アーシェとネトゲ③(パーティー探しの巻)←もうやり込み方がプロと言ってもおかしくないな…… By夏奈実
――夏奈実くんが何かに頭を抱えている一方で、私はネトゲの続きをやっていた。
ゲームの世界に入り込んだような感覚を覚えながら、私のアバターは奴を倒すために必死になって攻撃魔法をぶっ放す!
「はよ、回復魔法発動しろよ! うわっ……回復量少なッ! これだと即死しちゃうじゃん!」
今現在、期間限定イベントのダンジョンのクエストをやっている。その場所に巨大モンスターに出くわして戦っている最中だった。
「やばいやばいやばいやばい……、本当に殺されるんだけど! コンティ不可能のクエストなんだよ!? このヒーラー分かっているの!?」
ヒーラー(魔法使い)がいるから無限ループに回復して死なない、そう攻略で確認した私は試しに『ヒーラーが強いです』と自信もって募集に書かれてあったパーティーに入ったのだが、ヒーラーの支援がクソ遅いから体力がどんどん削られていく。
マジでヤバいんだけど……、仕方がない。こうなったらイチかバチか……ゴリ押しでモンスターをブチノメスッ!
「ウオオオオオオオオオオオオッ!!」
致命傷に近いダメージを受けてダウンしている中、私は咆哮をあげ仲間よりも一歩前に出てモンスターに近づいた。そして攻撃魔法と腰に帯刀した剣のダブル戦法でモンスターの体力を削り取っていく。
「クソクソ……早く早く……、行け、行け、イケェェェェェッ!!」
獣みたいに発狂しながら、押しで巨大モンスターを駆逐した。よっしゃ、ギリセーフ……と安堵の表情を浮かべる。
「ふぅ……何とか勝てたぁ……。クソヒーラーめ……、現実で出会ったら魔法でぶちのめしてやる!」
愚痴をこぼしながら、次のステージダンジョンへ向かう前にダンジョンの外に出てギルドに戻った。
(さーって、次のダンジョンに行く前にパーティー変更しよ。今のヒーラーじゃ、次のボスキャラに対抗できない)
このゲームを始めて一時間だが、このゲームのコツは段々掴めてきた。回復魔法のキャラさえ居れば死なない事と、現在私が使っている攻撃魔法のキャラは遠距離攻撃に特化している。私のキャラと強力なヒーラーが居れば最強パーティーになれる。
そして、一刻も早くイベント終わらせてイベント限定のキャラを手に入れよう。聞く限りじゃ、結構高火力と防御を兼ねそろえたレアキャラって言う。それをゲットしなければ!
「でも、その為の周回はクッソだるい……。せめてオートモードでも付けておけよ……」
軽く運営にディスった事を呟いて、カタカタとキーボードを操作する。
(効率の悪い手動での操作……ユーザーのみんなって本当にめんどくさいって言いながら、続けるよね? なんでだろ?)
そんな事を思いながら、ギルド内のパーティー募集の掲示板を見る。殆ど、期間限定イベント攻略――攻撃魔法が高い人、ヒーラー能力が高い人を募集している。
攻略サイトによれば、初心者でも高い攻撃力の高い人や回復魔法力が高い人は玄人でも歓迎してくれるらしい。とりあえず、ヒーラーが高い人のパーティーに入らなければ……。
「えっと、ヒーラー高いパーティーは何処だ?」
パーティー募集の掲示板に貼られた募集の紙を手に取り、内容を確認する。
(とりあえず、最強パーティーの募集を見てみるか……)
『ヒーラー急募! 私たちのパーティーは、攻撃力は高いですが回復力が少ないのでお願いします!』
『ヒーラー募集しています! 高難易度のクエストを突破したいです―――』
と、いったヒーラー募集のパーティーが多かった。正直言って、好ましくないパーティーばっかりでうんざりな気持ちだった。
「はぁ……ヒーラー募集以外のパーティー募集って無いのか? クソ……これじゃ期間限定イベントのダンジョンが攻略できねぇじゃん……」
どれもこれもパーティー募集を見繕っても、ヒーラー募集しかない。最初にキャラクターを選択した時に攻撃家の魔法使いを選んだ事に少し後悔……。はぁ、どうすればいいんだ?
