アーシェとデート!?編⑬(????????????)【R15】

 ――夜、自室。家に帰宅し、飯を食い終えて寝るまでの自由時間がやってきた。


 俺はばたりと布団の上にダイブし、今日のデート(?)の疲れを癒す。


「ふぅ……やっと落ち着けるぅ~~!」


 本当に疲れた……結局帰宅ラッシュに引っかかってしまった。まあ、三〇分程度で本当に良かった。少し遅れていたら、帰宅ラッシュ二時間コース確定だったわ! 二時間は流石にストレスが溜まる――大体、信号機の設置する場所がおかしいだろ! 百メートル間隔で信号機設置するな! 設置する理由なんて少ない場所の信号機じゃん! それと、定期的に信号切り替わるパターンじゃなくて感知式にしろ! いちいち、車が居ないのに信号変わるなんてイライラするんだがッ!


「あーっ! 渋滞の事を思い出したらまたイライラしてきたッ!!」


 イライラが蒸し返して、ぼりぼりと頭を掻いて暴れ始める。クソクソ……渋滞が無ければァァ!!


「――ふぅスッキリした」


 すぐに暴れるのを止め、仰向けになって真っ白に輝くシーリングライトと天井を呆然と眺めた。


「アーシェの彼氏クン……か」


 レイベルさんが口にしていた台詞をぼそりと呟いた。やっぱり……彼氏クンって呼ばれると、すっげぇうずうずするなぁ!! 彼氏クンって言う響き、よくないか!? くぅぅぅ!! 人生二十年、高揚感がある気持ちは初めてだッ!! 俺にッ……念願のッ……二次元美少女キャラのような女性とっ! 付き合えることが出来たぜぇぇぇぇぇぇッッ!!


「いやァァぁッ! 死んでもいいぜぇぇぇッ!! もう一生分の運を使い果たした気分だぜぇぇぇッ!!」


 なんて、ラノベ主人公あるあるのセリフを叫んで喜ぶ俺である。だって銀髪美人だよ!? 凶器みたいな果実を持っているんだよ! 駄女神だけど、お淑やかな女性だぞ!? こんな彼女が出来て発狂しない訳ないじゃないかッ!!


「よしよしッ! ヤッホーッ! めっちゃ自慢してぇぇぇぇッ!!」


 俺も某駄女神みたいにアハハッと高笑いした。もう、近所迷惑とかどうでもいい! こんな胸が高鳴る事なんて一生ねーんだからよ! 


「うるさいッ! 黙れクソ兄ッ!!」と、隣部屋に居た沙耶が苛立ちながら俺の部屋の扉をぶち破り、手に持った本を顔面に向けて投げつけた。


「ぶごほっ!?」


 投げた本は運悪く角の所に額に直撃した。そしてばたり……と意識が遠のいて……しまった。



     ※



「う……うぅ……ん?」と、うめき声を上げて淀んでいた意識が鮮明になった。


 ぼんやりと意識が戻って目が覚めると、いつの間にか部屋の中が真っ暗になっていた。どうやら、自動消灯か誰かが部屋の電気を消したみたいだ。まあ、そんな事はどうでもいい。

 俺はむくり……と布団から起き上がって、キョロキョロと暗くて何も見えない部屋を見回していた。まあ、当然ながら暗くて何も見えないが……。


「ふぅ……」と溜息を溢すと、ずきりと額に痛みを感じた。


(うぅ……額が痛い。沙耶の奴――本を投げつけやがって……)


 そうだ……沙耶にうるさいって言われて本を投げつけられて、気絶していたのか……? それよりも、なんで額に当たっただけで気絶するんだよ……と内心で突っ込んだ。当たり所が悪かったのか? 


「いてて……そう言えば何時なんだ?」と、時計を見るが暗くて何も見えない。仕方がないので、近くにあったスマホの時計で時間を調べた。


「――日付、越えている……深夜一時前か」


 ……という事は、飯を食べ終えたのは七時半だから丸々五時間は寝てしまったのか。まあ、風呂は飯前に入ったからいいよな。


「――それにしても部屋、暑い」


 汗によってべったりとシャツが肌に張り付いて気持ち悪い……スマホの温度計を見てみると、三〇度の熱帯夜だった。しかも、クーラーをつけていないから……そりゃ蒸し暑いわな。


「――ダメだ、一回着替えよう。気持ち悪い……」


 ベッドから降りて蒸し暑い自室から出る。廊下に出れば涼しい――ってそんな事は無かった。廊下も自室同様、蒸し風呂みたいな熱気に包まれて気分が悪くなりそうだ。


「う……ぅ、熱い……みんな寝ているから静かに行こう」


 足音を殺しつつ静かな廊下を歩くと、何か水が滴るような音が響いた。


「……? なんだ?」


 キョロキョロと音の発生源を探すが、いつの間にかその音は静寂に包みこまれるように聞こえなくなってしまった。


(まあいいか、着替えをしよ……)


 てくてくと二階の廊下を歩き、階段を下りてすぐ右にある着替えルームへ入った。

 タンスの中から、シャツとパンツを取り出してパッパッと着替える。少しはさっぱりしたな……。


「喉渇いた……水飲もう」


 汗でびしょびしょの下着を持って脱衣所の方へ向かい、洗濯機に先ほどの着替えた下着をぶち込んだ。そして台所へ行き、洗い場にある食器網に置いてあったコップを手に取り浄水器の水をコップ一杯に注いだ。何故か水が温かった。

 そんな事を気にせずに俺はごくごくと水を飲み干した。


「ぱぁ……うま」


 ぬるい水とはいえ、飲まずに熱中症になるよりはマシだな。


(さて、部屋に戻るか……)


 ジャーっと軽くコップを濯ぎ食器網に戻した後、二階の自室へ向かった。


「ふわぁぁぁぁ……」と、欠伸をしながら二階へ向かう階段を上る。もう眠気のせいで音を殺して歩こうという気力は無かった。まあ、みんな熟睡しているから音なんて気が付かないだろう……。


「――はぁ……はぁ……!」


 自室のドアノブを手にかけた瞬間、不気味な音が聞こえた。なんというか……変な息遣いをしているような声が……?


