第12話 お店で装備を買おう

「ギルドマスターだとは思わなかった」

「おせっかい焼きの古株冒険者だとでも思っていたか?」

「否定はしない」

「がはは! それも間違っちゃいない」


 俺は会話しながら、賞金のかけられた魔熊の戦利品を出していく。


「いい毛皮だ。魔石も立派なもんだ。牙も爪もさすがにでかいな」

「大きな熊だったからな」

「素材の買取もしているが、どうする?」

「牙と爪、肝以外は売る予定だ」

「わかった。すぐに査定させてもらおう。ところで……肝なんてどうするんだ?」

「薬を作るのに使う」

「魔導師なだけでなく、薬師なのか?」

「まあ、そんなところだ。薬師ギルドには所属していないが、魔法を使って薬を作るんだ」

「ほう。聞いたことがないが、そう言うものもあるのだな」


 錬金術と言わない方がいいと思ってそうごまかしておく。

 少し待つだけで査定は終わる。

 すぐに査定を担当した職員がやってきてくれた。


「ルードさん、魔熊の毛皮と魔石。合わせて百万ゴルドになります」

「おお、結構な額になるな」

「賞金が五百万ゴルドなので合わせて六百万ゴルドです」

「それは助かる。色々買いそろえたいものもあるからな」


 それから準備のできた冒険者ギルドカードを受け取った。

 それに魔導具を通して自分を登録する。


「これによって討伐した魔物などは自動的に記録されます」

「それは便利だな」


 それだけでなく、クエスト受注や達成報告するたびにカードに記録してくれるとのことだ。


 千年前にはなかった技術だ。

 技術は全体的に衰退して入るが、すべてが衰退しているわけではないらしい。


「偽造も不可能ですし、本人以外が持つと色が変わります」


 冒険者のランクはF。職業は魔導師だ。


「魔熊討伐の功績を加味すればE、いやDからスタートすることは出来るのですが……」

「問題が?」

「はい。審査に時間がかかるので……」


 元々ギルド員だった場合は、審査中も元々のギルドカードが使える。

 だが、俺は元々ギルド員ではなかったので、審査が終わるまで発行されないとのことだ。


「それでは不便だと思いましたので……。余計なことだったでしょうか」

「いや、配慮はありがたい。とても助かる」


 俺がそう言うと、受付担当者は笑顔になった。


「ルードさんは字は読めますよね?」

「ルードさんは魔導師だぞ! 読めないわけないだろ」


 冒険者の一人が、受付担当者に笑いながら言う。


「私もそう思いますが、一応聞くのが決まりですから」

「ああ、読める」

「それは良かった。冒険者ギルドの細かい決まりはこの手引きに書いていますので」


 そういって受付担当者は、手のひらより少し大きいサイズの本をくれた。

 白くて薄い綺麗な紙で作られた二百ページほどの本だ。


「もらっていいのか?」

「はい。もちろんです。新人さんにお配りしている物ですから」


 どうやら、紙の製造技術と価格、印刷技術は千年前からだいぶ進歩しているようだ。

 千年前はこんなに薄い綺麗な紙はものすごく高価だった。


 俺が手引きをパラパラとめくって眺めていると、受付担当者は真面目な顔で言う。


「大切なことが書いてあるのでちゃんと読んでくださいね」


 少し大変だ。ひまなときに少しずつ読むしかあるまい。


 俺はそう考えたのだが、

「そんなもん誰も読んでねーよ」

「ちげーねえ」

 先輩冒険者たちがそんなことを言ってガハハと笑っていた。


 ギルドマスターのギルバートまで一緒になって笑っていた。

 必要な時に参照すればいいだけかもしれない。



 それから俺はギルドにいた冒険者たちからおすすめの店を聞いてから外に出る。

 まずは服を買いたい。それに各種装備も欲しい。


 俺は王都の店を回って、まともな服や靴、剣などを買っていく。

 丈夫で軽い鞄も手に入れておく。

 収納魔法と同じことができる道具である「魔法の鞄」を作るためだ。


