アーシェとVR③(冒険者登録して早速クエスト受けようとしたら、夜になって営みを始めました)→Byこの世界の神様
「ここがギルドか……」
おばさんに聞いた通りに行ってみた場所に、ギルドがあった。赤レンガ造りの大きな建物で、中に入るとワイワイと賑わっていた。
アスタリア王国にもギルドと言う場所があるけど、実際に入った事無いんだよな……。場所が違えど、入ってみると結構に賑わっているんだなぁー。アスタリア王国のギルドもこんな感じなのかしら?
「すごいなぁ……、何度でも言いたくなるほどすごく賑わっているなぁー」
キョロキョロと賑わうギルド内を見回す。入ってすぐに食堂で、奥に進むとクエストなどの受付所がある。しかし……VRゲームとは思えない程、精巧に作り込まれている……。食べ物の美味しい匂い、食堂から賑わう熱気……これが究極のVRとも言えるフルダイブ式のVRゲームなんだ。
SFアニメの事が現実になっている事に感激していると、ピコーンピコーンと着信音が鳴り響いた。
(なに……新着メッセージ?)
確認する為、『新着メッセージがあります』という通知表示をタップすると、ホログラムディスプレイが表示した。
「一体誰から――え、夏奈実くん?」
『よう、アーシェ。ゲームの世界には入れたか? 俺はギルド内にいる。場所はギルドに入って右端のテーブルに居るからな。夏奈実』
夏奈実くんもゲームに入れたんだ。なら、夏奈実くんと早く合流しないと……。
私はメッセージの言う通りに動いて夏奈実くんが指定した場所に向かうと、大和撫子のような黒髪ロングヘアの美少女が座っていた。
え……誰? 夏奈実くんはここに座っているって言っているんだけど、全く知らない人が座っているんですけど。お淑やかで凛としていて、ポニーテールにしているなんて……完全に刀剣女子でしょッ! 異世界やフィクションでよくあるキャラじゃん! しかも、めっちゃ可愛い桜柄の着物なんか着ちゃってさぁーッ!
「あ、アーシェ。やっと会えたな」
わ、私の事を知っているぅぅぅっ!? しかも、めっちゃ凛々しい女の声音だぁぁぁッ!! 本当に誰だよぉぉぉッ!!
「あ、貴方はいったい誰ですか……?」
「誰って、俺だよ。葵夏奈実だよ」
「か、夏奈実くん? 本当に夏奈実くんなの?」
「そうだよ。この姿見て俺以外の人物がいるか?」
……残念ながら、こんな美少女の姿になって夏奈実くんだってわかりません。
「――あっ、そっか。VRゲーム世界のキャラでやっているから、わかんねーのか……」
夏奈実くん?が、ポリポリと頬を掻く。
「アーシェ、疑っているなら俺とお前しか知らない質問しな。その質問に答えれば本物って信用できるだろ?」
「う、うん……。えっと……ね……、わ、私と初めてキスした場所……は……?」
キス――そのワードを言った瞬間、私はボンと頬を真っ赤に染めた。だ、だって夏奈実くんが知っている質問なんてこれぐらいしかないんだもん……。
「か、上御市の国道沿いにあるネットカフェ、店の名前はオールデイズ上御国道店……」
夏奈実くん?も、この質問に対して顔を真っ赤に染めながら答えた。確かに合っている……。それじゃ……この撫子少女は本当に夏奈実くんなんだ。
「正解――さっきは疑ってごめんね」
「あ……うん、ありがとう。先に自分のキャラを見せるべきだったな……」
ごめんと、軽く頭を下げて謝った。
「ゴホン……まあ、何とか合流出来た事だし、結果オーライだな」
夏奈実くんは、咳払いをして話を切り替える。まあ、こんな事でいちいち気まずい雰囲気に閉じこもりたくないし。
「早速だけど、アーシェの冒険者登録をしようか」
「冒険者登録?」と、私はオウム返しに質問する。
「初めてやるユーザーは冒険者登録をするんだ。まあ、ゲームで言えばチュートリアル説明みたいなもんだ」
「へぇ……じゃあ、それさえやっておけばゲームプレイが出来るって事なの?」
「そう。あの受付窓口に行って冒険者登録をしてこい。終わったら、ここで再度合流な」
「う、うん。分かった」
じゃ後で、と言伝を残して、私は冒険者登録しに受付の方へ向かった。
(よかった……まさか、あの美少女が夏奈実くんなんて。どう見えてもキャラ変わりすぎでしょッ! 一体なんでそんなふうにキャラ作れるのッ!? 私なんてそのまま素通りされたんですけどっ!)
