アーシェとデート!?編⑦(時間余ったのでアーシェが行きたい場所に行ったら、まさかのコスプレ店でした。中編)byアーシェ視点

 十分前――アーシェ視点。


「ひょわっ!? こ、これはッ! 有名カードゲームの『Z○○』の主人公、あ○みちゃんのコスプレ衣装があるじゃないかッ!? あの小〇唯さんがやっているめっちゃかわぇぇボイスキャラのあ〇みちゃんの衣装がここに置いているなんて……この店って東京レベルじゃん! それと『寄〇学校』の白〇専用の制服コスプレ衣装もある!? 『アサ〇ン○○○○イド』のヒロイン、メ〇ダのコスプレ衣装も!」


 キャッキャッ……と、アニメキャラのコスプレ衣装が沢山ある事にはしゃいでいた。ここは天国かッ!? 普通、こんな田舎にあるようなコスプレ店なんてラブ〇イブやFa〇eシリーズ、刀○○舞の衣装など有名アニメしか置いていないってSNSで書いてあったけど、嘘みたいに人気のあるアニメキャラのコスプレ衣装が置いてあるじゃん! まぁ、サイズのまばらがあるけど……置いている方が凄い方か。


「いやいやいや……本当にすげーぞ! 田舎なのに都会みたいな量――ちょっと試着してみようかなぁ……?」


 白〇専用の制服かなぁ~~? それともメ〇ダのコスプレかなぁ? それか、リ〇ロのエ○○アのコスプレかなぁ? ううん……悩むなぁ~~?


「見つけました、隊長! いい人材です!」


「なにぃっ! どこだっ――いたっ!」


 誰かを探しているのかな……と思って聞き流していたら、ドドド……ッと地鳴りがこちらに近づいてきた。


「銀髪のキミッ! ちょっといいかね!?」


 がっしりと見知らぬ誰かが私の肩を掴んできた。その誰かとは、少し茶髪のような女性だった。


「え……わ、私ですか?」


「えぇ……ちょっとお願いなんだけど、コスプレ撮影会のモデルをやってくれないかな!?」


「――え? コスプレ撮影会って何ですか?」


 そんなイベントってあったっけ? 


「えっとね――今日、ここでこの店主催のコスプレ撮影会があるのよ。それでね、私たちの代表のモデルさんが急に風邪ひいちゃって欠席しちゃったのよ! それで代役を探していた訳だけど――」


「はぁ……事情は分かりましたけど、私なんかで大丈夫でしょうか――」


「大丈夫だって、ただステージの上を歩いていくだけだからさ。そうと決まれば、さっそく衣装に着替えましょ!」


「えっ、ちょっ!? 私まだオッケーって言っていないんですけどぉぉぉっ!」


 見知らぬ女性にがっしりと腕を掴まれて、そのまま店の外に連れていかれました。


(オッケーしていないのに、私の腕を引っ張るのをやめてええぇぇぇぇッ!!)


 一体何処に連れて行かれるのやら……と思った矢先、店の近くにある特設ステージの舞台裏の方にある楽屋へ入った。


「ひょぇ!?」


 ぼすん……とパイプ椅子に座った私は、キョロキョロと楽屋の様子を眺めた。


(こ、コスプレイヤーさんがい、いっぱいッ!? あわわわわっ……、引きこもりの私にとっては眩しい光景だぁぁぁっ!!)


 目の前にきゃはははっ、と女子トークを繰り広げる女子コスプレイヤーさんが太陽に見えた。その姿に私は彼女達から視線を反らした。ま、眩しくて見ていられません! こんな変態オタ女子の私と一緒にいるなんて……。光栄ですけど、やっぱりダメです!


「し、失礼しましたぁぁ――あと、ありがとうございますぅぅぅっ!!」とこの光景を見られた事に感謝の気持ちを込めながら楽屋から飛び出した。


「おっと……逃がしはしないよ、お嬢ちゃん――」


 ヤクザみたいな声を発した女性に、グイっと肩を引っ張られた。


「うひぃぃっ!?」


 短い悲鳴と同時に体を引っ張られて、鏡台の前に座った。


「ほ、本当に私がッ!? いやいや、もっといい人材が居たでしょッ!?」


「いや――寧ろ、君じゃないと出来ないんだよ! この銀髪のロングヘアと丸い顔立ち、そして男を虜にさせてしまいそうな悪魔のブルーサファイアの瞳……まぁ、瞳はちょっと色違いで残念だけど――」


