アーシェとネトゲ⑥(モンスターを駆逐します!!)もう適当なオチでこのネトゲ回は終わりますわww←By夏奈実

「おおおおおおおッ!! くたばりやがれえええええッ!!」


 メリサが咆哮し、二つの剣でボスモンスターの体を斬り刻んだ!


「はああああっ!」


 メリサの攻撃の後、背後から二重の攻撃を私は仕掛ける。魔力エネルギーを入れ込んだナイフを取り出し、モンスターの体に刺しこんだ。


「弾けろ――」


 静かに告げると、ドカンとナイフが爆発した。すると、モンスターの腹部にデカい風穴が開いた。


「――からのっ、撃ち抜けッ! 『火炎弾』ッ!」


 拳銃ポーズを取って、風穴の場所に火炎弾を撃ち込んだ。そして風穴場所からドカンと弾が弾け散った。紅蓮のように美しい爆発と共にモンスターの肉片が飛び散り、運悪く私の顔面に当たってしまった。


「ぶほっぷっ!?」


 ぬっとりとローションのような血液が目に入り、思わず悶えてしまった。


「ぎゃああああああああああああああああああああああっ!? 目がッ! 目があああああああああああああああああああああああっ!?」


 め、目潰しされた……? ま、マズイ! 攻撃仕掛けないと、やられる!

 とにかく少しでも血を拭取って目を開けるようにしないと……。

 血を拭い取って、僅かながら目を開く。すると、モンスターが近くに居て――


(やばい――)


 危険な状態と察した瞬間――モンスターは巨大な拳で私の胸倉に向かって放った。


「ごほっ――」


 拳の衝撃吸収の魔法を張る前に放たれたので、魔法を発動できずそのままの衝撃の強い拳をくらった。当然の如く、あばら骨の一部が折れて内臓の何処かに刺さって血を吐いた。

 そして拳の勢いが強かったせいで、身軽の私は吹き飛ばされて洞の壁に激突し、壁にめり込んだ。


「クソモンスター……なんで私の顔面に肉片を当てたんだ? いや、私のミスか……?」


 とりあえず、自分の体力ゲージを確認する。くそ……四分の三以上削れて、真っ赤になってやがる……。マズイ……ヒーラーの早くしろ! 死にかけそうなんだ……早く回復魔法をかけてくれッ!


「アーシェさん! 大丈夫ですか!?」


 下から声が聞こえたので、その方向へ向けるとアリスが回復魔法をかけてくれる。そのおかげで、半分ぐらいまで体力が回復した。


「うん、大丈夫! あと、回復サンキューな!」


「とりあえず、壁に張り付いていないで降りたらどうなの?」


 なんてアリスはツッコミする。まあ、そうだよな。壁に張り付いたままじゃ、戦えないしね。とりあえず、体を動かしてめり込んだ場所を少しでも広げないと……。

 ぐりぐりと前に出るように体を動かして、やっと岩盤から抜けられた――と安堵した瞬間、地面に真っ逆さまに落ちた。


「ひょわああああああああああああっ!?」


 ヤバい、ヤバい! 地面に落ちるゥゥゥッ!? とりあえず、空中浮遊魔法を――って私は、その魔法の知識を持っていない事を忘れていたああああああああああああああっ!?


「やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい! 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬッ!」


 マジでどうすればいい!? 死ぬの? 早速足手纏いになるの? それだけは嫌だ!


「アーシェちゃん! そのままじっとして!」


「ふえ?」


 アリスの言う通り、わたしはじっと大人しくすることにした。このままだと死んでゲームオーバーしそうな感じなんだけど……と思っていた矢先、アリスが私をキャッチした。


「お、おおっ!? アリスさん!?」


「大丈夫? 空中浮遊魔法を手に入れていなかったの?」


「え、まあね。あはははっ……」


「そう――大丈夫なら、まだ戦えるでしょ?」


「はい。何とか戦えます!」


 アリスが地面に着地した後、私を下ろした。そしてすぐさまメリサさんと合流して、ボンレスハムを薄く切るようにモンスターの体力を削り取った。


「アーシェ! 大丈夫かッ!」


「メリサさん、大丈夫です。まだ戦えますからっ!」


「上等だ! 喰らいやがれぇぇッ! 私の渾身の剣戟をおおおおっ!」


 メリサは壁を斜めに走り登り、モンスターの頭部を一つある剣で脳天にぶっ刺した。次にもう一つの剣で片目を斬り込んだ。


「ウゴゴアアあああああああああああああっ!?」


 片目を斬りつけられ、悶え始めるモンスター。


「やったぜッ! これでイチ――ゴフッ!?」


 イチコロだぜぇぇッ!と喜びの声をメリサは上げようとしたのだが、苦しみ悶えていたモンスターがすぐさま反撃を行ったのだ。

 その反撃とは――私と同じ拳。だが殴るというより、叩きつけた……と言った方がいいのだろう。ドゴンッ……と、鈍い音が響いて地面に叩きつけられた衝撃で地面が少し揺れた。


「ごほっ……? い、いてえええッ!?」


「メリサさん! 大丈夫ですかッ!?」


「あぁ……何とかね。くそ……いつもこのパターンで死んでいるんだよなぁ……」


 なんて聞き取れなかったが何か愚痴るメリサ。ちくしょう……メリサさんの体力ゲージはどうなっている? ヤバい……ゲージ赤点滅だと? 次の一撃でメリサさんが死んでしまう……。


「誰か! メリサさんに回復魔法を――うわっ!?」


 風を切る音が聞こえ、思わず屈む。どうやらモンスターが素振りの攻撃を仕掛けたようだ。――てか今気づいたけど、このモンスターって魔法とか使わない系ですかねぇ?


