アーシェとデート!?編⑤(まるで俺達の関係を表しているかのような恋愛映画をアーシェと一緒に見ました。 後編)【PG12】
なんてストーリーの今後の展開がどうなるのか想像を膨らませていると、早速レイシアが自堕落な生活から始まった。異世界からやってきた騎士だが、ゆいちくんの家に居候生活が始まると堕落騎士になってしまったという前置き説明を語り始めるゆいちくん。
(――あれ、俺こんな展開って何度も見た事あるような……?)
この映画の原作ストーリーを見た事も読んだ事も無いのに、デジャヴのような感覚だ。一体何処なんだ……? 俺は、何処でこんな予測できるようなストーリーを知っているんだろう……? まぁ、いいや。とりあえず続きを見てみよう。
なんやかんや自堕落な生活を送っていたレイシアは、ゆいちくんに惚れてしまいます。そしてある日の事、レイシアは――
『なぁ……ゆいちくん』
『なんだ、レイシア』
『その……ゆいちくん、わ、私と一緒にデートに行かないか!』
『……ふぉわっ!?』
顔を真っ赤に染めながら、驚きの声を上げるゆいちくん。予測できない事が起こって驚いたのだろう……。
『どどどど、どういう風の吹き回しだよッ! れれ、レイシアがでで、デートにささ、誘うなんてッ!!』
ゆいちくんは、仰天した表情でレイシアに質問する。
『な、何だっていいでしょッ! 私は……その……、ちょっとマンガ読んでみてデートってどんなモノか確かめたいだけなのっ!』
『……そ、そうなのかー。じゃ、じゃあ、空いている日にでも――』
『…………今から』
『え?』
『い、今から行きたいのよッ! バカッ!』
『おわっ……!? い、今からっ!?』
『そうよ、今からよッ!』
レイシアは頬を紅潮させて、ピシッとゆいちくんに向けてピシッと指をさした。
『それとも何かデート以外の用事でもあるってわけ?』
おお……何か強めにデートに行かせようと攻めていくね、レイシアちゃん。ゆいちくんが結構焦っている。まさか――用事があるのか?
『――んんっ………………いや。特に予定は無いけど……』
『それじゃ、決まり! 早速行こう!』
『お、おう……わかった』
了承の相槌を打ち、デートの準備を始めるゆいちくん。
(いっつも、オンラインゲームばっかりいしているレイシアがデートするなんて――どんな風の吹き回しなんだ?)と、いつもと違うレイシアの姿に違和感を内心で呟く。
なんやかんやで、デートを始めた二人。最初にイチャイチャ食事デート(うどん屋)をしている。
『なぁ……レイシア。食事デートって、うどんでよかったのか?』
『ま、まぁ……うん。わたし、うどん以外思いつかなった』
(まぁ、うどんなら低コストで食事できるからいいんだけどね……)と、少しお金にやさしいことに喜ぶゆいちくんであった。
次にデパート併設している遊園地デート。とりあえず、最初は絶対行きそうなランキング一位だと思うジェットコースターに乗るゆいちくんとレイシア。ギャーッと叫びまくるレイシアと失神しかけるゆいちくん。そしてジェットコースターを終えた後、気絶したゆいちくんを近くのベンチまで運ぶレイシア。
『ううん……んん、う……』
レイシアは気絶しているゆいちくんを膝枕して、彼の顔を近く寄せる。
『あ、起きた。大丈夫?』
『……ん? どわっ!? れ、レイシアッ!? あれ……俺は一体……何を……?』
『ちょっと気絶していたのよ。あんた、ジェットコースター苦手なら先に行ってくれればよかったのに……』
『いや……苦手っていわけじゃないけど……。まぁ、とりあえずありがとうな。ここまで運んでくれて』