なんて夏奈実くんのキャラが可愛すぎる点に嫉妬しながら、受付窓口に着くと若い女性が受付をしていた。私はその人に「すいません」と声をかけた。
「はい、今日はどんな御用でしょうか?」
「冒険者登録をお願いしたいのですけどー」
「はい、わかりました。では、冒険者登録の手続き書類を持ってきますので少々お待ちください」
そう言って、受付のお姉さんは席を立ち書類を探しに行った。
「お待たせしました。では、この書類の太枠部分をすべて書いてください」
数分後、受付のお姉さんが書類を持ってきて、私にそれを手渡した。
どれどれ……と貰った書類の中身を確認する。自分のニックネームの設定、年齢、誕生日と言ったネトゲで言う名前登録のような書類だった。なんだ……簡単な奴じゃないか。
(とりあえず……ニックネームはアイ、年齢は教えない、誕生日は五月六日と)
太枠の所をすべて書き込んで、「はい」と受付のお姉さんに渡した。
「冒険者登録の方、ありがとうございます。簡単に冒険者について説明しますけど、どうしますか?」
冒険者についての説明か……、ネトゲの方で冒険者やっているから説明はいらないや……。私は、はい、いいえ、という選択肢からいいえの方を選んだ。
「では次に、貴方に相応しい職種を自動で抽出しますので、この水晶に手をかざしてください」
受付のお姉さんが受付台の下から水色の水晶玉を取り出し、私は恐る恐るその水晶の上に手をかざした。
「わっ……!? ひ、光った」
水晶玉がちかちかと点滅して光り始めた。私は思わず目を瞑った。いきなりのフラッシュなんて聞いていないぞ……。
「はい、終了しました。手を離しても構いませんよ」
え……意外と早い……。こんな短時間で職業を自動で検索できるの?
「えっとですね……ステータスを見ると俊敏性が高いです。アイさんに相応しい職業は――剣士、ブレイドマスターが一番だと思いますね」
剣士……。そういえば、私のネトゲアバターも剣士なんだけど、VRでも同じ職種になった事って偶然なのかな? まあ、そんな事はどうでもいいか。私、何故だか知らないけど剣の腕筋がいいって女神学校で言われた事あるんだし……。
「あ、はい。じゃあ、職種は剣士でお願いします」
「わかりました。それでは剣士で登録しますので、少々お待ちください」
私は「はい」と頷いて、登録手続きが完了するまで受付窓口で待った。これって、ゲームの初期ロードみたいな感じかな? まあ、終わるまで待って居よ……どのくらいかかるんだろう?
「お待たせしました。冒険者登録が終わりましたので、設定画面のステータスから登録が反映されているかご確認ください」
数分後、受付の人が手ぶらで戻ってきて、受付のお姉さんの言われた通りにホログラムディスプレイを開いて設定画面のステータスをチェックする。
「ニックネーム……アイ、職種……剣士、レベル……一、俊敏性は一〇、攻撃性、防御性、身体性、体力性はオール四……。はい、反映しています」
「ご確認ありがとうございます。これですべての登録が完了しました。クエストをやりたいと思ったら、窓口隣にあります掲示板の張り紙をご覧ください。では、冒険者として頑張ってください!」
「は、はい」
歓喜な声を上げた受付のお姉さんの姿に、私は思わず吃驚してしまった。そして軽く頷いた後、ささっと逃げ出すように夏奈実くんが待つテーブルの方へ戻った。
「おーいアーシェ! 登録終わったかー?」
夏奈実くんのキャラである少女が、手を振っていた。
「うん。終わったよー」
本当に夏奈実くんなのかな……? 本人の姿じゃないから、よくわからないなぁ……。ゲームの世界だし、キャラや性別を変える事できるから仕方ないけど。
「よーし、早速寝るか!」
「うん、わか――はいぃっ!? ね、寝るぅぅぅっ!?」
な、なに言っているんのッ!? これから盛大な冒険譚が始まるんでしょ!? 冒険者登録してすぐに寝るなんて、ちょ……おかしいでしょッ!!