「リーダーッ! 大丈夫ですか!?」


 近くに居たアリスがメリサさんに駆け寄り、介抱した。


「だ、大丈夫だって……アリス。と、とりあえず回復魔法で私を回復させて――」


「わかった。とりあえず、少しずつ回復させるから安全な場所に行こう」


「あぁ……恩に着る」


 よいしょとメリサさん腕をアリスの首に回して、安全な場所まで進んでいく様子が見えた。


「大丈夫ですか? メリサさん」


 私もメリサさんの腕を首に回して、介抱を手伝った。


「いや――アーシェ。お前はあのモンスターを倒せ……」


「でも――」


「いいからッ! 回復したら応援する! それまで戦いを止めるなッ!」


 メリサさんの一喝で、私は一瞬身を怯ませた。少し怖かった……。


 ――そうだ。ここで止まるんじゃない。少しでもモンスターの体力を削らないといけない。一度倒したモンスターなんだぞ。私がここで戦いを止めたら、ヒーラーの人たちが危なくなってしまう。だから、アタッカーメンバーの最後の一人である私が立たなければならない!


「分かった。じゃあ、体力がよくなり次第、加勢お願い」


「了解! すぐに加勢す――アーシェ、危ないっ!」


 メリサさんが血眼になって叫んだ瞬間、一体何が起こったのか理解するのに少し時間が掛かった。

 何故なら、突如モンスターが放った炎の魔法にメリサさんが私の代わりに庇ってくれたのだ。その時の光景は、何故かスローモーション映像のようだった。

 アリスと一緒に弾き飛ばされ、その後に炎の魔法を背中に身を受けてしまい、「あちちちぃぃぃィィィッ!」と呻き声を上げるメリサさんの姿。私は何が起こったのか分からず呆然としながら、メリサさんが焼かれていく光景を眺めていた。その光景を見た瞬間、やっとメリサさんが私を庇ってくれた事に気づいた。


「メリサさん!」


「り、リーダーッ!」


 私たちは思わず叫んだ。目の前でリーダーがやられてしまったのだから、当然な行為(?)だった。


「ぐはっ……!?」


 メリサさんが吐血をし始め、ばたりと力尽きるように倒れた。


「メリサさんッ! メリサさんッ! 起きてくだ――えっ!?」


 メリサさんを呼んで起こそうしたが、私は彼女の体力ゲージを見るとゼロになっている事に気づき黙り込んでしまった。



 ――だって。メリサさんは、目の前で死んでしまったのだ。



「め、メリサさああああああああああああああああああああああああああああああんッ!」


 その叫びと共に、メリサさんはゲームから退場した。しゅん……と光の粒子に飲み込まれて消えていきました。


「――――よくも」


「アーシェちゃん?」


「よくも、メリサさんをおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」


 私はすぐさま落ちていたメリサさんの剣を拾って、モンスターに向かって突進した。もちろん、彼女の仇を取るためだ!


「死ね、シネ、シネ、シネえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッ!!」


 怨嗟に満ちた声で、モンスターの体に剣戟の一撃をお見舞いさせる。だが、間一髪のところでモンスターは避けた。そして避けた反動を利用して蹴りを入れた。


「ぐッ……!?」


 咄嗟に腕でガードして防御魔法を発動させたが、タイミングが悪かったのか魔法が発動する前に蹴りをくらった。

 吹き飛ばされ、そのまま岩盤に激突し――――


「――――ん? あれ? なんで私の体止まっているの?」


 激突すると思っていたが、現実は違って時が止まってしまった。私の体は動かないけど、何故か口だけは動くという謎現象が起きていた。


「え、ちょ……なんで止まっているの? これじゃ、メリサさんの仇が取れないんだけど……?」


 疑問に思いながら、とりあえず体を動かすことに専念した。体が動かなきゃ、何もできない。一体どうなっているのか確かめなければ……。


(そうだ……私のステータスを見て確認しよう)


 止まっている原因は状態異常かもしれないと睨んだ私は、早速ステータス画面を開いた。


(えっと……状態異常は、無い? ――ん?)


 状態異常がない事に疑問に思った矢先に、突如ある画面が表示したことによってすべて解決した。



『ただいま、メンテナンス中です。終了時間は公式サイトまたは公式ツイッターにてご確認ください』



 なんという事だろう――ゲーム途中でこんなタブーを侵してしまうなんて……。まあ、途中でやめても再開は出来るが、全部一からやり直しという事になる。だから、私は今までの苦労が水の泡になった事に関して嘆きの叫びをあげた。


「クソったれえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッ!!!!」



 現実世界に戻ったアーシェは――


「ちくしょう……なんでメンテなんだよ。一体どこに――あっ」


 公式サイトにある運営のお知らせを確認すると、確かに定期メンテナンスのお知らせが書かれてあった。


「うわぁぁぁぁぁぁぁん!! なんでメンテナンスなんだよおおおおおおおおおッ!」


 思わず私は大号泣してしまった。だって、だって! メンテナンスなんて聞いていないよおおおおおおっ! 


「あぁ……、レポートのネタァ……思い付かねぇ……」


 隣のパソコンの前で夏奈実くんも、何も思いつかない事にシクシクと泣いていた。



「「ちくしょう……ちくしょう……チックショーッ!!!!」」



 もうなにがなんだか分からなくなった私と夏奈実くんは、とりあえず無意味な雄叫びを叫んだ―――

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