 トレードマークとも言える、このブルーサファイアの瞳に対して軽くディスられました。


「うへへへ――ッ! さーって、どうやって仕上げようかなぁ~~」


「ちょ……誰か助けてください!」


 近くに居た女性に助けを乞う。


「ごめんね。この人、コスプレ衣装とメイクに関わるとバーサーカーになっちゃうから……」


「ふえっ!? ば、バーサーカー!?」


「うぇへへへっへへっへ……覚悟してねぇ――」


「い、い、い、い、嫌あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」


 私の悲鳴とともに、見知らぬ人による恐ろしいメイクタイムに突入したのであった――



 ――数十分後。


「あぁ……できらぁっ! リゼ〇のエ○○アたんがっ!」


 そう言ったのと同時に、私は恐る恐る目を開けた。


「――――ふわぁぁぁ……? これが、私?」


 鏡に映る今の自分を眺めた瞬間、私は思わず美しすぎて惚けてしまった。

 元から白い肌だけど、化粧によって更にきめ細やかな白い肌に仕上がっていて、少しぼさぼさの髪も滑らかになっていた。私のトレードマークともいえるアホ毛も、綺麗に梳かされちゃったけど。


「さーて、あとは瞳色を紫になるカラーコンタクトを入れるだけだな」


「え? からーこんたくと? なんですか?」


「カラコン知らないの!?」


 驚いた表情で私の方を見つめるメイクの人(名前知らないので勝手に付けた)。


「カラコンっていうのは目に入れるものなんだけど――う~~ん……セリフから察するにコンタクトレンズの経験ってないだろうな……」


「え、えぇ……まあ、はい」


「――うう……どうすっかなぁ~~目をケアする時間あるか?」


 メイクの人は腕時計の方を一瞥する。


「時間ねぇか――すまん、ちょっと押さえてくれないか」


「はいはい……わかった」


 メイクの人と知り合いの女性は、私の前にしゃがんで腕をギュッと抑えた。


「え、ちょ……なんでぇぇぇッ!?」


「ごめん、ちょっと目にコンタクト入れるからな。合わなかったら、すぐにレンズ取るから」


「え、え、え!? ちょ――やめ――」


 メイクの人は軽くアルコール除菌シートで手を拭き、びりっとコンタクトレンズが入った容器の蓋を剥した。


「いれるからな――ちょっと痛いけど我慢してね」


 メイクの人は私の瞼を開いて、コンタクトレンズを私の目に装着した。


「うわっ……な、なに――怖い怖い――いたいいたい……!?」


 なにこれ……目に入れたらめっちゃ涙が出てくる。それに痛いッ! コンタクトレンズってこんなに痛いものなのっ!? 


 異物を吐き出すように目を閉じると、目蓋に溜まっていた涙が溢れ出た。


「大丈夫? 痛い?」


 メイクの人が心配そうな声で私に質問した。


「い、痛いです!」と答える。早くこの目に異物が入ったような痛みから解放したい。耐え切れないもん、このムズムズしたような感じ……。


「うーん……コンタクトの相性合わないんじゃない?」


「んな訳ないだろ! 合わないのは最初だけだ。とりあえず、五分だけ様子みよう!」


 なんてメイクの人は知り合いの提案をそっちのけた。


「勘弁してぇぇぇッ!!」と、大量の涙を流しながら、まだ地獄が続くことに泣き叫んだ。



 ――コンタクトを装着して、五分後。


「そろそろレンズが目に馴染んできたんじゃない?」


 メイクの人はそう言うと、私は閉じていた瞼をゆっくり開いた。


「あれ……なんか違和感が――」


 先ほどまでごろごろしていたのに、いつの間にかそんな感覚が消えてしまっていた。


「ほら~~やっぱり馴染んでいなかっただけだよ!」


「あぁ……そうだねぇ……それよりも、メイクやり直した方がいいんじゃない? 涙でぐちゃぐちゃになっているわよ」


「あっ……順序逆だったなぁ~~。ねえ、悪いけど顔軽く洗ってきて」


 メイクの人は、私にメイククレンジングが入った容器を手渡した。


「あ、はい……」


「洗面所は楽屋で右側にあるからね」


 言われるがままに、私はメイクを落としに洗面所に向かった。

 あれ……なんで私、反論せずにそのまま流されてメイクやカラコンを付けたりしたんだろう? まあ、いっか。一回でもいいからコスプレイヤーさんになりたかったし。とりあえず、コスプレを楽しもうじゃない!

