アーシェと沙耶のプール遊び!⑩【R15】(アーシェの恋人)→ムフフな展開やぁ! これはたまらんわ! BY夏奈実

「ふぅ……スッキリしたぁー」


 トイレから出て、アーシェが居る医務室へ戻ると、ふてくされた表情をしたアーシェがベッドの上に座っていた。

 まるで人形のように、しょぼんとした表情で座っている。……気まずい空気だ。


「……アーシェ。さっき言い忘れていたんだけど、体の方は大丈夫か?」


 とりあえず気まずい空気から解放させようと、体調について話を切り出した。


「まぁ……今のところは」


「そう、良かった……」


 とりあえず、見た所異常もないし、大丈夫だろう。


「「―――――――」」


 再び沈黙……アーシェの奴、いつもなら「あーめんどー、はよ帰りてーよ……」って愚痴ってそう。めっちゃ大人しくて不気味に感じてしまうのは俺だけか?


「……アーシェ、何でだんまりしているんだ? それとも、さっきの件で怒っているのか?」


 気まずい空気を打開する為、単刀直入にアーシェに問いかけた。


「――バカ」


 最初に放った言葉は、侮蔑(ぶべつ)したやつだった。まあ、俺はそこまで堪忍袋の緒が切れる人間じゃない。


「な、なんだよ……」


「鈍感……そんなに私の事、信用していないの?」


 信用していない――確かにその通りだ。勇者なってくれの一点張りで、全然話を聞いてくれないし、挙句の果てに強制召喚と来たら、信頼性なんて微塵もない。


 だから「あぁ……そうだ」と、素直に答えた。


「――じゃあ、どうしたら私を信じられる?」


 ……難しい質問が来た。信じる方法なんて、そりゃ勇者になるまで待つのをやめてほしい事が理想なんだけど、絶対彼女は嫌だって即答するだろうな。


「それは……だな……」


 クソ……どう答えればいい? 彼女を信じる事なんて、俺には微塵もないのか?

 考えるにも、考えるにも、結果は全部「嫌だ」の一点張りの未来しか想像できない。


「……無いんですね」


 凍ったような寂しい口調で、アーシェは言った。こうなったら――


「――いいや、一つだけならある」


 これでアーシェの心を動かせるのなら、それでいい。行き当たりばったりだけど、今はこれで行くしかない!


「今まで通りでいい――それが俺の答えだ」


 結果、単純。全て駄目なら、普通でいる事が望ましいと俺はその答えを導き出した。まあ、勇者になってくれは御免だけどな。


「――いいの? そのままで」


 あれ……すんなりと受け入れてくれた。「なにそれ?」って言われそうなやつだったんだけど……まあいいか。


「うん。だって、急にガラリと性格変わったら気味悪いじゃん」


「確かに……じゃあ、いつも通りの私なら信頼できるって事だね?」


「あぁ……」


 いい流れだ。まあ、とりあえず一件落着ってところかな?


「じゃあ、早速ゆう――」


「ならんからな!」


「いつも通りでいいんじゃないの!?」


「ばーか! 俺が勇者にならないのもいつも通りだ!」


「あーッ! もおおおおっ!! あんたのいつも通りって何ィィッ!」


 ならないと言った瞬間に出るツッコミするアーシェに、思わずクスクスと笑ってしまった。やっぱり、アーシェはこれじゃないとダメだもんな……。


 ふとアーシェはツッコミの止め、静かな表情で俺の方を見つめた。


「……夏奈実くん。さっきの話、私は本気だからね。女神としてじゃなくて……普通の女の子として、貴方の事が好きなの!」


「――俺で、本当にいいのか?」


「うん!」


「あーうん」と彼女の瞳を逸らす。なんか信じられない……俺にこんな可愛い彼女が出来るなんて。まさか、全部夢オチじゃないのかって思うんだが……?


「そんなに疑うなら、証明してあげようか?」


「証明って何?」


 どんな方法で、好きになった証明をするんだ?


「――――ん」



 ――不意にシャツの襟を引っ張って、アーシェの柔らかい唇に触れた。




「うぅ……ん――――」


 果汁グミを食べているかような甘い感触。うっかり食べてしまいそうだ。ドクンドクン……キスしていると、鼓動が早くなっていくのが分かる。


 いったん、彼女の唇を離す。不意過ぎて、息を吸うのを忘れていた。


「お前の証明方法って、エロゲみたいなやり方かよ……」


「えへへーだって、愛の証明ってキスしかないでしょ?」


「確かにそうだけど……実際にやってみると、なんか……な」


「ま、私もちょっと恥ずかしいかな? 頬だとなんか味気ないなーって思った」


「……アーシェ、もうちょっとだけいいか?」


 アーシェの唇……もう一度味わいたい。誰かに見られたら変態に見られるかもしれないけど、それでもアーシェを――


「変態……。でも、嬉しいから許す」


 アーシェの了承を得て、再び唇を重ねた。柔らかくて……甘酸っぱい匂いが漂う。もう彼女以外とキスするなんてあり得ない……そう脳が支配している。


「……ん、くぅ……ん……」


 これが、好きな人との甘いキスなのか? 心臓がドクドクと心拍上昇し、体が火照っているし、ゾクゾクと鳥肌が立ち始めていた。


「ふ……ん……ぅ……ん」


 ……アーシェの奴、くりくりとドリルのように舌を器用に動かして、俺の唇を貫通させようとしている。全く……舌突っ込むのが好きだな……こいつは。

 それじゃ……突っ込まれる前に、俺が先にリードしてやる!


