第15話 剣も強化しよう

 ヨナが目を輝かせて言う。


「ルードさん、魔法の鞄をたくさん作る事って可能でしょうか?」

「可能だが……おすすめはしない」

「それは、なぜでしょうか?」

「商売の仕方以上に戦争の仕方が変わる」

「あっ」


 魔法の鞄が大量にあれば、兵站の概念が変わる。

 大軍を動員することが、今よりもはるかに容易になる。

 そうなれば戦争の拡大と長期化が進むことになりかねない


「確かにそうかもしれません。大量販売はやめておいた方がいいかもですね」


 ヨナは真剣な表情だ。

 やはり、ヨナは金儲けよりもみんなのことを考えられる素晴らしい商人だ。


「ヨナが自分で使う分を一つか二つなら、いつでも作ろう」

「いいのですか?」

「ああ。もちろんだ。世話になっているしな。トマソンにも一つ作ろうか?」

「それは助かる」


 そして俺は剣と短剣の強化に入る。

 まずは魔法の鞄から剣を取り出す。


「街で買ったオリハルコンの剣と短剣だ」

「随分と高いのを買ったんだな」


 トマソンはそう言うが、千年前の基準では捨て値に近いぐらい安かった。


 現代ではオリハルコンを錬金術で強化する技術が失われている。

 だから、武器としては鋼鉄の剣より多少錆にくいだけの剣なのだ。

 ただし、銀の色味などが美しく、貴族や近衛騎士などに好まれているようだ。


 千年前より安いのは、千年前より利用価値が低くなったからだ。

 採掘コストは変わらないし希少なのも同じ。


 オリハルコンもミスリルも大量に買いこむことは難しい。

 いや、千年前と比べて需要が少なくなったから安いだけなのだ。

 俺が買い込めば、すぐに高騰するだろう。


「オリハルコンは錬金術があれば、性能を飛躍的に向上できるんだ」

「ほう?」


 俺はまず、オリハルコンの剣の切れ味を上げる。

 これで竜の鱗だろうと、容易く斬り裂けるだろう。


 次に軽くする。

 長い冒険になるほど、重さは馬鹿にできないものだ。

 耐久性も大切だ。切れ味が落ちないよう、そして錆びないように変化させる。


「そして、次が最も大切な加工だ」


 オリハルコンの剣を、硬くすると同時に折れにくくする。

 これで硬い岩や鋼鉄の鎧をたくさん斬っても刃こぼれ一つするまい。


「最後の仕上げは錬金術じゃないんだが……」


 俺は剣に魔法を付与する。

 切れ味も耐久性も向上しないが、これによりレイスなどを斬れるようになる。


「これで完成だ」

「ちょっと、触らせてもらってもいいか?」

「ああ」


 トマソンは俺の剣を眺めたり振ったりする。

 一方、俺は短剣にも同様の加工を施していった。


「……素晴らしい剣だな」

「トマソンにも一振り作ろうか?」

「いや、それは流石に悪い」

「さっき俺の依頼で愛剣折ってしまっただろう? 弁償を兼ねて作らせてくれ」

「それは気にしなくてもいいのだが……」

「俺は気にする」


 そう言って俺は魔法の鞄から予備のために買った剣を取り出した。

 先ほど折れたトマソンの剣より多少長い。


「先ほど折れた剣の長さが扱いやすいんだよな?」

「まあ、そうだが、本当に気を使ってくれなくても」

「遠慮するな」


 俺は錬金術でまず剣の長さを変える。形状変化という奴だ。

 そして次に軽くした。


「トマソン、振ってみてくれ」

「ルードさん、本当にありがとう」

「お礼は完成してからにしてくれ」


 トマソンは何度か剣を振る。


「重心や重さはどうだ?」

「重さはちょうどいいが……。重心はもう少し剣先の方が振りやすいやすいな」

「わかった」


 トマソンと調整しあいながら、ちょうどいい長さ、重さ、重心などを整えていく。


 それが済めば後は俺の剣と同じ加工だ。

 鋭くし、硬く折れにくくし、錆びないようにして、魔法を付与し霊を斬れるようにする。


「よし。完成だ。トマソン、振ってみてくれ」


 トマソンは剣を何度か振ってから眺めた。

 そしてしみじみという。


「本当に素晴らしい剣だ。元の剣より手になじむ」

「それなら良かった」

「ルードさん、本当にありがとう」

「礼には及ばないさ」


 そう言ったのだが、トマソンから何度もお礼を言われた。

 ヨナも剣に興味を持ったようだ。


「トマソンさん、私にも見せてください」

「ああ」

「……これは素晴らしい剣ですね。さすがはルードさんです」

「オリハルコンやミスリルは希少すぎるが、鋼鉄の剣や鎧でも似たことは出来る」

「そうなのですか?」


 もちろん、俺が強化したオリハルコン製の剣よりも性能は落ちる。

 だが、俺が強化すれば鋼鉄の剣でも、かなり高性能の剣になる。

 市場に流通しているオリハルコンの剣よりも、はるかに上等な剣にできるだろう。


 鋼鉄ならば、素材も希少ではないし、材料費も安い。

 商売として成り立つに違いない。


「それは凄くありがたいですが……いいのですか?」

「ああ、暇なときに適当に作っておこう。卸値は材料費分もらえればそれでいい」


 錬金術の宣伝も兼ねているので、儲けは出なくてもいいのだ。


「いえ、そう言うわけには行きません。ちなみに材料費はおいくらぐらいですか?」

「……えっとだな」


 それからヨナと商談した。

 ヨナが商品として求める剣や鎧がどのようなものか、それを作るにはいくらかかるか。

 そのようなことを話し合っていく。


 それが一通り終わった後、ヨナが言う。


「護衛のみなさんの武器と鎧も強化していただけませんか? 費用はこちらが持ちます」

「それはもちろんかまわない」

「ヨナの旦那。いいのかい?」

「もちろんです。護衛の方々が倒れれば私も危険にさらされますから」


 そしてヨナはにこりと笑う。


「それに宣伝になりますし。今後のことを考えたら微々たる出費です」


 その後、トマソンが護衛仲間を呼びに行った。

 みんな武器と防具を持って集まってくれた。


 俺は早速、みんなの武器と防具に錬金術で強化を施すことにした。

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