「うん、寝る。だって外見てみ、もう真っ暗だぜ?」
私はちらりと近くにある窓の方へ一瞥すると、外の景色が闇色に染まっていた。
え、このギルドに着いた時には、明るかったのにもう夜なの!? 早くない!? 普通ならリアルタイムじゃないの!?
「なんで? もう夜なのか!?」
「なんでって、このゲームはリアルタイム式じゃないんだよ。まあ、ゲーム世界で一時間やったなら、現実世界では一五分しか進んでいないんだ。要は、ゲーム世界と現実世界の時差があるって事」
「時差がデカすぎないか……?」
だって、ゲーム世界一時間で現実世界は一五分でしょ? まあ、現実世界とゲーム世界に比べたら時の流れが遅くなっているのが分かるけど……あぁッ! ややこしい! なんでリアルタイム式のゲームじゃないんだよッ!! そうすれば、感覚が分かるのにっ!
「まあまあ……俺だって最初は不慣れだったけど、やっているうちになれるから」
……まあ、とりあえず。時間の事はいったん忘れよう。こんな事ばっかり考えていたら集中できなくなる。
「……分かった。夏奈実くん、宿泊施設は何処なの?」
ネトゲでもそうだけど、確か寝泊まりする場所があるのを思い出した。休んで次の日冒険に行く――なんてテンプレな話だけど……。
「あぁ、案内するから付いてきて」
「う、うん……」
私は夏奈実くんのキャラの後を付いて行った。
「そういえば、夏奈実くんのキャラってなんなの?」
夏奈実くんに質問する。ずっと気になっていたんだけど、なんで撫子美人のキャラなの?
「うーん……キャラの自動作成時にこれになったんだよ。まあ、俺ってこういうキャラになるのがちょっと憧れだったんだ……」
「へぇー夏奈実くんって、清楚系の黒髪の子が好きなんだぁー」
にやにやと私は夏奈実くんの傍によって、揶揄うように言った。
「ま、まあそうだけど……ア、アーシェの方が一番好き……かな? 今では」
なっ……と思わず、顔を真っ赤に染めた。夏奈実くんの口からそんな言葉が出るなんて……嬉しい、本当に嬉しい。
「ありがとう、夏奈実くん」
ぎゅっと私は夏奈実くんの腕を抱きしめた。
「な、あ、アーシェッ! ちょ、腕に抱きつくなッ! む、胸がッ!」
あっ……そこはちゃんと意識するんだ。
「いいーじゃん! 女同士なんだしー、スキンシップしようよー」
「体は女でも、頭脳は男なんだよッ! もうやめてくれッ! これ以上胸をくっつけるなぁぁッ!!」
「えーやだぁっ! 女の子同士、スキンシップしようよー」
なんて百合のようなやりとりをしていると、「ほら、着いたぞ」と夏奈実くんが照れながら言った。
木とレンガの造りの建物で、中に入るとワイワイと酒を飲む客で賑わっていた。なるほど……下が酒場で上が宿泊施設かぁー、異世界やゲーム世界でよくあるテンプレな施設だな。
なんて夏奈実くんの後ろを付いてキョロキョロと施設を眺めると、奥のカウンターに着いた。ここで宿泊の受付をするんだ……まあテンプレだね。異世界やゲーム世界ではね。
思わず酒場の風景に見入っていると、夏奈実くんはカウンターの方へ行き受付の人に声をかけた。
「すいません、今日部屋空いていますか?」
「何名様でご宿泊ですか?」
「二人です」
「あっ……申し訳ございません。ただいまシングルベット二つの部屋がちょうど満室になっておりまして……申し訳ないのですが、ダブルベッドの個室が一部屋空いているんですよ。そちらでもよろしいでしょうか」
「……ダブルベッド?」
「はい、ダブルベッドです」
あれ……なんか夏奈実くんの表情が険しくなったり、恥ずかしくなったりしている。空いている部屋、あったのかな?