 じゃばじゃばと洗面台で顔を洗い落として、楽屋に戻った。


「よーし、化粧直し始めるぞ~~」


 椅子に座ると同時にメイクの人が、スパパパッとまるで魔法を使っているかのように素早く綺麗なメイクを整える。


「よし――完成っと。それじゃ、衣装の方を着てもらおうかな?」


 メイクの人の友達が、リ〇ロのエ○○アのコスプレ衣装を持ってきた。原作イラストやアニメで見かける通常衣装――結構細かく作り込まれていた。


「うへぇ~~すっごく細かく作り込まれているぅぅ~~」


 思わず驚いてしまった。だって、コスプレ衣装ってこんな細かく再現するのって難しいんじゃなかったっけ? このレベルの衣装を作れるのは職人さんしかいないってネットの記事に書かれていた様な……。


「これね、私が作ったのよ」


 メイクの人の友達がそう告白した。


「う、うええええええええええええええッ!? つ、作ったんですかッ!? こ、この職人技みたいに細かく――えええッ!?」


「ま、まあ――うん。昔からこういうの得意方なの」


「す、すごいです! わぁぁぁぁ……すっごい感激しちゃうううっ!!」


「そ、そんな大げさに感激する事じゃないよ……。ま、まあ……嬉しいけど」


「はいはい、とりあえず着替えて。開幕まで時間ないんだから」


 メイクの人がため息交じりに言う。「はーい」と返事をしてちゃちゃっとエ○○アの衣装に着替えた。


「いや~~しっかし、本当にエ○○アに似ているよなぁ~~君。まるで異世界からやってきたような雰囲気を漂わせているよねぇ~~」


「あははっ……よく言われます」


 苦笑いしながら答える。言っている事、マジなんだけどね……私って異世界からやってきた女神様だもん! ――と言いたいけど黙っていよう。なんか本当に信じちゃいそうだし、言った後の事後処理がめんどくさそうだしね。


「これで髪をエ○○ア風に結って――はい、完成!」


「おおっ、本当にエ○○アたんじゃん! めっちゃ似ているやん! 鏡見てみ、鏡」


 言われた通りに、私は目の前にある鏡で今の自分の姿を眺めた。


「――――わぁ……これって本当に私――なの?」


 鏡に映った私はまるで私じゃなかった。化粧のおかげで少し丸っぽい顔つきになり、滑らかな艶が銀髪を美しく輝き、瞳もカラコンで別人かと思えてしまった。


「すいませ~~ん! 飛び入り参加の方のレェチェルさんいますか!?」


 スタッフの人がそう言うと、メイクの人がスタッフの方へ向かって行った。


「レェチェルさんですか?」


「いいえ、私は彼女の代理です。すいません、彼女は今日風邪でいなくて――」


「そうですか!? では今日のステージは……」


「いえいえ、大丈夫です! 今日、彼女の代理が居ますので――」


 メイクの人は私の方へスタッフを誘導する。


「えーこの子が、彼女の代理の――えっと名前は……」


 焦った様子でメイクの人は、私の顔を見つめた。そう言えば、慌ただしく準備していたからまだメイクの人達に私の名前言っていなかったなぁ……。


「あ、アーシェ・葵・アーガリアです。今日は宜しくお願いします……」


 あ……ヤバッ、つい勢いで夏奈実くんの苗字入れちゃった……。はうぅぅ! これって結婚したって捉えちゃうかなぁぁぁ……? 

 なんて、私は思わず頬を真っ赤に染めた。


「えっと……アーシェさん。ご手数ですが、参加署名をお願いしてもよろしいでしょうか?」


「署名――ですか?」


「えぇ、参加者には全員必須で署名しているんです。えっと……すいません、その署名の紙持ってくるので待ってください!」


「は、はぁ……」と頷いたのと同時にスタッフはいったん楽屋を飛び出した。


 数分後、バインダーで挟んだ署名用紙を持ってきたスタッフは私に手渡す。


「まあ、イベントの注意事項などを読んでいただき、署名をお願いしますね」


 ざーっとイベントの注意事項を眺めた後、私のフルネームを署名欄に書いた。


「ありがとうございます! これから飛び入り参加のステージが始まりますので、準備をお願いします」


「わ、分かりました……」


 うわぁぁ……緊張してきた。いよいよ私のコスプレイヤーデビュー(?)……ヤバいヤバい……心臓の鼓動がとまらなぁぁぁいい!!


『さーて、ここからは飛び入り参加の皆さんが登場します。では登壇してください!!』


「ほら、君――えっと、アーシェさん。そろそろ出番だ。行ってらっしゃい!」


「いってらっしゃ~~い」


 メイクの人に背中をバンッと強く押され、私はステージの方へ向かった。


「おっとぉぉぉぉぉッ、これはコスプレに新しい風が吹いたのかぁぁぁぁッ!! エントリーナンバー一番、アーシェ・葵・アーガリアさんでーす!!」

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