アーシェとVR⑩(エピローグよりもオチ)

「はっ!」


 目が覚めると、漆喰の天井が広がっていた。ここはどこだろう……、さっきまで森の方で堕天使を討伐していたはずなんだけど。もしかして、私は真っ白い世界に漂っているの?

 ……とりあえず、起きよう。そういや、私ってルシファーに殺されたんだよね。となると、ここはギルドの病院かな? オープンワールドゲームで死んでも病院で治療して生き返れるシステムがあったよね。多分、そんな感じでギルドに戻っているんだな……。


「う……うぅ……ん」


 ゆっくり体を起き上がると、そこはギルドの病院ではなく見慣れた自室だった。ぐちゃぐちゃの普段着のジャージに汚れが目立ち始めた女神の装束と夏奈実くんからもらった中古ノートパソコンが、床に置いてあった。なにこれ……ギルドじゃない? まさか……いやいや、何で自室にいるのよ! ゲームやっていたんだから、普通ギルドにいるんじゃないの?


「はは……ありえねぇ……はははは……」


 夢だなと思った私は頬をぎゅっとつねった。痛かった……とてつもなく。「んー?」と、私はこの風景を見て、だらだらと汗をかいた。


「……まさか、これって全部夢オチ? ……VRなんて最初から持っていなかったの?」


 がばっと掛布団をはいで客室を飛び出して、隣の夏奈実くんの部屋へ入った。漫画に夢中になっていたので、突然の高い声に「うおっ……アーシェ!?」と声を上げた。


「夏奈実くん! VRゲームはどこにあるの!?」


 私は夢オチじゃないことを信じて夏奈実くんに質問した。


「VRゲーム? んなもんあるわけないだろ……VRゴーグル買う金ないし」


 と、真っ向からVRゲームが家にあることを否定した。


「――え、マジ?」


「マジ。というか、お前の部屋から変な呻き声が聞こえたぞ。変な夢でも見ていたのか?」


 なんて、大丈夫かと言わんばかりな表情で私を見つめていた。


「……え?」


「え、じゃないわ。まぁ、昼寝は大概にしとけよ」


 え、昼寝……? 何時からしていたんだっけ……?


 と言うよりも、やっぱり夢オチだったのおおおおおおおおおおおおおおおおっ!? そりゃないよー! VRがやっと出てきている時代にVRゲームをやったという盛大な夢オチなんて、ありえないんだけどぉぉぉぉっ!!


「うげげげ……そりゃないよ……夏奈実くうううううん!!」


「なっ! そんなこと言われても分からんわっ!」


「そ、そんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



 大粒の涙を溢しながら、こんな最悪な夢オチだったことに私は嘆いたのであった。

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