アーシェとネトゲ④(パーティーに入れました!)←もう、どっかのRPGゲームの仲間集めみたいな展開だなぁ……By夏奈実

 ギルドから少し離れた所に、人気のない草原があった。私とパーティー一行はその草原に着いた。女騎士は人気のない草原に人形を置くと、私の方向に振り向いて獲物を狩るような鋭い目つきで睨んだ。


「さあ、あんたの強さを見せてもらおう!!」


 女騎士は、何と言うのか漢のオーラが熱く感じる声を張り上げて言った。

 と言うか、アンタはただ見物しているだけなのね。じゃあなんで、ギルドであんな威張った事を言うのかな?


(や、止めてくれよぉ……そんな期待した声を発するのは……。余計キンチョーしちゃうよぉぉ……)


 緊張を和らげるために、ごくりと唾液を飲み込む。二度、三度……舌で唾液を出して飲み込む行動を繰り返した。そして唾液を飲み過ぎて、誤嚥を起こして咽てしまった。


「ごほっ……ごほっ……ごほッ!!」


 咳き込んで苦しみに悶えていると、パーティーの仲間の一人が近づき、どうどうと馬を手懐けるように私の背中をさすった。


「ごほほほッ……!! はぁ、はぁ……、す、すびません……背中さすってくれて」


「あ、いえ。それよりも咳き込みの方は治まりましたか?」


「は、はい……な、何とか……」


「リラックスしてね。大丈夫、貴方なら私たちのリーダーに認められるから」


「……はい」


「じゃ、頑張ってね」


 ぽんと背中を押されるように叩いて、後ろの方へ下がった。誰か存じ上げませんが、励ましてくれてありがとうございます。少しですが、女騎士にぎゃふんと言える強さをお披露目できる勇気が少し出ました。


「頑張って……か。よしエールを貰えたし、いっちょやってやりますかッ!!」


 私は緊張を吹っ飛ばすように声を張り上げる。その声のやまびこが響く……。


「出来る……、私は出来る。さっき、HP真っ赤の中でコンティ不可能の最強モンスターを一人で倒したんだから!」


 出来る……と念じて私は攻撃魔法の呪文を唱え始める。ごくりと固唾を飲み込み、私の額に一筋の汗が流れ出る。攻撃魔法の一つである火炎弾を発動させた。最初に説明しておくが、この火炎弾は見た目しょぼいと思われがちだが、着弾すると爆裂する――中~上級クラスの魔法だ。

 この魔法を発動するには、一度外部に散らばるマナを体内にぶち込み、体内で集まったマナを放出する。

 まあ、本当なら魔法石があればいいんだけど、私は持っていない。だから、この方法でマナを集めているのだ。しかし、この方法は体力の消耗が激しくなるため、HPが少ないアバターはやらない方がいいです。仮にやってみると死にます……と攻略サイトで書かれていた。まあ、実際魔法石を使わないでマナ操作しているから慣れっこだけど。

 外気に散らばるマナが集まり、マナが入り込み全身を駆け巡る……まるで大雨の後の川の濁流に飲まれているかのような感覚に陥った。


「ぐ……ッ、うッ………!?」


 息が乱れ、視界が揺らぐ。体内に入り込んだマナが活発になっているのが分かる。


「はぁ……ッ!」


 ぐらりと眩暈がするけど、覇気で何とか吹っ飛ばす。そして、指鉄砲にして呪文詠唱の最後の決め台詞を叫んだ。


「――撃ち抜けッ! 火炎弾(フレイム・ブレット)ッ!!」


 その声と共に、銃弾のように勢いのある火炎弾が人形に向かって撃ちこんだ。

 一見しょぼいと思われる火炎弾だが、人形の胴体と顔面辺りに着弾した瞬間――最恐と言う言葉がふさわしいと思われる光景が目の前に広がった。



 ――ドッゴオオオオンッ!!



 地面を響かせる轟音と共に、喉を焼かせてしまいそうな強烈な爆風が吹き荒れ始めた。パーティーのみんなは爆風に吹き飛ばされないように、地面にしがみつく様に身を伏せる。

 そして私も爆風に巻き込まれないように地面に身を伏せた――のだが、突如粉微塵になれなかった人形の残骸が、私の顔面に向かって激突した。


「ぶおふっ……!? あ、あちちちぃぃぃィィィッ!!」


 人形の原料っぽいものが熱で溶けたのか、その溶けた液体が顔面に張り付き、急激な高温地獄に襲われた。


「だあああああああああああああああっ!! あちゃたややたやたやたやたやたちゃちゃッ!! アヂャーッ!?」


 急激な熱地獄で逃げ回るように、仲間の周りをぐるぐると回り始める。その最中に人形をどかしたのだが……風に当たっているだけでも痛みが襲う。……いや、むしろ痛みが増しているのか? と、とにかく顔面に――


「のぼおおっ!? み、水ぶっかけてぇぇぇぇぇっ!?」


 あたふたと草原を走り回って喚いた。すると、パーティーの仲間の一人が水の魔法を発動させ、私の顔面に向かって放水した。


「ぶわっぷっ!? ごぼぼぼぼぼぼぼぼぼッ!! あ、ありぼぼぼぼッ!! おぼぼぼぼれぇぇぇっるうぅぶぼぼぼぼぼっ!?」


 大量の水が顔面に放水されて私が「溺れるッ」と叫んだ瞬間、気づいたその人は放水を止めた。止まった瞬間、私は脱力感を味わって草原に倒れ込んだ。そして口から噴水のように飲み込んでしまった水を吐き出した。


「お、おい! 大丈夫かッ!」


 パーティーの仲間たちは、円形になるように私の前に立った。そして仲間の一人――先ほど私に声をかけてくれた人が介抱してくれた。


「大丈夫?」


「あ、うん……顔がヒリヒリするけどね……。ごほっ、ごほっ……」


 先ほどの放水で誤嚥を起こしてしまい、それを吐き出そうと咳き込む。

 介抱してくれている仲間は、私の顔の方にまじまじと眺めていた。何、私の顔に何かついているの?