(泥棒……か?)


 とりあえず……隙間を開けて様子を伺おう。扉をゆっくり開けて隙間から部屋を見る。


「夏奈実くん……夏奈実くんッ!」


 この声は……アーシェ? 何をやっているんだ……? 視野を回して部屋全体を見回す。


「夏奈実くん……夏奈実くんッ! 好き好き!」


 どうやらベッドの方から聞こえる。俺の名前を呼んで一体何をしているんだ?

 ベッドの方を見ると、俺の名前を呼びながら汗で染み付いたシーツの臭いを嗅いでいた。

 はい……? アーシェが俺の体臭を嗅いでいるの? なにこれ、ヤンデレレベルに怖いんだけど! エロゲやエロ漫画でこういうシーン見るけど、実際に見てみるとチョー不気味なんですがッ!!


「なっ……なにしとんじゃーい!」


 バーンと扉を開いて、アーシェの行動に全力ツッコミを入れた。


「ふうぇっ!? 夏奈実くん!? 何時の間にぃっ!? ふええええっ……い、何時から?」


「少し前から」と答えると、アーシェはぷくぅぅ……と頬を膨らませて真っ赤な表情をしていた。


「むぎぃぃっ……んくぁわじぇかのきえれのろれれしいいそえれをうぃきみなおッ!?」


 もはや何語を喋っているのか分からないセリフをアーシェは言う。


「……あぁ、その――色々聞きたいのは山々だけど……」


 色々ツッコミたい所を言いたいが、アーシェの機嫌を損ねないように遠回しに言う。


「――――むぐぐぐ……ぐっ!」


 まるで威嚇する犬のような呻き声を上げた後、俺の体に抱きついた。


「な、なに……?」


「――――私の考えている事、当ててみ」


 無理難題な質問をしてきた。アーシェの考えている事って――エロゲか勇者になってくれという事しか思いつかんわ!


「――えっと、その――エロゲ貸してくれ?」


「――――ぶっぶぅ~~外れぇ~~!」


「なんだよ……じゃあ」


 ムスッと少し怒るような口調でアーシェに言うと、彼女の口が耳元にやってきて甘美に答えを囁いた。


「正解は――――よ・と・ぎ……にしにきたの」


 ゾクリ……と鳥肌が立った。恐怖ではなく、媚薬を飲まされたような快楽の鳥肌が……。


「なななな……なッ!?」


 俺はアーシェの食戟的な発言に動揺して、床にへたり込んでしまった。


「なななな、何を言って!?」


「ふふっ……恋人になったらやる事の一つでしょ?」


「そ、そうだけど……! その――よく考えた方が……」


 考え直せと伝えると、アーシェは沙耶から借りているジャージをしゅるりと脱いだ。な、何をやっているんだ……!? こんなところで脱ぐなッ!!


「ちょ……おまっ―――」


 待てとアーシェの手を止めようとしたが、俺はその手を伸ばすのを止めてアーシェに見惚れていた。


「ど、どう……? 今日買ったチャイナドレス――」


 そこには想像を超える艶美な彼女の姿がいた。月光が差し込んで服が少し透けて見える。よく見ると彼女はチャイナドレス以外纏っていない。


「あぁ……その、似合っているよ」


「ありがとう――んっ!」


 お礼を言った瞬間、アーシェは不意打ちに俺の唇を貪り始めた。


「ふ、不意打ちすぎだろ……というか、なんで今日実行しようと思ったんだ?」


 一旦唇を離し、アーシェに質問する。今日決行しようとしたい理由――知りたいからだ。

 すると、突然アーシェは潤んだ瞳で俺の方を見つめていた。


「……今やらないと、いつか……後悔するって思ったの」


「な、なにを言うんだ……後悔って――別れるんじゃあるまいし」


「――そうだけど……ッ! 今すぐやらないと……私絶対後悔しそうで怖いの」


 ……話を聞く限り、理由を語ろうとしない。一体彼女の身に何か……あったのか?


「だから……シよ? 理由なんて必要ない――ただ単純に夏奈実くんの事が好きなんだからしたいの……」


 甘美な響き……俺はアーシェの言葉に理性がプッツンとキレた。先ほどアーシェの質問の事なんてどうでもよくなった。そうだ……理由なんて要らない。俺はアーシェの事が好きだ。それ以外に何がある?


「あぁ……そうだな、俺は――アーシェが好きだ」と好きだという事を伝えて、彼女の唇を貪る。


「ん……んッ……夏奈実くん……」


 放して交わして、放して交わして……二、三回程繰り返して、俺はアーシェを自分のベッドに押し倒した。

 はぁ……はぁ……と俺達は甘い吐息を溢す。彼女は白い頬が紅潮に染め上がっていた。


「――いいんだな、アーシェ。引き返すなら今だぞ?」


「……うん、いいよ。私を貪って――」


 アーシェはくねくねと体を揺らして誘惑する。


「あぁ……分かった。プールの時の続き……やってやろうじゃん」


 俺はぎゅっと抱きしめて、アーシェと言う魅惑の女の子を貪り始めた――――


 


 夜はまだ……始まったばかりだ。エロゲみたいに、好みそうなシチュエーションを全てアーシェに叩きこんでやる……! 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る