 今は収納魔法を使っているが、収納魔法を使っている間、常に魔力を使ってしまう。

 俺の持っている魔力と比べれば微々たる量だ。

 だが、ギリギリの戦いになったとき、その微々たる量が致命傷になりかねない。


 そして、金属類も買えるものは買っておく。金属類は採掘するのが大変なのだ。



 買い物を済ませると、俺はヨハネス商会へと向かった。

 ぜひ泊まってくれと言ってくれていたのでお言葉に甘えることにしたのだ。


 ヨハネス商会に行って名乗ると、

「商会長からお聞きしております。どうぞこちらへ」

 メイドさんが、対応してくれて中へと通してもらえた。


 話しを聞いてみると、ヨナは忙しく働いているのだそうだ。

 今日運んだ物資を使って色々しているのだろう。


「この部屋をご自由にお使いください」


 それは大体五メトル四方の部屋だった。

 一人で過ごす分には充分に広い。

 ベッドやクローゼット、少し広めのテーブルなどもある。

 快適この上ない。


「商会長は自分の家のように寛いでほしいと」

「ありがとうございます」


 その時後ろから声をかけられた。


「お、ルードさん。やっと来たのかい。待っていたんだ」

「トマソンか。ヨナについてなくていいのか?」

「俺は街の外の護衛専門だよ」


 街の中の護衛は、礼儀作法などを学んでいる素手でも戦える者たちだそうだ。

 トマソンたちは過酷な護衛任務をクリアしたので、三日間の休暇をもらったのだという。


「怪我人も出たしな。みんなでゆっくりしているところさ」

「怪我人の経過はどうだ?」

「ルードさんのおかげで、ぴんぴんしているよ。そうだ、ついてきてくれ」


 トマソンはメイドに後は俺が案内するとか言って歩き出す。


「ここが俺の部屋だ。中はルードさんの部屋と一緒だよ」

「そうなのか。俺の部屋から近いんだな」


 十メトル程度しか離れていない。

 どうやら、護衛たちのための部屋の一つを使わせてくれるということらしい。


 トマソンは自分の部屋の前を素通りしてさらに進む。

 そして大きめの部屋へと来た。


「ここは談話室だ」

「ほう」


 談話室では護衛たちがゆっくり寛いでいた。


「俺たちは暇なときはここで寛いでいることが多いんだ。ルードも遠慮せず使うといい」

「ああ、そうさせてもらおう」


 寛いでいた護衛の一人が立ち上がってやってくる。


「ルードさん!」

「どうした?」

「治療してくださって、ありがとうございます!」


 それは大怪我して死にかけた護衛のうちの一人だった。


「経過はどうだ? 少し診せてくれ」


 一言断ってから、俺は魔法を使って、魔力の流れなどを調べていく。


 俺の診断を見ながらトマソンが言った。

「錬金術の診断ってやつか?」

「錬金術師の基本技能ではあるが、これ自体は魔法なんだ」

「そうなのか? 意外だな」


 基本的に物質を変えるのが錬金術だ。

 変える必要のない成分測定や診断などは魔法を使う。

 だから優れた錬金術師は、同時に優れた魔導師でもあるのだ。


「よし。何の問題もない。健康そのものだ」

「ありがとうございます!」

「ほかの二人はどうだ?」

「一人は近くに遊びに行ってます。もう一人は奥さんのところです。そろそろ生まれるとか」


 そういえば、重症だった一人は子供が生まれるとか言っていた。

 それならば妻のところに行くのが当然だ。


 それにもう一人も遊びに行っているということは、元気と言うことだろう。


「それはなによりだ。何かあったら遠慮なく言ってくれ」

「はい!」

「ルードさん、今から俺たちも飲みに行かないか?」

「大変魅力的な提案なのだが……、やりたいことがあるんだ。装備を整えたい」


 何があるかわからない。

 とりあえず俺は錬金術で装備を整えることを優先することにした。

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