アーシェとネトゲ⑤(モンスター退治前)←ヤバすぎるパーティーなんですけどぉぉぉッ!!By夏奈実
パーティーに入って一時間が経ち、私たちは早速期間限定イベントのダンジョンの探索に向かった。
再度ダンジョンの中に入り込むと、ひんやりとした空気が流れ込んで外にいるよりも涼しく感じる。何度も入ったからもう慣れっこだけど、相変わらず不気味な空気が漂っている。
女騎士と私が先陣に立ち、他は後で追っていく。ランタンを手に持って、ダンジョンの奥地へ向かっていく。
「私たちのパーティーは十層の内、六層までは攻略出来た。けど、七層に入ってから敵が強い、コンティ不可能の条件が難しくてバトル離脱するしかなかったのよ」
「んー、そうなんっすか……」
「アーシェは前のパーティーに居た時は、何層まで行けた?」
「うーん、前のパーティーなら七層の終わりまで行けたっけ……?」
確か、思いつく限りではパーティーに入る前にゴリ押しで七層のモンスターをぶちのめしたんだよね。まあ、体力ゲージ真っ赤だったけど……。そんな苦々しい事を思い出していた時、いきなりパーティーメンバーたちが円形になって私を逃がさぬように囲っていた。
「え、え、え? な、な、なにぃぃっ!?」
「ど、どうやって攻略したのッ!? 私たち、そこでいつも突っかかっているのよッ!!」
「え、えっとーあの層のモンスターはヒーラーの回復と強力アタッカーさえいれば攻略できますよ……。今の私たちのパーティーなら……」
「えええええええええッ!? そ、そうなのっ!? ――って事は、突破できなかったのはアタッカー不足……?」
「かもしれない……。まあ、今の私たちのパーティーなら簡単に突破出るかもしれないです」
「おおおおっ! その話を聞く限り、七層モンスターを倒せるな!」
「え、まあ……そうっすね。その代わり、ヒーラーさんは後方でアタッカーたちの回復に回ってもらえれば、アタッカーメンバーは死なないで勝てると思いますよ」
パーティーメンバーの喰いつきに、私は少しだけ攻略方法を教えた。まあ、参考になるかは知らんが……。
それを聞いたメリサは、パーティーの仲間に「聞いたかい?」と質問した。
「ヒーラーのみんな! さっき言ったとおりに動きなさいよ! 死んだら見捨てるからなッ!」
「応ッ!」
やる気あるなぁ……と内心で呟きながら、パーティーメンバーの様子を見ていた。
「じゃあ、アーシェ。七層の指揮はアンタに任せるわ」
と、メリサはとんでもない発言をした。
「え、えええッ!? し、指揮ですか? なんでぇぇッ!?」
「だって、一様攻略できたんでしょ? なら知っている人の方が、指揮をしてくれれば進みやすいじゃん?」
「確かにそうですけど……、私に指揮を執るなんて……そんな大役任せられませんよ……!」
そうだ、私はまだ始めたばかりの超初心者だ。なのにいきなりの大役を任せるなんて荷が重すぎる。だからもう一度、断りを入れた。指揮するなんて向いていない……って。
すると、メリサはなははっと笑い始めた。
「気にするなって! このゲーム始めた時からやっているけど、私だって指揮するのは向いていないってよく言われていたからさ!」
「ふえ? そうなんですか?」
「まあね。今でもよく言われるけどね。まま、そんな話は置いといて――大丈夫だって、一応私がフォローしておくからさ!」
ここは普通過去を語るべきじゃないのか……? まあ、いつも小説を読んでいる限りでは共感するだけであとはスルーされるのがオチだ……。まあ、正直メリサの過去話はどうでもいいけど。
「え、じゃあよろしくお願いいたします」
「よし、決まり! ささ、早速七層を攻略しよーう!」
と、張り切りのある声を言い、首を絞めつけるように私を引っ張った。
「いででででっ!? ひ、引っ張らないで下さあああいっ!?」
(えぇ……なんなの、この人……出会った時のテンションの温度差が違うんだけどぉぉぉッ……)
余りのキャラ変貌っぷりのメリサの姿に、私は困惑してしまう。……一体、どっちが本当のメリサなんだろう……?
「ささ、早く攻略して八層に向かおう!」
「ちょ、引っ張らないでくださいよおぉぉっ!!」
そのコントを見たアリスは、はあとため息をついた。
「またいつもの癖が出ているなぁ……。リーダー……どっちが本当のキャラなんだろう?」
キャラの分からないメリサの姿を見て、仲間はメリサと私の後を追った。
「ここなんだよ……私たちが突破できないモンスターは」
一層から七層まで一気に下ってきて数十分後、メリサが言う攻略できないモンスターが棲む場所に着いた。
「――って、この場所って最終モンスターが生息する場所じゃない!?」
見た事あるなーって思っていたけど、間違いない。前のパーティーで攻略した七層のボスモンスターが生息する場所だ。確か、コンティ不可能で死んだら一からやり直し――ちょっと高難易度のモンスターと聞いている。
「なあ、アーシェ。ここの攻略方法、どうするんだ?」
メリサが質問する。
「えっと……私の場合はアタッカーメンバーが攻撃して、ヒーラーが後ろでアタッカーメンバーの回復を行うって感じでしたね。まあ、ヒーラーの回復量が少なすぎて死にかけたけど……」
「フムフム……なるほど、よしヒーラーの皆! 回復魔法を切れる事の無いようにしろ! 特に私とアーシェのアタッカー組に重点的に回せッ!」
「応ッ!」
と、パーティーメンバーは返事する。何処かのヤクザかよ……。
「任せてください! 私たちのサポートで勝利に導いて見せるっすよ!」
背後に居たアリスも、張り切りある声で言う。そういえば、アリスっておどおどしたキャラじゃなかったっけ……?
「見て驚いただろう? 私のパーティーはヤクザみたいにしぶてぇんだ」
なんて、アリスの様子を伺う私に対してメリサは胸を張って威張った。
「その割には、一度撤退したじゃないですか……」
「む、痛いところ付かれちまったな。けど、もう同じヘマはしねぇぜッ!!」
気合を込めた声音を発するとともに、背中に帯刀した二つの剣を抜いた。大きいなぁ……私じゃ両手で持てないよ、メリサが持つ剣は……。
「行くぞッ、アーシェ! あのモンスターをボコボコにしてやろーぜッ!!」
その声と共に、メリサはモンスターの方へ突撃していった。
「うへぇ……本当に熱い人だなぁ……」
なんて呟くと、ぽんとアリスが私の肩を置いて説明し始めた。
「まあ、いつも通りの事だから。とにかくうちのリーダーは、熱いキャラで思いつきで向かい出す勇者体質みたいな人なのよ……」
「そうなんですか? まあ、でも見ていると本当に熱い人……」
「その性格のおかげで、本人曰くしぶといキャラって言われているっぽいけど。まあ、その人に付いて来る私たちも相当しぶといキャラだけどね……」
「へぇ……そうなんだ」
「おい、アーシェッ! 何もたもたしているんだ!? 行くぞッ!」
と、お喋りはここまでのようだった。まあ、もう一度あのモンスターを駆逐してきますか……。
「りょーかい! 私にかかれば数分でぶっ殺せるぜぇぇぇッ!!」
咆哮のような声音で言って、私も熱いキャラになりきったつもりでメリサの後を追った。
「「くたばりやがれえええええええッ!! このクソモンスターがああッ!!」」
二人の咆哮をモンスターの住処である洞を響かせると同時に、私たちは攻撃を仕掛けた!
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