『あ、うん……』
頬を真っ赤に染めるレイシア。『どうしたんだ』とゆいちくんは問う。
『な、何でもないわッ! つ、次はコーヒーカップにのろーよ!』
照れるレイシアは起き上がったゆいちくんを引っ張って、ジェットコースターから数メートル離れた位置にある『くるくる!?コーヒーカップ!』乗り場へ向かった。
『ひゃっほーい! グルグル回るぅぅっ!!』
グルグル……グルグル……ゆっくりと回り始めるコーヒーカップ。レイシアはめっちゃ楽しんでいる様子だが、ゆいちくんはチーンとおりんの効果音を響かせて完全に気絶していた。これって……多分、回るコーヒーカップに乗っているうちに酔ってしまったというパターンだろう。実際俺もコーヒーカップに乗っているシーンを見て気持ち悪くなってきたもん。
『はー楽しかった! ゆいちくん――ってキャーッ! ゆいちくんッ! 目を覚まして! ゆいちくぅぅぅぅぅぅん!!』
気絶したゆいちくんを揺さぶるレイシア。一向に目を覚まさない……どうしたらいいんだろう? と言うレイシアの心の声が聞こえる。どうもこうも、一旦休ませた方がいいと思うけど……。
そこから少しだけブラックアウト――そして綺麗な夕日をバックに観覧車が回る風景が流れた。
『あれ……俺は何を……?』
観覧車内にいる事に気づいたゆいちくん。そしてまたレイシアに膝枕されているところから始まった。
『起きた? 何度も気絶するなんて……あんた、遊園地でトラウマでもあったの?』
『れ、レイシ……ア? また膝枕――』
『へへん、どうだ? 私の膝枕は? 他の女より気持ちいだろ?』
『んー? お前の膝って筋肉質だからなんか硬い――ぶヴぉっ!?』
バコンと顔面を殴るレイシア。発言が気に食わなかったらしい。
『な、なにしやがるッ! レイシア!』
『何しやがるじゃねぇよ、このバカ。レディに失礼な事言うんじゃないわ』
『うぅ……わ、わりぃ……ちょっと――ぶほっ!?』
『言ったわよね、失礼な事は言うなって』
『まだ何も言っていないんですけど!?』
あはははっ……と内心で笑ってしまった。理不尽すぎるだろ……と思いながら。
『なあ、レイシア。今日はなんでデートに誘ったんだ? いつものお前なら、こんな事しないはずだろ?』
『――そ、それは……だな、ゆ、ゆいちくんのこ、事が――』
お、レイシアちゃん。ゆいちくんに告白するのか! うわぁぁっ……この瞬間って見ているとほんとドキドキする。例え告白をする瞬間を眺める人であっても。
『ゆ、ゆいちくんの事が、す、好きなのっ!!』
レイシアは心拍数を上げながら、ゆいちくんに向かって告白した。うおおおおおおおおおおおっ!! こ、こ、告白したぞおおおっ!! めっちゃ心臓に悪い程、心拍数が上昇しているんだけどおっ!!
『は――な、なにを言ってレイシ――』
『ん――』
――ゆいちくんの口を封じるようにレイシアは彼の唇を重ねた。
なぁーっ! すっげーッ……! キスしたぞっ! レイシアちゃん大胆だぁぁぁぁッ!! と、外見では平常心を保ちつつ、心の中では発狂していた。
『れ、レイシア……? 一体、何を――』
『好きと言う印さ――』
キャーッ! かっけーよ! 俺なら即失神しちゃうよー! この告白方法! あぁぁ……だめだ……見ていられないよぉぉッ!! 恋愛映画ってこんなにドキドキする物だっけ……? 恋愛映画は何作も見ているのに……。なんで? ホワイッ?
(だ……だめだ……おれ、これ以上見たら……夜眠れなくなっちゃう……あわわわわわっ……れ、恋愛映画ってこんなハードな奴だったっけ!?)
