アーシェとデート!?編⑧(時間余ったのでアーシェが行きたい場所に行ったら、まさかのコスプレ店でした。後編)

「ア、アーシェ!? なんでこんなところに!?」


 パチパチと瞬きする。あ、アーシェが……エ○○アたんのコスプレをしている!? それもコスプレイヤーの撮影イベントショーに!? い、一体どうなっているんだッ!


「えー続きましてエントリーナンバー二番、れおちぇるちゃんです!」


「はーい皆、元気!? れおちぇるちゃんだよおっ! 今日は、鬼○の〇のカ〇ヲコスだよぉぉ! どー? 可愛い?」


「「「可愛いいいいいいいいいいッ!! ハスハスッ!!」」」


 一瞬にしてヲタクが、一心同体に叫んだ。すごい……思わずドン引きしてしまう程だ。


「えー続きましてエントリーナンバー三番――――――」



 こうして、どんどんと飛び入り参加者がステージに並んでいく。しかしまぁ……メイクやら衣装やらすげぇな……、アニメキャラが使う小道具と普通の人がつけている何気ないヘアピンまで……。実際のキャラクターが飛び出しているみたいだ。


「――――しかし、アーシェ……エ○○アたんのコスプレ、どうしたんだ?」


 可愛いけど、まず疑問が頭によぎった。

 一体、何処からエ○○アたんのコスプレを入手したんだ? アーシェの小遣いは少ないのに……まさか、盗んだのかッ!?

 

 アーシェ……何やっているんだ! 見損なったぞ! いくら貧乏でだらけた生活を送っていたからって、物を盗むなんてよぉぉぉッ―――――――なんて、冗談。


 アーシェは小遣いが少ない時でも、物を盗むような輩じゃないのは分かっている。


 ――じゃあ、なんで?


「飛び入り参加の皆さん全員が登壇したので、これより撮影会を始めたいと思いまーす!」


 司会の人がそう言うと、周りの人たちは鞄などからデジカメや一眼レフカメラなどのカメラを取り出した。スマホのカメラを使う人もいるが、数は少なかった。モデル撮影会みたいに本格的なカメラを使用するんだな……。フラッシュ撮影用の照明灯を持ってきている人だっているし……すげぇ!


「えー撮影する皆さま! 本来はこのイロンモールは撮影禁止ですが、今回は特別に夏風館のみ撮影許可を頂いております! 夏風館以外の棟、夏風館の出入口は撮影禁止です! この夏風館内のみ撮影を行ってください!」


 カメラマンたちなどへ向けての注意放送が流れる。まあ、普通はそうだよな……。撮影するときもマナーを守っていかないとダメだもんね。


「また、過度な撮影、長時間撮影、被体者が嫌がるような行為は禁止です! もし、そのような行為を見かけた方は即スタッフに連絡してください! また、夏風館を利用するお客様の通行を妨げるような行為は絶対にしないでください! 皆様のご協力をお願いします!」


 なんて聞き流し、俺はコスプレイヤーさんを撮影する前にアーシェの方へ向かった。


「お、アーシ――ェ……のわっ!? な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁッ!!」


 アーシェのコスプレ撮影場所に着くと、想像を絶する光景が目に広がった。


「なななななっ……何じゃァぁぁッ!? この長蛇の列はぁぁぁぁッ!?」


 そう――想像以上にアーシェの撮影場所に長蛇の列が待ち構えていた。


「ど、どうすればいいんだ……!? これじゃあ、アーシェに近づけない……」


 くっそ……こんな長蛇の列でアーシェの所へ行くのか? 絶対時間かかるだろ……! それとも普通に近づくか……? それだと割り込みだって言われそうだしなぁ……。どうするべきだろうか……?


(アーシェが心配だ。とりあえず、アーシェの所へ行こう)


 優先とかそう言う事よりも、アーシェが心配だ。変なヲタクに絡まれていないだろうか――万が一のために対処しておかないとならないよな……。

 そう選択した俺は、先頭にいるアーシェの方へ向かった。



「はーい! こちらアーシェちゃんの列でーす! 二列に並んでくださーい! 列から外れた人は最初から並び直してくださーい!」


 先頭の方へ近づくと、スタッフがカメラマンなどを誘導していた。


「え、えへへへ……ぴ、ぴぃ~~す!」


 にこやかな表情でポーズを決めるアーシェ。それを見た瞬間に、バキューンと目玉が飛び出しそうになった。


(か、かわっぇえぇぇぇぇぇぇええええええええええええぇぇぇぇええええぇぇぇぇえええぇぇぇぇっ!!)


 な、なに……この恥じらう天使か!? 赤らめた表情して、写真を撮る際のちょっと緊張感が出た声音――初心者コスプレイヤーあるあるな行動をしているアーシェがめっちゃかわえぇぇッ! マジでお持ち帰りしたい! やべぇ……かわわわわわわっ……。もう語彙が出て来ない。さっきから心臓のバクバクがおさまらない! こ、これは――後回しにするべきか? ここに居たら、可愛すぎる死にかかって死んじゃおうよぉぉぉッ!!


