アーシェと沙耶のプール遊び!⑪(エピローグと新たな刺客!)→新キャラクター登場だって? 私のポジション奪うんじゃないでしょうねぇ←Byアーシェ

 あの後、俺はアーシェたちと一緒にプールでぐったりするまで遊びまくった。まず沙耶と部活仲間と一緒に練習も兼ねた競争。


 次に、ビーチバレー対決。最初はまったりとした感じでやっていたんだけど、それじゃつまらないと沙耶たちが抗議した。その結果、負けた二組は夕飯全部奢るという賭けをして、金欠に悩む学生にとって熾烈な戦いの火蓋が切って落とされたのだ……。


 ――で、勝負の結果。俺と奈都ちゃんペアが勝ち、沙耶と光季ちゃんペアは負けて今晩の夕飯代を二人で割り勘してゴチになりました。


 あの、上御リゾートプール名物・ブラックペッパーラーメン(六五〇円)が喰えただけで満足だ。あのラーメンは、鶏と豚骨を二週間じっくり煮込んで作った醤油ベースのスープと後入れに市販の胡椒瓶一つをぶちまけた、まるでブラックホールに吸い込まれたかのように真っ黒に染めているのだ。まあ、食レポはここら辺で終わりにしよう。長く語れば、困惑してしまうからな(読者様に)。



 夕飯を食べ終えて少しだけプールサイドの方で遊んだ後、車で沙耶の部活仲間の家へ送り届けるとともに自宅へ向かった。


「すぴーすぴ……」


 後部座席に座っている沙耶たちは遊び疲れたのか、ぐっすりと寝ていた。正直言って、羨ましい。だって運転手である自分は、遊び疲れても運転という仕事が残っているのだ。


「あーくそ……後部座席の奴らがうらやましい……」


 くちゃくちゃと眠気覚ましのガムを噛みながら、愚痴り夜の道路を運転していた。両端にあるガードレールに擦らないように慎重に車を進める。……ホント、嫌な道だ。

 上御リゾートプールの場所はかつて農道だった。そのせいなのか、プールの駐車場や国道へ通じる道は薄暗い街灯しか明かりが無く、一車両しか通れない。幸いな点は、舗装されている事だけ。夜の運転が苦手の俺にとって、最悪な道路条件で困ったもんだ。


「……アーシェ、起きているか?」


 掛け声とともに、助手席に座っているアーシェをちらりと一瞥する。こくりこくりと瞼を重くなりかけていたところ、俺の声に反応して


「……ん? ふあぁぁぁぁ……ッ!?」


「あ、ごめん……寝ていたか?」


「うん……ちょっと眠い……」


 まあ、出会ってから殆ど家から出ないアーシェがプールに行ったんだからな。遊び疲れが出てもおかしくは無いか……。


「アーシェ、今日は楽しかったか?」


 親子がいつもやっているような、さりげない質問をアーシェに問いかける。


「うん、楽しかった!」


 夜道に光る街灯を背景に、彼女は天真爛漫な表情で答えた。夜空に散らばった星のようにキラキラと輝いて見えて――


「…………そうか」


 アーシェの奴……最初はめんどくさいって言うと思っていたけど。なんやかんやで楽しそうに遊んでいたじゃん。まあ、今日は沙耶に感謝しておかないとな……。こういう機会、俺には無いもんなぁ……。俺もこういう場所、あんまり行きたくない人間だから。


「ふわあぁぁぁぁぁぁ……。ごめん、家に着いたら起こし――て――――」


 大きな欠伸をした後、アーシェはそのままぐっすりと寝込んだ。……早いな。これが自堕落を極め、運動をした後の眠りか。ほんと、アスタリア王国の事を忘れて呑気に暮らしやがって……。


「はよ、アスタリアに帰れ。自堕落女神」


 俺はアーシェが寝ている事をいいことに、こっそりと陰口を叩いた。





      ※




「ここね……アーシェが消息を絶った場所というのは」


 上御駅前の複合ビルの屋上に、金髪のお嬢様口調で喋る女性の姿があった。

 びゅーと強く肌を突き刺すような冷たい風が吹き、金髪のロングヘアが優しく靡く。この国は、アスタリア王国の風の方よりも空気が澄んでいるわね……。


「綺麗――――」


 この街の夜景に見惚れて、息をする事さえ忘れてしまった。赤、白、緑、橙……宝石を散りばめたような光が美しく真っ黒な夜空を彩る。


「アーシェ……こんな綺麗な場所に見惚れてしまったのかしら?」


 なんて言いつつも、私もこの美しい風景に見惚れてしまっているけど……。ほんと、アスタリア王国には無い、この光は一体なんだろう? 


「まあ、それはいいとして……」


 ビルの屋上に設置した柵を乗り越え、再度この街を見下ろした。


「全く……勇者一緒に探そうとお願いしてきたのに、一方的に探すのを止めるなんて女神としてどうなのよ……。あとでバイト代金、請求させるからね!」


 そこにアーシェがいるかもしれないと……そう思いながら、私は真下に蠢く人影に向けて発した。


「諦めない彼女が、なんで消息を絶ったのか……その謎を突き止めてやる!」


 ふぅ……と息を吐き、私は彩る夜の街に向かってビルの屋上から下へ飛び込んだ。


「待っていなさい、アーシェ・アーガリア。この私、クローネ・アイビンが貴方を探し出して見せるわ!」


 かっこいいセリフと共に、女性――クローネが華麗に宙を舞う。まるで新体操のバク転のフォーム。儚く青白い月から発する月光のスポットライトが、彼女を美しく魅せる。もしこれが競技しているなら、ほぼオール十点と良い評価と言えるだろう。

 そして地面に着地した――その瞬間、パアアアアアアアアアアアアンッ!!という音と衝撃が全身に走った。


「え……な、なんでええええええええええええええええええええええええええええッ!!」


 着地しようとした地点に走行する物体に接触し、派手に数十メートル吹っ飛ばされた。


「このアイビン王国を授かる女神の私を跳ねようなんて――覚えておきなさいッ!!」


 悪役がフェードアウトする直前に言い残す台詞を吐き捨て、きらりんと星の彼方へ消えていった――

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