なんて、恥ずかしい事を妄想しているうちに、映画は後半戦へ――
レイシアとゆいちくんは自宅に帰って普段通りの事をしていた。そして夜中――ゆいちくんはふと目を覚ましていた。特に理由があって目が覚ましたわけでなく、忽然と目を覚ましてしまったらしい。
『(なんだろ……目を覚ますなんて――)』
いつもなら目を覚まさないのに……と内心で呟きながら、ゆいちくんはベッドから降りて水を飲みに下へ向かった。
『ごくごく……』
飲み終えてゆいちくんは自室に戻ると、そこに半透明のキャミーを纏ったレイシアがゆいちくんの布団に寝転がっていた。
そんな光景を見るもんだから、ゆいちくんは思わずステッとコケてしまった。
『おわわわっ……!? れれれれ、レイシアッ!? な、なにをやっているんだぁぁわわわっ!?』
『なにって――その……一緒に寝ようよ……私、なんか寝付けなくて――』
『いいいい一緒に寝るって……、そ、そののののののっ……!』
ゆいちくん、携帯のバイブレーションみたいに震えているな……。
『ばばばばばばばばばば……う、う、う……』
『ねぇ……こっちに来てよ――』
一瞬だけ抵抗を見せるゆいちくんだが、なんやかんやで甘い声に負けてレイシアが寝ている自分のベッドへダイブした。
『――レイシア』
『ゆいちくん……』
ん……と二人は何度も唇を重ね、そしてばたりと倒れて画面がブラックアウトした――。
『はぁ……はぁ……』と二人の熱い吐息がこぼれる。あれ……この映画って全年齢版の恋愛映画だよな……? なんで行為があるシーンがあるんだ? まあ、いいや。とりあえず、続きを見よう。
『なぁ……レイシア。なんで俺なんか――』
『そうね……なんでだろう? 私、ずっとこの生活をしていく内にあなたの優しさに惚れてしまったかもしれないわ……』
『――』
やばいやばい……これ以上見たら――あぁ……いい感じの話だぁぁッ……こういうシチュエーションどっかで見た事あるかもしれないけど、いい奴やぁぁッ!
「それからどうしたの」とアーシェのナレーションが入る。尺の都合所、カット!
『あぁ――好きだ。レイシア』
『私も好き――ゆいちくん』
キスをする二人――そして『FIN』と言うテロップが流れた。
(ふぅ……終わった。結構ハラハラするような恋愛映画だったなぁ……映画館出たら、早速原作小説の一巻を買ってこよう)
「面白かった! ねえ、夏奈実くん」
アーシェが嬉しそうに映画の感想を伝える。
「だな、めっちゃ面白かったな! あとで原作小説買うぞ!」
「あ、夏奈実くん。私もそれ読んでもいい!?」
「おう!」
「やったーッ!」
ははっ……アーシェが喜んでくれてなりよりだな……。
(お、そろそろ沙耶の裾上げが終わるころかな……? とりあえず、電話してみるか……)
スマホの時計を見るとちょうど沙耶が購入したズボンの裾上げの時間が終わるころだったことに気づき、沙耶に電話をかけた。
『プルルルル……ガチャ――もしもし? お兄ちゃん?』
「おう、沙耶。ズボンの裾上げ、そろそろ終わる頃か?」
『う……ごめん、もう少し時間かかりそうなの』
沙耶にそう質問すると、言葉を濁していた。何かあったのか? まさか――また追加でズボンを買ったのか?
「は……? なんで?」
『なんか、刺繍中にミシンが壊れちゃったぽくて――それで今から五着分の裾上げを開始するって言うのよ……』
「あぁ……で、どのくらいかかるんだ?」
『全部終わるのにあと四十五分かかるって』
「……分かった。終わったら早めに連絡してくれ」
『うん』
ピッ……と通話を終了して、俺ははぁ……と大きな溜息を溢した。
「どうしたの?」とその様子を見たアーシェが質問する。
「沙耶のズボンの裾上げに四十五分延長するってさ……はぁ……暗くならないうちに帰れるのかな……?」
「え? ――という事はまだここに居られるって事!?」
なんだか、アーシェのテンションが上がっているような気がするが……。一体何を企んでいるんだろう?
「ま、まぁ……そうなるわな」
「じゃあさ、私行ってみたいところあるんだけどそこに行ってもいい!?」
「あぁ……まあいいけど」
「やったー! それじゃ、早速行こうよ!」
「ちょ……アーシェ!?」
アーシェに手を掴んで引っ張られ、映画館を出て向かった場所――それは。
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