(※あくまで個人の意見です。他人の考えとは異なります)


 ドドド、どうしよう……マジで悩むんだけど。後回しにしようかな……? しかし、アーシェの事も気がかりだし……。


(えぇい! 心配だから行こう! クレーマーに言われる覚悟でッ!)


 覚悟を決めた俺は、ずんずんとアーシェに近づく。


「えーお客様、割込みはご遠慮ください!」


 早速、アーシェを管轄するスタッフに止められてしまった。


「す、すいません! 彼女のスタッフです! ちょっと彼女に会わせてください!」


 とりあえず、俺はスタッフを装ってスタッフに説明する。


「ハイハイ、迷惑な人はそう言うんです。さ、早く後方に行きなさい」


「ちょッ! アーシェッ!!」


 スタッフに押し返される中、無我夢中に彼女の名前を叫んだ。


「あ、夏奈実くん! ちょっとごめんなさい!」


 カメラマンと一緒にツーショット撮影をしていたアーシェは一緒に撮影していた人に軽く謝った後、俺の方へ向かってきた。


「夏奈実くん!」


 アーシェは再開を喜ぶような表情で、いきなりギュッと俺に抱きついた。むぎゅぅぅ……あ、アーシェの豊満な胸が俺の胸に押し当てられて……む、息子がぁぁぁ!!


「あ、あ、アーシェ……ちょ、急に抱きつくな……!」


「夏奈実くぅぅん~~ごめんねぇ~~色々あってぇ~~」


「ちょ、アーシェ! ぶりっ子ッているんじゃねぇーよ!」


 怒鳴ったもののアーシェの可愛さに怒りが収まって、はぁ……と溜息を溢してアーシェの頭を撫でる。


 ――その時、異常な寒気と殺気が全身に突き刺さった。


「「リア充シネ、リア充シネ……可愛い天使の彼氏……」」


 うわぁ……ヤバい、ヲタクたちの怨念が忌々しく聞こえるんですけど……。


「あぁ……いやぁ……そのぉ……」


 どうしよう……この気まずい空気。どう説明すればいいんだろう?


「ちょっと、アーシェちゃん! 撮影中に抜け出しちゃダメでしょ!?」


 眼鏡をかけた女性がアーシェを呼びながら、こちらの方へ近寄ってきた。


「すいません……」とその女性に対してアーシェは謝る。


「もう……。さて――君は?」


 俺の方に視点を向け、質問してきた。


「えー、葵夏奈実です。その――アーシェの彼氏?です」


「――か、か、彼氏ぃぃぃっ!? 二次元美少女キャラのようなアーシェさんの彼氏ィィ!?」


「うおぅ!?」と彼女の驚きの声で、俺も驚いてしまった。


「ふにゃぁ~~彼氏がいるなんてなぁ~~いいよなぁ~~アーシェちゃん」


 うねうねと腰を振りながら、俺達を見つめる女性。うわぁ……気持ち悪いんですけど……。ちょっと、ドン引きしたわ――これ。


「えっと……アーシェ、この方は?」


 ドン引きはしたけど、一体何者なのかアーシェに質問した。


「私をメイクしてくれた人」


「え、そうなの?」


「えぇ、私が彼女をメイクした人・レイベルよ! よろしくね」


「あ、どうも……」とぺこぺこと頭を下げた。


(それにしても、美しい女性だな……メイクしているからか?)


 じっくりとレイベルさんを見つめる。質素な感じだけど、なんでこんな美しいんだ? 


「むすぅ――」


「ん……いででででっ!?」


 な、なんだ……耳を引っ張られて――って、アーシェが引っ張っているの!?


「別に……私と言う超絶可愛い彼女がいるのに、なに惚れているのかな~~って」


 げっ……アーシェの奴、妬いているのか? すっごい睨んでくるんですけど……!


「すいませーん! そろそろ撮影の方を再開していただけませんかぁ~~?」


 スタッフの人がそう言う。あっ……カメラマンやヲタクが待っているじゃん。


「はーい、すいませーん! これから撮影再開しまーす! カメラの準備してくださーい」


 レイベルさんが長蛇の列の人たちに向けて呼びかけた。


「――アーシェ、撮影に戻りな」


 俺はアーシェの背中を押して、撮影場所に戻るように促した。


「うん、行ってくるね!」


 こくりと頷いて、アーシェは撮影場所に戻って行った。


「あぁ……どうしよう。これから……」


 沙耶からの連絡は来ないし、アーシェは撮影タイムで忙しいし……俺はどうしようかな?


「おう、彼氏クン! ちょっと手を貸して貰ってもいいかね?」


 悩んでいた矢先、レイベルさんが俺の肩を掴んでいってきた。


「え……えぇ……まあ、いいですけど」


 どうせ暇だし、アーシェの撮影タイムが終わるまで手伝うか――



「じゃあ、早速――――――」

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