勇者を探していた女神が、気がついたら自堕落な生活を送っていた件
アーシェと沙耶のプール遊び!⑦(自堕落と言う概念が消えつつあります……( ;∀;) アーシェと夏奈実くんの距離が近づく直前……)←BYこの世界の神
アーシェと沙耶のプール遊び!⑦(自堕落と言う概念が消えつつあります……( ;∀;) アーシェと夏奈実くんの距離が近づく直前……)←BYこの世界の神
数十分後、光季ちゃんのお仕置きによってアヘ顔化した姿を見られた沙耶ちゃん達に発見された。その後、何故だか知らないけど光季ちゃんと一緒に怒られました。
「公共の場で何イヤラシイことしているの! 恥を知りなさい! あと、タユタユなおっぱい――――」と、多少私たちの果実を嫉妬しているかのように怒っていました。
まあ、とりあえず説教タイムを終えて私たちは再び流れるプールで遊ぶのを再開した。泳げない私は、無料貸し出しの浮き輪を借りて泳いでるのだ。
「ヒャッホー楽しーッ!」
「待ってよーみっちゃん! ちょっとクロール早すぎぃぃっ!」
じゃぶじゃぶとクロールして先に進む光季ちゃんと、それを追う奈都ちゃんをははっと苦笑いをしながら眺めていた。
「みっちゃん~! あんまり遠くいかないでよー! 探すのがかったるいんだよ!」
「わかったー! きゃはははッ、スライダーみたいにたのすぃぃいい!!」
人間とは思えない程、滅茶苦茶早いんですけど……。流れるプールだからなのか?
「はへぇ……人魚みたい」
私は思わず、光季ちゃんの泳ぐ姿にあっけない表情で眺めた。アスタリア王国の近海に住む人魚族みたいに速く泳いでいるなんて……。まさか、彼女ってアスタリア王国から転移した人魚族の子孫じゃないでしょうね?
「じゃあ、アーシェちゃんは何? 金槌人魚ってところ?」
きししっ、と嘲笑する沙耶ちゃん。ムカッと来たので、とりあえず彼女の顔面に向けて水をかけた。
「うわっぷ!? ご、ごめんって、冗談のつもりで言ったのよ」
「冗談でも、さっきはムカついた。もう一回」
それっ!ともう一度、顔面に向けて水をかけた。
「うわっ、ちょ……アーシェちゃん、やめ――あっ! は、鼻に水が入ったぁぁッ! めっちゃ痛いィィッ!」
「よっしゃッ! クリティカルヒット!」
「コノヤロー! えいっ! お返しだッ!」
ばしゃりと水しぶきを上げて、私の顔面に直撃した。
「うわっ! 目に水が入った……いてぇ……」
「ふん、私に水をかけたバツよ!」
ごしごしと目を擦って、目に入った水を取り出す。あぁ……目に染みる。
「アーシェちゃん、目を擦らない方がいいよ。余計痒くなるから」
「え、そうなの?」
「うん、とりあえず近くに水道あるから一回目を洗った方がいいよ」
そう言うなら止めた方がいいね。これ以上痒くなるのはごめんだし。
「――ねえ、アーシェちゃん。折角だしさ、私と一緒に泳ぐ練習でもしようか」
少しだけ沈黙した後、沙耶ちゃんがそう提案してきた。
「唐突だけど、なんで?」
「うーん……まあ、泳げた方がいいじゃん。川に流されそうになった時にも自力で助かる場合もあるし」
「川に流されるって……、相当な事が起こらない限り絶対にないと思うんだけど」
「もーッ! 細かい事は気にしない! とにかく、泳げた方が得するって事!」
泳いで得するって一体何? ゲームみたいにスキル獲得して、全然使い道なかったって言うオチじゃないだろうね?
「正直言って、いい年して浮き輪で泳いでいるのも恥ずかしいと思わない?」
いい年して……って、浮き輪していたっていいじゃん。まあ、さっきから「銀髪の女の人って年近そうなのに泳げねぇの?」とか「情けねぇーw」って、ガキどもから陰口叩かれまくっているんだけど……。
確かに、ガキどもに陰口叩かれている時点で恥ずかしいって実感するわ!
