ。
「あれ? 機械の調子が悪いのかな? お待たせして申し訳ありません」
「いや、急いでいないさ。読み込みに時間がかかる事ってよくあるのか?」
「滅多にありません。どうしたのかな。あ、表示されはじめま――」
そこまで言って、受付担当者が固まった。
「……えっ? 魔人?」
「ああ、魔人も倒したな」
「一人で倒したんですか? ギルドマスター!」
「ああ、聞いていた。魔人を倒しただと? さすがはルードだな!」
ギルバートはニコニコしている。
「あっ、さらに魔人の討伐履歴が表示されました」
「え? ルード、一人で魔人を二匹も倒したのか?」
「……いえ、ギルマス。また表示されます…………合計三匹です」
受付担当者がそう言うと、ギルバートは目を見開いた。
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