「じゃあ……その……その部屋でお願いします」
「ご理解ありがとうございます。それでは、お部屋の方までご案内します」
やりとりが終えたのを見て、私は夏奈実くんの方へ向かった。
「夏奈実くん、部屋は空いていたの?」
「まぁ……空いているんだけど、うん。ちょっとな」
一体、なんで真っ赤な表情をしているんだろう? もしかして、ネットカフェの部屋みたいにラブラブ個室じゃないだろうね……。
「どうぞ、お入りください」
いつの間にか、部屋の前にたどり着いた私たちは早速部屋に入った。
「えっ……これってまさか……」
部屋に入ってすぐにベッドがある。そのベッドはダブルベッドだ。つまり、夏奈実くんと一緒のベッドで添い寝する事になる。
「すまん……アーシェ。他の宿もみんな満室で、唯一この宿のこの部屋しか空いていないんだって……」
申し分ない……と、ちょっと暗い表情で謝り始める夏奈実くん。
「へ、へぇーそ、そうなんだぁー」
……恋の神様よ、これは試練なのか? なんで、親密な関係になれる環境の部屋ばっかり当たるの? ヤれってか? 私と夏奈実くんの夜の営みをやれって言うのか?
「では、ごゆっくり――」
受付の人がぎーっ……とドアを閉めた。
「まあ、空いている部屋があってよかったね……うん」
「そ、そうだなアーシェ」
私と夏奈実くんはドスッとベッドの上に座った。流石に疲れた……今日はずっと歩いていたから、太腿が痺れる。ゆっくり休んで明日に備えよう。
「ふぅーやっぱベッドは快適だぁー」
ごろんと、夏奈実くんは早速ベッドに寝転がった。
「おっ! 一段と反発力が凄いな、このベッド。めっちゃ気持ちいい」
え、どれどれ……もふもふとベッドを押す。ほんとだ……反発が凄いし、生地の肌触りも癖になるほど柔らかい。
「ふぁーっ……ほんと、ベッドが気持ちよくてすぐに眠れそうだ」
「だね……」
「あ……ふぁ……っ、なんか眠くなってきたなぁ……アーシェ、先に寝る。おやすみー」
「おやすみー」
夏奈実くん、ギルド内にずっといたのかな? それとも私を探していたのかな? 寝るのが早いわッ!
「すぴぃーすぴぃー」
本当に寝るのが早いなぁ……私はあんまり寝付けない体質なのに……。理由もなく、私は不意に夏奈実くんの髪の毛を触れた。髪が絹糸みたいに柔らかい。女の子なんだから、神が柔らかいのは当然か。
「――――」
……ごくりと唐突に口の中に溜まった唾液を飲み干し、私の中に眠る淫らな気持ちが沸き上がった。これはチャンスではないかと……私はそう思った。寝ている男子(もしくは女子)に襲うのは、エロゲのテンプレではないか。
……プールの時には夏奈実くんの強い意志で出来なかったけど、これだったら行けるかな? 初めての――行為……。
ドッドッドッドッ……と心拍数が跳ね上がる。いいのか、しても……?
――いいんじゃないか? どうせVRゲームの世界だし、現実世界でしたという事にはならないさ!
と言う悪魔のささやき声が聞こえた。そうじゃないか……フルダイブ式のVRゲームだから、現実世界での体への負担は無いよな。それじゃ……早速やって――
完全に淫らな気持ちに浸食された私は寝ている夏奈実くんの顔に近づき、唇を重ねた。
「うむっ……ん……」
いきなり大胆過ぎたか? まあいい、夏奈実くんが起きなかったことだしキスを続けよう。
「うむっ……ん……ふへぇ……あぁ……」
私はひたすらキスを続けて、夏奈実くんの体にやましく触れる。
「……ん、あっ……はぁ……」
熱い吐息を吐き、夏奈実くんに欲情する。これだよ……私はこんな風に求めたかったんだ。
「ん……? あ、あーふぇッ!?」
あらあら……夏奈実くんが起きちゃった。まあ起きちゃったんなら、もっと激しくできる事だよね(多分違います)。
ぷはっと、夏奈実くんの唇を離し、しゅるりと上半身を纏っていた服を脱いだ。
「いいの、夏奈実くんはじっとしていて」
そのまま淫らな気持ちを解放し、夏奈実くんをぱくりと捕食した。
レ〇という夜の営みはこれから始まるんだ――
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