「まあ、うん……そうだね! クソガキの悪口叩かれるぐらいなら、泳げた方がいいよね!」
背後で陰口を叩いたクソガキに、ギャフンと言わせてやろうじゃない! 待っていろよ……女神様たるもの、出来ないものなんて無いって事を証明してあげるんだから!
「意気込みはいいけど、ちょろいな……」
なんて私が聞こえない囁き声で、軽くディスった事を言う沙耶ちゃんであった。
「ん? 沙耶ちゃん、何か言った?」
「ううん、何でもないわ。さ、そうと決まれば早速泳ぐ練習でも始めましょう!」
そう言うと、私の手を取って流れるプールを出た。
「さやっちー! 何処に行くのぉ?」
プールから出る姿を見た光季ちゃんが、そう質問してきた。
「アーシェちゃんと一緒に二十五メートルプールの方に行ってくるー!」
「わかったー! もう少し遊んでから合流するねー!」
「はいよー!」
二十五メートルプールで合流の約束をした後、私たちはそのプールに向かった。
※
先ほどの地図で言うなら流れるプールの円の中に、二十五メートルプールがある。沙耶ちゃん曰く、学校のプールと殆ど変わりないフツーのプールだ。
あと、このプールはリゾートプールでありながら県大会の公式会場として認定されているとか。まあ、私にはそこまで詳しく知らないから別にいいけど……。
「よっと……、アーシェちゃんも早く入って―!」
「う、うん……」
溺れないかと言う恐怖に満ちながら、恐る恐る階段を下りて深いプールに入った。私の胸元ぐらいの深さで、慎重に入ったおかげで溺れずに済んだ。
「ほっ……」
「よし、それじゃ私の手を握って」
「う、うん……」と頷き、言われた通りに沙耶ちゃんの手を掴んだ。
「そのまま足を上げて、水に体を浮かんでみようか」
「うん」
ゆっくり足を地面から離して体を水に浮かせた。まだちょっと足をバタバタしないと、体を浮かせられないけどね……。
「おわぶぶっ……! や、やばばばばぶぶぶ……! おぼぼれれれれっ!!」
や、やばい……体が安定しない。このままじゃ溺れるッ!
「大丈夫、私がいるから落ち着いて……。そのままゆっくり体を上げてね」
優しいコーチのような事を言う沙耶ちゃん。私は思わず、彼女の優しい言葉に呆けてしまった。別に大した意味じゃない。ただ、泳げない私に優しく教えてくれること自体嬉しく思えたのだ。
「う、うん。絶対に手を離さないでよね!」
「はいはい。それじゃ、バタ足しながらでもいいから真っすぐ体を伸ばして」
「こ、こうかな?」
バタバタと水しぶきを上げて体を真っすぐにさせる。けど、まだ下半身は沈んだままだ。くそぉ……全然体が浮かばないよぉぉッ!
「アーシェちゃん、もう少し腹の力を抜いてみて」
「え? こ、こう?」
腹の力を抜いて、深呼吸するようにリラックスした気分で体を真っすぐにしてみた。すると、先ほどまで浮かなかった体が急に浮き始めたではないか。
「うそ……水に浮いている! 浮いているよ、沙耶ちゃん!」
「へーすごいじゃん! 普通、腹に力を抜くって簡単に出来るもんじゃないんだけど、アーシェちゃんって本当に泳いだ事無いの?」
にやにやと揶揄う質問をする沙耶ちゃん。私はむーっと頬をたこみたいに膨らませて答えた。
「ほんとだよー! 私、一度も泳いだ事無いの」
ブクブクとちょっと沈没しかける船のように、体が浮いたり下がったりと繰り返して泳いだ事が無いという事をアピールする。
「わかった、次はバタ足して進んでみようか」
「全然わかっていないじゃーん!」とツッコミを入れて、私は言われた通りにバタ足してゆっくり前へ進んだ。
「そうそう、うまいじゃん。これなら手を離しても行けるんじゃない?」
「む、無理だよ……ぼここここッ! ま、まだばばばばばッ! 離さないでぇぇぇッ!」
体が沈みながらもバシャバシャとバタ足して進む。ヤバいって……これ思った以上に動かないよりも体がすぐに沈むんだけど……。一体なんでぇぇッ!
