第17話 冒険者ギルド再び その2

「詳しく教えてくれないか」

「ああ」


 スカウトはケルミ草とレルミ草を手に取って、観察しながら教えてくれる。

 スカウトの実家の農村では、畑の近くにケルミ草とレルミ草が良く生えているらしい。


 農業の邪魔なので、子供のころから草むしりをよくさせられていたそうだ。


「いやになるほど見たよ。根が深くて、草むしりは本当にしんどいんだ」

「確かに根は深いな。根もまた薬になるんだが……」

「家畜もこの草は食べないからな。農家にとってはうざいことこの上ない草だよ」


 俺はスカウトから村の位置を聞く。

 王都からそれほど遠くはなさそうだ。


「ギルバート、この草の採集依頼って俺が出したりできるのか?」

「ああ……出せる。もちろん金はかかるが」


 俺はさっそく採集クエスト依頼を出しておく。

 報酬額などは、ギルドの受付担当者と相談して決めた。


 一般的な薬草の採集依頼よりは安くするよう勧められた。


 本当にこんなに安くて集まるのか不安になったのだが、スカウトが

「最近暇だし。実家に帰るついでに採集してくるよ」

 そんなことを言ってくれた。


「ありがたい。根もついていたら少し色を付けさせてもらう」

「それは願ったり叶ったりだ。沢山持ってくるから、報酬の準備を頼む」


 そんな冗談を言いつつ、スカウトたちのパーティーは採集するために出発した。

 本当に暇だったらしい。


 それから俺は、ギルバートに魔物の生息域についても尋ねる。

 それに関してもギルバートは地図を持ってきて詳しく教えてくれた。


 地図を見る限り、千年前から地形はあまり変わっていないようだった。

 もちろん街の位置や規模は変わっている。それに川の流れも多少違うようだ。

 だが、山や湖、巨大な森には大きな差はなさそうだ。


 そして、魔物の生息域も、千年前と大差はないらしい。


「とはいえだ。南方を魔王軍に抑えられてから、徐々に分布図は変わっている」


 それは人の大移動に加えて、魔王軍の乱獲のせいだという。


「その魔王軍ってやつについて聞きたいのだが……」


 俺は話の流れに合わせて、本題に入ることにした。


 俺が魔王について切り出すと、ギルバートは深刻な表情になった。


「魔王軍か。まあ俺も大したことは知らないんだがな」

「魔王ってのが復活するってのは?」

「魔王軍の奴らはそう信じているという話だな」


 それからギルバートは機密に触れない程度に魔王軍について教えてくれた。

 どうやら、今はいくつもの精鋭冒険者パーティーは魔王軍対策で動いているらしい。

 国が依頼人の最高機密のクエストとのことだ。


「具体的に何をやっているのかは、ギルマスの俺も知らん」


 ギルバートは遠い目をする。


「どうにか無事に帰ってきて欲しいもんだ」

「そうだな」

「いざとなったらルードも頼む。精鋭がいないってことは……」

「王都近辺の防衛に不安が残るな」

「ああ。今のところ問題は特におこってないがな」


 王都近辺の対策。精鋭冒険者の安否。

 ギルドマスターとしては心配がつきないことだろう。


「俺も力になれることがあれば協力しよう。なにか魔王に関する情報が入れば教えてくれ」

「わかった。心にとめておこう」


 情報収集を終えたので、ギルバートにお礼を言ってからクエスト掲示板を見に行く。

 緊急性の高いクエストは出ていなさそうだった。 


 そこで俺は換金率の高そうな魔物討伐クエを引き受けることにした。


 薬草採集クエ依頼を出したので、そのためのお金を稼いでおきたいのだ。

 ヨハネス商会で剣の製造に従事すればお金は貰えるだろうが、売れるまではしばらくかかる。


 薬草採集クエ以外にも、街で掘り出し物が見つかるかもしれない。

 そのとき即金で払うために、自分である程度はお金を持っておきたい。


 とはいえ、Fランクで受注できるクエストは報酬も少ない。

 だから沢山引き受けようとしたのだが、受付担当者が渋い顔をする。


「ありがたいのですが……」

「なにか問題があるのか?」

「はい。Fランクで失敗を重ねるとギルド資格の喪失になりかねません」


 最低ランクであるFのクエストをクリアできない。

 それは、つまり冒険者に向いていないということ。

 向いていないのに冒険者を続ければ、命を落とすことになる。

 だから資格喪失処分となるのだ。

 ちなみにE以上ならばランクダウンとなるそうだ。


「わかった。一つにしておこう」

「それがよろしいかと」


 俺は適当にゴブリン退治クエを引き受けた。


「ゴブリン退治も普通はソロのFランク冒険者にはおすすめしないのですが……」


 そう言いながらも受付担当者は受諾を認めてくれた。

 昨日無詠唱魔法を見せたおかげに違いない。

 報酬額は少ないが、道中で賞金首魔物などを狩ったりすればいいだろう。


 受諾を済ませると、俺はギルドで地図を購入する。

 そして、すぐにゴブリン被害の出た場所に向かって出発した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます