錬金術は魔法より圧倒的に強い~転生した最強の錬金術師は、劣等とされる錬金術で無双する~

えぞぎんぎつね

第1話 最強の錬金術師vs魔王

「さっさと終わらせてもらおう。こっちは老い先短いんだ」


 俺は魔王に向けて宣言する。


 長かった魔王討伐の旅。

 四天王を倒し、やっとのことで魔王との一騎打ちに持ち込んだのだ。


 魔王は体長十メトルを超える巨大な竜だ。

 力強い四肢に大きな二枚の羽。深紅に輝く鱗に覆われている。


「たかが老いぼれ薬師風情が! 調子に乗るな!」


 巨体を振るわせて魔王が咆哮した。


「薬師ではない。錬金術師だ」


 ◇◇


 史上最強の魔王が人族に向けて宣戦布告したのは半年前。

 そこで最強の錬金術師、賢者の称号をもつ俺、ルードヴィヒに魔王討伐の勅命が下された。


「我は知っておる。お主ら錬金術師は最強だ。だが素材がなければ何もできぬのだろう!」

「そうだな。だが、常に俺たちは素材に囲まれているだろう?」

「はぁ?」


 錬金術とは、究極的に言えば物質転換の術理である。

 真空状態でもなければ、そこに何かはあるのだ。

 その何かを転換させれば何とでもなる。


 俺は魔力を操り、空気中の水分を氷の槍へと変化させた。


「そのような小細工! 我に通用するものか!」


 俺の繰り出した氷の槍は、並みのドラゴンなら一撃で倒せる攻撃だった。

 だが、魔王には全く通じない。


「さすが魔王」


 魔王は鱗で氷の槍を弾くと、同時に強力な火炎ブレスを一気に吐く。

 それを俺は錬金術で空気中のちりを使って壁を作って防いだ。

 そして、魔王の立っている岩の床を槍と変化させた。


「我を舐めるな!」


 魔王は羽を震わせ両足をわずかに浮かせると、尻尾で岩の槍を薙ぎ払った。


「それは失礼。流石に魔王には小手先の術は通用しないか」


 今まで見せたのは形態変化。

 まだ錬金術の初歩の初歩。魔導師にもできる範囲のことしかやっていない。


「出し惜しみをして、すまなかった。ここからが真の錬金術だ」


 俺は懐から賢者の石を取り出した。

 そして極めて少量の空気中の原子をエネルギーへと転換する。

 極小の質量からでも、凄まじいエネルギーを取り出せるのだ。


 その巨大なエネルギーを魔王に対する指向性の爆発とする。


「GRRRRRRRRRRR!」


 一撃で魔王の鱗を砕き肉を深くえぐる。

 いくら強大なる魔王でも致命傷だ。


 だが、跡形もなく消し飛ばすつもりの一撃だったのに、魔王にはまだ息があった。


「魔王。お前本当にすごいな」


 いくら敵とはいえ、苦痛を長引かせるのはかわいそうだ。

 俺がとどめを刺そうと、再度錬金術の術理を用いようとしたとき、


「……人族の錬金術師が賢者の石の錬成に成功したというのは、まことだったようだな」


 魔王が俺のすぐ横。空中に浮かぶ賢者の石を見てそうつぶやいた。


 賢者の石とは錬金術の究極の到達点。

 賢者の石を手にしたものは、自在に黄金を手に入れることができると言われている。

 だが、賢者の石の正体は、ただの触媒に過ぎない。

 素人が持ってもどうにもならない。熟練の錬金術師が使ってはじめてその真価を発揮する。


 賢者の石を用いれば、物質の転換に必要な膨大な魔力を大幅に軽減することができるのだ。


「GRRRRR……。貴様とやりあうのは分が悪そうだ。……――……」」


 魔王は、とても小さな声で呪文を紡ぎ始めた。

 恐らく神代語だとは思うが、よく聞き取れない。


 声がとても小さいだけでなく、アクセントや発音が人族の魔導師の神代語とは違うからだ。

 恐らく人族の発音より、魔王の発音の方が正しいのだろう。


 とはいえ、この状況だ。何のための呪文かは推測できる。

 魔王は逃亡するつもりだろう。


「逃がすわけないだろう!」

「……――…………――」


 俺は呪文を紡ぎ続ける魔王に、賢者の石を使った錬金術でとどめを刺そうとした。


 だが、その瞬間、魔王の眼がカッと開かれる。

 同時に賢者の石が、俺の意思に反して怪しく輝く。


「まさか、賢者の石を!」


 魔王は、俺が賢者の石を使おうとした瞬間を狙っていたのだ。


 俺の支配下にある賢者の石を、まさか勝手に横から使えるものがいるとは思わなかった。


「…………――――、…………――」


 魔王がにやりと笑い、術が発動しかける。


「させるか!」


 俺は賢者の石の支配権を取り戻そうとする。


 だが、その直後、魔法が発動する。

 強烈な光で視界が真っ白となり、平衡感覚がぐにゃりぐにゃりとゆがむ。

 そして、直後に俺は気を失った。



 ◇◇◇



「……ここはどこだ?」


 俺が目を覚ますと、周囲の風景は一変していた。

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