「ほら、腹の力を抜いて! じゃないと沈んじゃうよ!」
ダメだって……腹の力を入れないと泳げないってば!
「――仕方ない。お腹押さえるから、そのままゆっくり進んで」
「う、うん」
私の手を離して、お腹の方を持ち上げた。くいっとお腹を仕上げられ、圧迫した感じだ。
「あれ……アーシェちゃん、なんかお腹の肉がブニブニしている――」
「こ、声に出すなぁぁぁッ!」
「ははーん、さては少し太ったかな? まあ、ずっと家でゲームしているとねぇ……」
にやにやと嘲笑する沙耶ちゃん。な、なにか悪い? 私の自堕落ライフに何か文句あるの?って言いたいところだけど、「へぇー」ってにやにやと嘲笑されそうなので止めた。
「ま、この際、泳いで少しは瘦せようね」
優しい言葉をかけているつもりだが、私には喧嘩を売っているようにしか思えないんだがね。
「うるさい……」
私はせめての抵抗を呟いて、ぼこぼこと口を水の中に入れた。
「なんか言った?」
「ぼごごっ……(別に……)」
その会話を最後に私はだんまりしたまま、沙耶ちゃんと一緒に泳ぐ特訓を続けた。
「そこ、足をもう少し力を入れる!」とか、「何度も言っているでしょ! 腹の力を抜きなさい!」とか、「足をまっすぐにしなさい!」と、なんだか途中からスパルタ特訓になり始めていたが……それでも挫けずに頑張った。最近運動していない私にとっては苦痛だったけど……。
「はぁ……はぁ……づかれだぁぁ……」
途中から鬼畜特訓になって数十分後、特訓の成果を沙耶ちゃんに見せるときが来た。
一時間の特訓の成果、ここで発揮して見せる!
「アーシェちゃん~~! 頑張ってー!」
ゴール地点に立つ沙耶ちゃんが応援していた。彼女の期待に応えないとね。
私は大きく深呼吸した後、プールの壁を勢いよく蹴った。
ざばんと魚になった気持ちで華麗に泳ぐ。先ほどまで全く泳げなかった一時間前より、遙かに泳げるようになっていた。
「すごいすごい! 一人で泳げるようになったじゃん!」
沙耶ちゃんは驚いていた。直前まで手を掴まないと泳げない私が、いざ実践してみたら一人で泳げるようなっているなんて……進歩しているなーって思っているのだろう。
まあ、私もいきなり一人で泳ぐなんてどうかしていると思うが、沙耶ちゃんが見守ってくれているからすんなり泳げる――と自分はそう感じている。
「がんばれー! あと半分だよー!」
もう半分も泳ぎ切ったのか……我ながらすごい。これなら、あのガキどもにぎゃふんと言えるな! ムフフ……とガキどもの跪く光景を想像してウキウキした気持ちに満ちていた。
――瞬間、太腿にピッキンと電流が走ったかのような痛みが襲った。
(……い、いてぇぇぇッ! あ、足攣ったぁぁ! し、しかも両方……!?)
最悪な状況下になってしまいました。両足攣った場合、どう対処するべきだろうか? 答えは分かりません。だって、そんな事沙耶ちゃんは教えていないのだから。
「ぼごごっ……ぼここここ……ぼここここ!」
ヤバい体が……沈み始めている。しかも肺が弱いから息が長続きしない。これは、死ぬのかな……。早く、息を吸わないと死んじゃう。
「アーシェちゃん!」
沙耶ちゃんの声が微かに聞こえる。そしてドボンと飛び込んだ事も分かった。
(く、苦しい……息が……できない。意識が朦朧……する……)
パニックに陥った私は息をすべて吐き出してしまって、もう体には酸素は無い。早く……息を吸いたい――よ……。
薄れゆく意識の中、私は水面に向けて腕を伸ばす。きっと水面に届くかもしれない……そう信じて藻掻きながら必死に伸ばす。けど、太陽が遠くにあるように伸ばしても決して届きはしない。段々と水面の光が遠くなって――華奢な体がゆらりゆらりと沈んでいく。
そして私は最後の息を吐いた後、暗い無の場所へ向かった――――
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