「ねえ、ちょっとだけ目瞑ってくれるかな?」


「え、えぇ……うん。分かった」


 言われるがまま、私は言うとおりに目を瞑った。少し火傷の傷が響くなぁ……と思った矢先、その傷に優しく包み込むように手を置いた。


「いたっ……」


「大丈夫、そのままじっとしていてね。『わが身に宿る聖霊よ、下の者に癒しを与えよ――治癒(フィール)』」


「う……、ん」


 瞼から眩しい光が差し込んで、思わず短い呻き声を上げた。ジュクジュクとした痛みが消えていく……。


「はい、目を開けても大丈夫ですよ。もうこれで火傷の傷は消えました」


 恐る恐る目を開く。ずきりとした痛みもなく、火傷したところを触ってもヒリヒリとした激痛も起こっていない。


「ほ、本当だ。ってなると、貴方はヒーラー?」


「はい。――あ、自己紹介が遅れましたね。私は上級ヒーラーのアリス。よろしくね!」


「よろしくです。えっと、私は中級アタッカーのアーシェです」


 つい私も流れで自己紹介してしまったけど……、この流れはパーティーに入ったって事でいいんだよね?


「うむ、いい腕だな。アーシェといったか、我がパーティーに加えよう」


 パチパチと拍手しながら、加入を認める事を言った女騎士は私の前に立って手を差し伸べる。


「あ、ありがとうございます……」


 そして私は、差し伸べた手を掴んで立ち上がった。


「アリスと一緒で自己紹介が遅れてしまったな……私はメリサ。パーティーのリーダーをやっている。よろしくな」


「よ、よろしく」


 私はぎこちない様子で会釈すると、女騎士――メリサはぎこちない様子を和らげるように私の頭を撫でた。


「では頼むぞ、期待のアタッカーさん。私たちのパーティーは何故かヒーラーしか集まらなくてなぁー、がはっはっはっはっはッ!」


 なんて、先ほどの凛々しい姿からガサツな性格にジョブチェンジしているんですけど……。そんなキャラなの?


「いいの、私たちのリーダーは真面目で凛々しい面もあるけど、本当は結構ガサツでめんどくさがり屋なの」


 以心伝心したのだろうか――アリスは私の耳にこそこそ話をした。


「だーれがガサツな性格じゃっ!」


 こそこそ話していたのにもかかわらず、メリサはアリスの耳を引っ張った。


「いてててててっ!? じ、地獄耳ですか、リーダーッ!?」


「おう、私の耳はこそこそ話も聞こえるぐらいクリアな耳なんだ。今後、こそこそ話は控えておきなさい」


「う、うへぇぇぇッ!! と、とりあえず、耳引っ張るのをやめてくださーいッ!」


 なははっ、とその光景に思わずパーティーメンバーは笑い出した。定番のギャグなのかな、と思って私も釣られるように笑ってしまった。


「ふふっ、あははははははッ!」


「ちょ、アーシェちゃーん!? 笑わないでよぉぉっ! それといい加減、耳引っ張るのをやめてくださいよーリーダー!」


「あぁ、何だって? 最近耳が遠くなってねぇ?」


「いや、さっき地獄耳って言っていたでしょっ!! なんで今更、老人面するんですかぁッ!?」


「あー聞こえない、聞こえない! ホレホレ、聞こえないから耳引っ張っちゃうよー」


「いでででででででででっ!!」


 あははははははッ、と私とパーティーメンバーらは大爆笑。ほんと、面白い人たちばっかりだなぁ……このパーティーメンバー達。前のパーティーよりは、このパーティー仲間と一緒にうまくやっていけそう……かも。


「あ、あの!」


 私は声を張り上げて、新たなパーティーの仲間に向けて挨拶をした。


「改めまして! 皆さん、よろしくお願いします!」


 ぺこりと一例する、そしてメンバーたちは「よろしくね」、「よろしく」――と返事してくれた。


「だな。こちらこそよろしくお願いするよ、アーシェ」


「はい、よろしくお願いいたします!」


 メリサは手を差し出して、ギュッと握手を交わした。


 こうして、私は晴れてメリサ率いるパーティーに仲間入りしました――めでたしめでたし……。







「――って、勝手にRPGゲームの序章完結風に終わらせるんじゃねぇーよッ! 次にダンジョンの話やるんだからね!」


 と、アーシェは天に昇るような気持ちで突っ込んだ。


 そして、この世界の神がそのツッコミに答えた。


『――え、そうなんですか? 私はこのまま終わらせて、媚薬ローション祭りの回に進みたいのですが……?』


「言い訳ねぇだろッ! 大体、媚薬ローション祭りの回って!?」


『あぁ……、貴方が媚薬ローションを全身にぶちまけて夏奈実くんに欲情して、ず(自主規制)んする予定なんですよ』


「いやあああああああああああああっ!! エロゲ展開ちゃめてぇぇっぇぇぇぇッ!」


『だって、エロゲやっているんだし、それもできるんじゃなくて?』


「だ、だって! エロゲだからいいんだよおおっ! 実際に(自主規制)されたら――いやぁぁぁぁッ!!」


『――――仕方がない。ダンジョンの話をやりましょう』


「あ、ありがとうございますぅぅっ! び、媚薬ローションだけは勘弁してぇぇぇッ!!」


 懺悔のポーズをとって、この世界の神に感謝の言葉を伝えた。




(次回は、水着回かなぁ……? 最近暑いから……)

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