(――そうだ、パーティー募集の絞り込み設定しよう。ヒーラー募集以外の募集があるはず……)
パーティー募集の絞り込み画面を開いて、アタッカー募集のチェックボックスをクリックすると該当する募集が数件だが出てきた。
『アタッカー募集! 期間限定イベントで、どうしても高火力アタッカーが必要なダンジョンがあるのでお願いします! 私達のパーティーのヒーラーの能力は少し高めです!』
理想とは少し欠けるパーティーだけど、まあいいか。最初のパーティーのクソヒーラーよりはまだマシかもしれない。よし……パーティーの応募しよう。
パーティー募集の張り紙を取って、パーティーが集まっている場所へ向かう。
『パーティーは、右から二番目のテーブルに集まっています。入りたい方はそこに来てください!』と書かれていたのを確認して、その場所に着くとワイワイと男女混合のパーティーメンバーが集まっていた。
「あの、すいません。パーティー募集の張り紙を見てきたのですが……」
恐る恐るパーティーの一人に声をかける。
「お、うち等のパーティーに入るのかい?」
「え、えぇ……はい」
こくりと頷くと、その人は私をじっくりと眺めていた。
「え、あの? 私の顔に――」
「あぁ……ごめん、ちょっとどんな体つ――ぶべれしょっ!?」
卑猥な事を言う前に背後から、カンフーのような足蹴をお見舞いされた。そしてだらんと糸が切れた操り人形のように気を失い、仲間の人がずるずると気絶した人を引きずって退散していた。一体何を言おうとしたのだろう……?
「ごめんなさいね。あの人、銀髪フェチなのよ」
謝罪の言葉を発した人が私の前に立つ。なんというのか、ルックスのいいお姉さん……と言ったらいいのだろうか。胸と腰に甲冑を着て、肌を大胆に露出した女騎士――っぽいキャラだった。
「まあ、それは置いといて。貴方、私たちのパーティーに入りたいのかい?」
「はい。私、アタッカーなので応募に来たんですけど……」
その後、私は期間限定イベントのダンジョンの攻略に欲しかった攻撃アタッカーだという事を女騎士に伝えた。
「ほほう……。じゃあ、パーティーに入る前に軽く適性検査してもらおう」
「え、え? 適性検査ですか?」
いきなりの事で戸惑う私は女騎士に問う。
「あぁ、確認の為だ。弱いと今回のクエストをクリアできないのは知っているだろ? 攻撃アタッカーと言うならば、それほどの威力は持っていなければダンジョンに向かえないだろう?」
「そうですけど……、いきなり――」
「口答えするお子様は、悪いがパーティーに入れない。他のパーティーに当たってもらうしかない――」
残念そうな表情で、女騎士は淡々と私を切り捨てる言葉を発した。全く使えない……と女騎士は吐き捨てるようにパーティーの仲間と一緒にギルドを出て行く――
「ま、待ってください! わかりました。私の力は強いという事を証明して見せますッ!」
私は颯爽とギルドに出ていく女騎士を呼び止めて、力強く言った。
何がパーティーに入れないだ、ふざけやがって……! 初心者だけど、この嘗めた口調で言いがる女騎士に見せてやろうじゃない!
アンタを倒すぐらいの力があるって事を証明して見せるッ!!
「ふん……、そこまで強気で言えるなら見せてもらおうか!」
にたりと女騎士は笑い、ギルドの外へ出て行った。
(うわぁ……強気な事を言っちゃった。認められるかな……?)
私は内心恐怖に支配されながらも女騎士の後を追い、ギルドを後にした――
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