「むぅぅぅっ……!?」


 俺の唇を貫通させる前に、俺は彼女の舌の裏をなぞるように進んで彼女の口に入った。


「あーふぇ……」


 お互いの唾液が舌に絡みつく。熱くて甘酸っぱい唾液……俺は十分に味わう。


「……んぅ……ん……」


 もう戻れない……彼女以外、愛せない体になってしまった。異世界は絶対に行きたくないけど、彼女と離れたくない。どくどくどくどく……体が煮え滾る。俺はアーシェに欲情する。彼女の細胞を食べつくす様に、彼女を壊す。


「な、なふぃくん……んんんんんんんんんッ……!」


 ぎゅーっ……と、俺は彼女の体を強く抱きしめる。アーシェの鼓動と温もりが布越しに伝わってくる。アーシェも俺と同じ気持ちになっているのか……。


「あーふぇ……」


「なふぃくん……」


 互いの名前を呼び合いながら、更に深く唇を重ね続けた。


「ん……ぅ……」


 じゅるる……と、アーシェと俺は互いの唾液を舌で伝い、味わう。同時に舌の裏でため込んだ唾液をアーシェに、アーシェは俺に送り込んだ。


「ん……ごくり……」


 互い息を合わせて、送り込んだ唾液を飲み込んだ。

 無味のはずの唾液が、甘酸っぱい。まるで実を熟す前のリンゴみたいな味だった。前もこんな事出来事があったような……。


「ぷは……ぁ………」


 アーシェの唇をゆっくり離した。お互いの唾液が蜘蛛の糸みたいに伸び、彼女の豊満な果実に垂れ落ちた。


「はぁ……はぁ……アーシェ」


 キスのせいで全然息していなかった。ぐらついた焦点でアーシェを見つめる。


「ねぇ……最後まで、シよ……?」


 淫乱女神め……最後までしよとか、完全にエロゲじゃねぇか! 

 アーシェはしゅるりと水着ブラを外し、豊満な果実の全体像が露わになる。何度も暑いという理由に何度も見てきた。大丈夫……そして俺は――――


「アーシェ……」


 ばんと俺はアーシェの肩を掴み、「ダメだ」と誘惑に惑わされずに自我を取り戻した。


「悪い……これ以上、進められない」


 本音は進みたい。アーシェと一つになりたい。けど……俺は止めた。これ以上進んだら、自分を取り戻せなくなりそうで怖い……。欲望に満ちた獣になってしまいそうだ。


「……そうね。これ以上はちゃんとしてからしましょう」


 ふう……とアーシェはため息をついて、水着のブラを戻した。

 あれ……この流れながら、どうしてって質問されるんだが、すんなりと俺の言葉を受け入れたのか?


「――夏奈実くん。これで信じてもらえたかな?」


 ふふっと純粋な笑顔を浮かべながら、アーシェは俺に問いかける。一見、普通に話しかけているのに濃いキスをしたせいか、キラキラと輝いて見えた。眩しくて、直視できないぐらいに……惚けてしまった。


「………あぁ」と、俺は頷いた。全てではないけど、アーシェが俺の事を好きなのは信じてもいい。これはもう本気で間違いないのだから。


「……アーシェ、好きだ」


 ぎゅっと彼女の顔を隠すように抱きしめる。また仄かな甘い香りが漂う。まだ出会って一ヶ月半過ぎで短いけど、一緒にいるうちにアーシェに恋い焦がれていたんだ。


「私も、夏奈実くんの事が好き」


 優しく包み込まれたアーシェが言った。そして俺は急に話を変えた。


「あ、話を変えるけどさ、俺はアスタリア王国で勇者にはならないからな」


「えー! なんでぇぇぇッ! 空気読んでそこは勇者になろうって言おうよー!」


「なるかバカッ! 俺は勇者自体が嫌なんだ!」


「なんでよー! そのままの流れで勇者になってくださいよー!」


「ぜーったいならんからな!」


「ムキィィッ!! こ、こうなったら――あんたが勇者になるって言うまで家に居座り続けてやるぅぅっ!!」


 ……はい? 今も居座り続けているのに何を言っているんだ?


「―――――」と、思わず唖然してしまった。だって、彼女の口からもう一回こんな事言われるなんて思ってもいなかった。


「アーシェ……お前、ホームステイの名目で居候しているくせに、なに言っているんだ?」


 俺の言葉にぎくりとアーシェの体が震えていた。まあ、同じセリフを二度言えば恥ずかしいって思うよな……。


「こ、これは……そ、その……か、勘違いするなよッ! アンタみたいな阿呆が忘れていないか、確認しただけだよッ!」


「……ははっ」


「な、なに笑っているのよ!」


「いや……何でもない。よかった、いつものアーシェだ」


「な、なによッ! い、いつもの私って!」


「女神のアーシェなら、こんな風に威張るようなキャラでなくっちゃな」


「そ、そうかなぁ……なーはははははははははははははははッ!」


 チョロインめ……と俺は内心で呟いた。正直、いつものアーシェってこんな風だったっけ? まあ、いいや。いつものアーシェって事で捉えておこう。


「――そろそろ、プールに戻って遊ぶか?」


「そうね。沙耶ちゃん達と早く遊びたい」


 アーシェが頷くと、俺達は早速プールの方に向かった。



「これって、俺が思うに不器用な恋なんじゃないかな?」なんて、プールの方へ移動中にそう思った。

 

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